第32話
いつも通り、校門を通って校舎内に入る。
そして靴を履き替えて、自分のクラスの教室に向かおうとしたところで、ずっと感じていた違和感が確信に変わった。
周りの女子の話し声から、俺の名前が聞こえたのだ。
どうして俺のうわさ話をしてるんだ?
それに自分の教室を見ると、ものすごい人だかりができているし。
亮太に連絡して聞いてみようかな。
あいつはどうして俺とつるんでいるのかわからないぐらい友だちが多いし、その分色々な話がすぐに回ってくるはずだ。
だからきっと今日のこの原因も知っているはず。
俺はスマホを取り出して、そこで初めてまなからの連絡に気がついた。
今日は学校を休んだほうがいい?どういうことだ?
いや、とりあえず亮太に連絡しないと。
俺は亮太にメッセージを送った。
返信には少し時間がかかると思ったがそんなことはなく、すぐに帰ってきた。
内容はこうだ。
今すぐ屋上に来い、と。
俺はその言葉に従ってすぐに屋上へと向かった。
一回から屋上まで、階段を駆け上る。
途中で話しかけてくる生徒が数人いたが全員無視した。
「おはよう空。随分と大変なことになってるな」
隣にはまなもいて、どうやら亮太と話していたようだ。
「俺はいまいち状況を理解しきれていないんだけど。なんでみんな俺の話をしているんだ?」
亮太はすぐに答えてくれた。
話を要約すると、昨日俺とまなが一緒にいるところを見た人がいたらしい。
それだけなら何も問題はないはずだった。
しかし、俺たちは昨日学校を休んでいた上に、そいつが見たところ、俺とまなが手をつないでいたと。
その状況が重なって、噂は昨日の夜のうちに大拡散された。
そして今日、俺やまなに問い詰めるべくみんなが教室にたかっていたということらしい。
「これは、まずいな。俺はまだ被害は小さいがまなは学校内でもマドンナ的存在。それが男と歩いていたとなると・・・」
「そういうことだ。さっきも俺が教室についたらまなさんが詰められててさ、流石に見ていられなくてここまで無理やり連れ出してきたってわけ」
「あれはなんだか怖かったです・・・。知ってる人だけではなく知らない人まで私に近寄ってきていて」
「それじゃあ今も教室にいた奴らは俺たちが帰ってくるのを待っているってことか?」
「そういうことになるな。だがそんなことは些細な問題で、空とまなさんは決めないといけないことがある。二人の関係性を話すのか隠し切るのか。これまではふたりとも学校では話さないことでその関係性を隠してこれたかもしれない。だけどこれからはそれができなくなる。二人が手をつないでいるところを見られているわけだし、しかもふたりともその日は学校を休んでいたときた。もう、空たちが無関係だと見せかけるのは不可能だ」
「確かに、ここまで来たらもうそんなやり方は通用しないよな。まなはどう」
バン!!!!!
急にドアが勢いよく開けられた。
「ふたりとも、もう話しちゃえば?」
そう言って屋上に姿を表したのは新村さん。
「なんでここにお前が来るんだよ。お前はふたりのこと知ってるのか?」
「昨日話したんだよ空くんと。道でたまたま遭遇して家までついていったら若井さんが出てきたの。あ、別にストーカーじゃないからね?逃げるように帰っていったから気になっただけ。ていうか若井さんのことまなみんてよんでいい?!ふたりは結婚してるわけだからもう名字は違うでしょ?」
「え、ええ。それは別にいいんですけど・・・・・・」
相変わらず新村さんはギャルだな。
コミュ力がすごすぎて話を遮れない。
「そんなことはどうでもいいんだよ!今はふたりが教室に戻ってどうするのかだ」
「俺は・・・正直話したくない。まなと俺の関係を話すことで被害が出るのは俺じゃなくてまなの方だ。俺はクラスではただのボッチだし、そんな人と付き合ってるどころか結婚しているなんて話が出れば、まなの評判が落ちるのは目に見えている。だから俺は隠していたいけど・・・そんなのはいいわけだってわかってはいるんだ。俺のせいでまなに迷惑をかけるなら俺が変わればいいって、わかってるんだ。だから・・・どうするかはまなに任せるよ」
「私は・・・周りに話してしまいたいです。私自身の評価なんて関係ありません。それに、これ以上学校で空くんと他人のふりをしなくて良くなるいい機会ではないですか。それに、空くんは自己肯定感が低すぎるのですよ。空くんはそこらへんの男の子なんかよりよっぽどかっこいいんですから、もっと自信を持ってください!」
「それはそのとおりだな。それにお前はボッチじゃねえぞ、俺と友達なんだからよ。それにまなさんもいるし。お前はまなさんとお似合いなんだからよ!それをみんなに知らしめてやろうぜ」
「ああ、ありがとう亮太、それにまなも。それじゃあ決まりだ。俺たちの関係は正直に話そう。なあまな、指輪持ってるか?」
「ありますけど・・・どうしたんですか?」
「うちの学校は校則がゆるいからアクセサリーもつけてて大丈夫なんだよ。関係をバラすなら、それもつけたままでいいだろ?」
そう言いながら俺はポケットから指輪を取り出して左手にはめる。
まなも、身につけた。
「準備できた?」
「ふふっ、空くん、周りの圧に負けないでくださいよ?」
「ああ、まなが隣にいてくれれば俺は何でもできるよ」
「それじゃあ俺と沙奈は後ろで応援してっからさ。まあ、頑張れよ」
「まなみんファイトだよ!」
「ありがとう。それじゃあそろそろ行こうか」
そして俺たちは教室に向かった。
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