第13話
僕達はご飯を食べた後にそのまま涼太の家に来てゲームをしていた。
「やっぱりお前ゲームうめえよなー。なんでそんなに上手いんだ?」
「んー、僕中学校の頃は不登校だったからかな。ずっとゲームしてたんだ」
「そういえばそんなこと言ってたな。ていうかさ、その一人称やめね? 僕ってなんか弱弱しく感じるんだよな〜、偏見だけど」
「まじ? そんなに言うなら変えてみようかな。俺?
私?」
「ははっ!なんで私なんだよ、どう考えたも俺だろ!」
そう言って亮太と腹を抱えて笑っていると、亮太の親が部屋に来た。
「空くん、そろそろ晩御飯なんだけどうちで食べていかない?」
なんとも魅力的なお誘いだ。
だが、この時間に断ってしまうと、まなに迷惑をかけてしまう。
「いえ、僕...じゃなくて俺は家で待ってる人がいるので大丈夫です。今度来た時にはご馳走になりたいです!」
「あらそう? わかったわ。それじゃあそろそろ帰りなさい。その人が心配してしまうから」
「わかりました。ということで帰るわ。今日夜ゲームしようぜ」
「お〜、じゃあな」
「おう」
亮太の家を出てスマホを確認すると、時刻は十九時を回っていた。
念の為まなに電話をかけておこうと思いアプリを開いて電話をかける。
しかし、電話はかからずに切れてしまった。
おかしい。
彼女が俺の電話に出なかったことは今まで一度もなかった。
何か嫌な予感がして、俺は急いで家に帰った。
家の鍵を開けて玄関のドアを開くと、すぐに違和感に気づく。
「まなの靴がない......」
しかし鍵はかけてあった。
戸締りをしているということは、自分の意思で家を出たということだ。
一度リビングに入って考えよう。
そう思い俺は廊下を進みドアを開ける。
すると食卓の上に一枚の紙が置いてあった。
空くんへ。
私は無事です。少し叔母の元へ帰ります。
理由は、叔母に空くんとあって欲しいと連絡した際に住所を教えてしまい、彼女が家まで来てしまって、話し合いの末にそうなりました。
私は叔母に結婚のことを伝えずに家を黙ってでたので当然です。
いいタイミングだと思い電話したのですが、許してくれませんでした。
一応叔母の家の住所を書いておきます。
ですが、助けに来る必要はありません。
自分でなんとかするので、空くんは家で待っていてください。
そして最後に住所が書いてあった。
俺はすぐに家を飛び出した。
手紙にはああいう風に書いてあったか、紙の所々が濡れていた。
まなはあれを書きながら泣いていたのだ。
それを無視できるほど俺は廃っていない。
今行くよまな、そこで待っていてくれ。
叔母の住所は思ったよりも近くであった。
自転車で約十分かけてたどり着いた家は、超大豪邸だった。
「まなってやっぱりお金持ちだったんだな」
そんなことはどうでもいい。
俺は家のインターホンを鳴らす。
少しして声が聞こえた。
「はい」
「夜遅くにすみません。まなの夫です、まなを返してもらいに来ました」
「入りな」
そう言って通話は切れ、鍵が空いた音がした。
ドアを開けて中に入ると、目の前にメイドと思わしき格好の女性がたっていた。
「ご案内致します。着いてきてください」
そう言って歩き出す彼女に俺は急いでついて行った。
しばらく歩き、たどり着いた部屋は、家の最奥だった。
「こちらで主人がお待ちです」
「わかりました。ありがとうございます」
そう言って俺はドアに手をかける。
すると、俺がドアを開ける前にあちらから空いた。
「お前が空だな? よく来た。まぁ入れ」
そう言って出てきたのは強面の女性だった。
彼女がおそらくまなの叔母だろう。
筋肉質な腕をしているものの、顔つきがなんとなくまなに似ている。
「わかりました。失礼します」
さぁ、まなを返してもらおうか。
「よく来たな。私はお前を待っていた」
「まなを返してください。彼女は俺の妻です」
彼女は不敵に笑う。
「ハッハッハ! なんてことを言うんだお前は! まぁ安心しろ。話が終わったら返してやるさ。そもそもあいつを家に連れ戻したのはお前と話したかったからなんだ。しかしあれだな、話と違って随分とイケメンだな」
俺は急いでここに来たため、美容室でセットしたままここに来ていた。
「はぁ、ありがとうございます。それで話とはなんですか」
「まなの両親のことはなんと説明された?」
「確か、両親は出張で海外に行っている、と」
「そうだな。それは嘘だ」
「は?」
「まぁ嘘と言ってもあいつの中では真実なんだけどな」
「ちょっと待ってください、どういうことですか」
「今説明してやるから落ち着け」
その後俺は静かに彼女の説明を聞いた。
とても壮絶な内容だった。
まずまなの両親は海外にはいない、というよりこの世に居ないのだ。
海外の出張からの帰りに乗っていた飛行機が墜落して死亡したそうだ。
問題はそこから。
まなはその時中学一年生、当然両親の死には耐えられなくて精神が崩壊したらい。
「そして、脳が自分を守るために記憶を改竄した。そういうことでいいですか?」
「あぁ、そんなところだ」
「なるほど...だからなんですか?」
「は?」
「確かに少し驚きましたけど、それが何か問題はありますか?」
「おいおい、この話の重大さがわかってるのか? お前はあいつのトラウマを背負うってことだぞ? あいつの中では病気を受け入れられるのか?」
「病気って...そもそも俺はその状態のまなしか知らないですし、どんなまなでも愛せる自身があります。それに、まなが記憶を改竄して元気に生きてるならそれでいいじゃないですか」
そう、それでいいのだ。
まなの両親のことはとても悲しいことだと思う。
しかし、彼女はどんな方法であれ、立ち直ったのだ。
それなら俺は彼女の記憶を呼び起こさないようにしてやればいいだけだ。
「全く呆れたよ。この話を聞いてこんなにケロッとしてるとは...だが気に入った! お前をあいつの夫として認めよう。これからもよろしく頼む」
「言われなくてもそのつもりです。まなのことは愛していますから」
「そうか。益々気に入った! それじゃあ今あいつを呼んでくるからお前はここで待ってろ」
「わかりました、あ!叔母さんお名前は? 叔母さんだと呼びづらいので」
「あぁ、えりこだ」
「そうですか、それではよろしくお願いしますえりこさん」
そう言うとえりこさんは無言で部屋を出て行った。
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