第一の予知

1.ナイア・ニルという少女



【語り部】

 迷宮都市トランジリオドは、地下に広がるダンジョンから採掘できる資源を以て発展した都市国家だ。

 人口は二千五百人程度の小さな国だが、珍しいアイテムや魔獣の肉を輸出することで経済的には豊かな部類に入る。


 さて、居住区にある一軒家では、十歳の女の子が一人で暮らしている。

 この女の子は普通の人間とは少し違う。

 というのも彼女は、滅亡の識聖テネス・フェルロイが生み出した「魔導生命体」だった。


 しかし彼女はテネスとは暮らしていない。

 代わりに黒猫型の使い魔『オウマ・エッラ』が与えられた。これが彼女の教育係であり、行動指針を与える導き手でもある。


「“少女の名前『ナイア』はどうですか?”……なるほど、いい名前だね。“まだ何も無い少女、という事でラテン語で無を意味する『ニル』とかどうです?”。うん、これも良い」



 オウマは遠いどこかの文字を読む。

 どちらもテネスが予知した未来には存在していない。小さくはあるが、これで未来は一つ変わったことになる。

 にゃふふ、と笑いオウマは少女に語り掛ける。


「……猫さん?」

「だから僕は、使い魔だ。オウマでいいよ。……君の名前なんだが、“ナイア・ニル”というのはどうだろう?」

「ナイア……それが、ボク?」

「そうだよ。ニルが苗字だ。まあ、苗字はフレーバーになってしまうけれど。君はこれから、ナイア・ニルと名乗り、この迷宮都市トランジリオドで生きていくんだ」


 少女……ナイアは、まだ何も知らないまっさらな子供だ。

 ただその出自を理解しているせいか、己の存在を肯定的に見られず、気弱なところがある。加えて淡々と喋るためどこか機械的な印象を受ける。

 名の響きの良し悪しも分からないようで、そういうものなのかと小さく頷いた。


「にゃふふ。あまり固くならなくていい。君は好きに過ごせばいいんだよ。さあ、せっかくだ。この街を見て回ろうじゃないか」


 彼女がより良く育つためには情操教育が必要だろう。

 書物を読み聞かせたり、多くの人と接したりしていかなくてはならない。

 近所にはテネスの弟子である十八歳の青年、リオールが住んでいる。機会があれば頼るのも悪くはないだろう。




 ※




【食料品店の女ミランダ】


 ミランダ・ジェネは今年三十八歳になる女性で、食料品販売店『ジターブの店』で働いている。

 店主はジターブ、彼女の夫だ。

 一般的な野菜や肉、パンなどを取り扱う店で、品質はそこそこでも値段が安く庶民に愛されて長く続いている店だった。

 ミランダは恰幅のよい、いかにも肝っ玉母ちゃんというような外見をしている。

 中身も気は強いが面倒見のよいタイプで、彼女の世話になった人は多い。

 そんな彼女が最近気にしているのは数日前に引っ越してきた少女のことだ。

 どうやら高名な魔法使い様が用意した一軒家に一人で暮らしているらしい。

 考えていると、件の少女が黒い猫を引き連れて歩いていた。これはいい機会だとミランダの方から挨拶をする。


「おや、お嬢ちゃん見ない顔だね。あの家に新しく来た子かい?」


 その問いに、少女はこくりと頷いて返す。


「あたしはミランダ。ジターブの店の看板娘だよ……二十年前のね、あっはっは! お嬢ちゃんの名前を聞いてもいいかい?」

「……ボクは、ナイア。ナイア・ニル、です」


 抑揚のない喋り方だ。無表情なことも相まって、感情が読み取りにくい。

少女はもじもじと体を動かした後、ぺこりと頭を下げて去っていった。

 髪は整えられておらず、服装も粗末なモノ。家は立派だがまるで浮浪児だ。どうやら親に手をかけてもらえていないらしい。


「ちょいと、見といてやらないといけないかもね……」


 ミランダはナイアの背中をしばらく見つめていた。



<追加情報>

・食料品店の女、ミランダと知り合いました。

・ミランダはみすぼらしい格好から、「ナイア・ニルという少女は親に虐待され放り出されたのでは?」と訝しんでいます。

・小汚い少女なので同じ子供はよい印象を持ちにくいです。

・街の施設を知るにはナイアに指示する必要があります。


※注意!

《予知》

 ミランダ・ジェネは遠くないうちに魔物に襲われ大怪我を負います。

 後遺症が残り、体が不自由になってしまうでしょう。

 スキルを習得し解決しましょう。解決しなくても話は進みます。




《解決の一例》

 ・攻撃魔法を覚えて魔物を倒す。

 ・体を鍛えて剣や槍を覚えて倒す。(武器も選んでください)

 ・治癒魔法を覚えて傷を癒す。

 ・街の人と交流して、強そうな人と仲良くなって頼る。

 ・アルバイトでお金を貯めて傭兵を雇う。

 ・美少女を目指し、男をたぶらかし護衛とする。

 

 などなど。

 この例にはなくても、TRPGと同じく作者を納得させていただければ採用となります。

 ただし多くのことを一気にやろうとする場合、それぞれの習得率が下がります。

 例えば「攻撃魔法を覚える」の場合、メラミまで習得できます。

 しかし「魔法と剣を覚えて魔法剣士になる」とした場合、そこそこの剣術とメラ、或いは魔法はまだ練習中、といった中途半端な形になります。





 



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