配信アプリで魔物に侵略された地球を生き抜く! ~稼いだポイントで武器を購入・強化できる俺がいずれ世界最強~
絢乃
001 魔物の出現
「知っているか? 東京に魔物が出たらしいぞ」
「魔物……?」
「ゲームとかに出てくるあの魔物だよ。これが動画だ」
「うわ、エグいなこれ……。人が殺されまくっている……」
「東京以外の場所にも出ているみたいだぜ、大阪とかヤバいらしい」
「マジかよ……
「さすがに大丈夫だろ。ここは伊豆半島の中でも下のほうだぜ」
「魔物だってここまで来るほど暇じゃないか」
「来ようとしてもその前に自衛隊が対処してくれるさ」
「そ、そうだよな!」
跳び箱の向こうで男子が話している。
俺と同じく文化祭をサボッている連中だ。
(何が魔物だよ。どうせフェイクニュースだろ、馬鹿馬鹿しい)
俺はマットに寝そべってぼんやり過ごす。
ウトウトしてきて、気がつくと眠っていた。
――――……。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!」
突然、外から悲鳴が聞こえた。
俺は飛び起き、倉庫を開ける。
「助けてぇえええええええ!」
「いやあああああああああ!」
運動場は、さながら地獄絵図の様相を呈していた。
誰もが悲鳴を上げて逃げ惑っている。
人々を追いかけ回しているのは、三本の角を持つ赤い牛だ。
スペインの闘牛よりも激しく暴れ回っている。
その牛に、全身が緑色の人型の化け物が乗っている。
背丈は小中学生くらいだが、全身の厚みは大人以上だ。
布きれの服を纏っており、嬉しそうに「ゴブゴブ」笑っていた。
遥か遠くの空では、絵に描いたようなドラゴンが飛んでいる。
炎を吐き散らして、古き良き松崎の町を火の海にしていた。
一目で分かった。
奴等は――魔物だ。
「フェイクニュースじゃなかったのかよ」
運動場は死屍累々だ。
文化祭で学生以外も集まっていたのが災いした。
「何が何だか分からないが避難しないとな」
すぐさま自転車を取りに――と、ここで問題発生。
ポケットにチャリの鍵が入っていなかった。
カバンの中だ。
そして、カバンは教室にある。
「仕方ねぇ、取りに戻るか」
倉庫にあった金属バットを持って校舎に入る。
「もうおしまいだあああああ」
「ひぃいいいいいいいいいい」
校舎内にも混乱が広がっていた。
ある者は泣き叫びながら廊下を走り、ある者は教室の隅に伏せている。
どちらも他力本願で戦うつもりはないようだ。
皆と違い、俺はそこまで怯えていなかった。
理由は自分でもよく分からない。
たぶん狂った両親と過ごしているせいだろう。
「助けて! 誰か!」
俺の所属する3年1組の教室の前で、ある女子が人型の魔物に襲われていた。
背の低い黒髪ロングの巨乳――
魔物の数メートル前で尻餅をついている。
黒のストッキングが少し破れていた。
「いや……来ないで……」
梨花は目に涙を浮かべている。
恐怖のあまり立ち上がれないようだ。
魔物は梨花の数メートル前にいた。
運動場で暴れているのと同じ緑の人型だ。
赤い牛はいない。
「誰か助けて! お願い!
助けを求めて叫んでいるのは、その隣にいる女子。
内側にくるっとしているピンク髪が特徴的な
どちらもクラスメートである。
「ゴブゥ!」
梨花に向かって跳躍する魔物。
だが、そいつの魔の手が梨花に及ぶことはなかった。
俺が金属バットのフルスイングをお見舞いしたからだ。
魔物の顔面はグチャッと潰れた。
「人間と違って柔らかいんだな、魔物の頭って」
バットに付着した緑色の血を振り払う。
「じょ、
梨花が震える瞳で俺を見る。
「大丈夫だったか?」
一人では立てなさそうなので手を貸す。
梨花は深々と頭を下げた。
「うん……。おかげさまで。ありがとう」
「梨花を助けてくれてありがとう! 城ヶ崎!」
杏奈もペコペコしている。
「早く学校を出て親と合流したほうがいい。二人の親は文化祭に参加していたんだろ?」
「「うん!」」
ド田舎の高校なので、文化祭には大体の親が参加する。
予定もないのに不参加を決めるのはウチの両親くらいだ。
「本当にありがとう、城ヶ崎!」
杏奈が「行こっ」と梨花の手を掴む。
梨花は頷き、再び俺にお辞儀してから去っていった。
「俺もさっさと退散……ん?」
殺した魔物の傍にモバイルバッテリーが落ちていた。
幸いにも魔物の汚い血が付かずに済んでいる。
「念のために貰っておくか」
ワイヤレスだから使い勝手が良さそうだ。
ロゴがなくてメーカーが不明なのは不気味だが。
教室に入ると、自分の席に座った。
大きく「ふぅ」と息を吐いて脳に酸素を補給する。
「親に連絡しておくか、必要ないとは思うけど」
チャットアプリを開く。
その瞬間、父親からチャットが届いた。
『我々は魔物を駆逐してくる! 君は自由に生き延びろ!』
どうやら母親と冒険の旅に出るようだ。
息子の心配をしていないどころか、合流する気すらない。
「相変わらず狂ってんな」
俺は苦笑いを浮かべ、カバンを持って立ち上がろうとする。
――が、スマホの充電が切れかけていることに気づいて予定変更。
少し充電しておくことにした。
「さっそく役に立つ時がきたな」
モバイルバッテリーを机に置き、その上にスマホをセット。
ワイヤレスなのであとは勝手に充電される――はずだった。
「うお、なんだ!?」
セットした瞬間、スマホが激しく光り出したのだ。
(もしかして爆発するんじゃねぇか!?)
慌ててスマホを持ち上げようとする。
だが、その頃には光は消えていた。
「なんだったんだ……?」
とりあえずスマホを持つ。
適当なボタンを押して画面をつけた。
驚くことに充電の残量が100%になっている。
「あの一瞬で充電が終わったというのか?」
信じられないことだ。
しかし、衝撃はまだ終わらなかった。
謎のアプリが入っていたのだ。
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