神々の世界《第1話》
「なぁ。なんか面白い話、してくんない?」
暇だ、という気持ちが大いに込められたその声が響いたのは、水晶のみで構成された小さな部屋だった。
水晶というと、透明度が高く先が見渡せるように感じられるが、この部屋のそれはあまり透明度が高いわけでもないため、水晶の先は見通すことは不可能となっている。
部屋の至るところでは、蒼い光を放つ球体が飛び交い、水晶がその光を拡散しているため、光源はその光の球体のみ。
少し高めの天井には、濃紺のモヤが広がり星々がその中で光輝いていた。
それは〖幻想的〗という言葉のみで納めることが出来ない光景であり、神々が暮らすその世界にとって差し障りがない様子だった。
「なぁ~?聞いてる?」
先ほどの声の持ち主は部屋の中央にある談話用の椅子に寄りかかりながら天をあおぐ。そして同室にいる気心が知れたもう一人に、寝ちまったのか?と声をかけた。
「うぅ゛~?」
その声に対し、談話用テーブル突っ伏している人物が睡魔と戦いながら声にならない声を発している。
「ほら、起きろって」
そう言って、先程まで天をあおいでいた〖少年〗は、自らがもつ肩辺りまでの瑠璃色の髪をサラサラと揺らしながら、眠たそうにしているもう一人の〖少年〗を揺すり起こそうとしている。
「もぉちょっと、寝させてよぉ~」
月の色を落し込んだような薄い金の絹糸のような長髪を後ろで結い上げた髪を片手で整え、もう片方の手で眠い目を擦りながら、のそのそと体を起こした。
「それにしても、今日も君の瞳は綺麗だねぇ~、『星』」
「オ、マ、エ、が、言、う、な!『月』」
星と呼ばれた少年は、光をこれでもかというだけ詰め込んだような金の星の色をした瞳を半眼に開き呆れたように、椅子にドカッと座った。
「そんなに怒んないでぇ~」
一方、月と呼ばれた少年は、星の輝きを閉じ込めたかのような、蒼い星の色をした瞳を静かに開き、微笑みながら星を見つめる。
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