変化

第2話 兄(朝日奈 晶)


朝日奈晶、15歳。

朝日奈正の双子の兄である。


若葉高校1年1組。


弟の正と違い女性には普通に興味があり、交友関係も広かったことからモテていた。身長も高く顔もカッコよかったので頻繁に告白されていたが、小学校から付き合い始めた彼女の藤島栞里がいるので全て断っている。そのことからついた二つ名は『一途な漢』。


*    *    *    *


いつも賑やかな朝日奈家の夕食が今日は何故か静かであった。


いつも学校や友人の事を楽しそうに話す姉や誰も興味がないゲームの話を楽しそうにする弟が、何故か無言だ。


もちろん15年も生きていれば喧嘩の一つや二つはやってきていた。たが、いつもの喧嘩とは違う様子に母と俺は見守ることしか出来なかった。


終始無言の姉と弟を見かねて母が俺に何とかしろ!的な視線を送ってくる。


いや、無理だから!


俺は首を振って母の期待に添えない事をゼスチャーで伝える。

そんな俺を見て母がまるで役立たずを見るような目を向けてくる。


クソッ、こんな大事な時に空気の読めない父が不在とは‥。


こういう時に空気の読めない父が2人に話しかければ何か切っ掛けになるかもしれないのに。


家族の為、今日も仕事を頑張る父が貰い事故のような形で息子に恨まれていた。


カチャ

カチャ

カチャ


無言の中、食卓には食器の音だけが鳴っていた。


ん?


ここで異変に気がつく。


弟と姉の顔が赤いのだ。


それに喧嘩の時は睨み合ったりするのに、何故か今回は視線をわざと合わせないようにしていた。


!!!!!


今、一瞬二人の視線が合わさったのだが、お互い顔を伏せてしまった。


おいおいおいおい!

何ですか、この思春期が読むラブコメ漫画みたいな仕草は!!


目が合って照れまくる姉と弟を見て困惑するのであった。


*    *    *    *


夕食が終わると姉はいつもリビングでテレビを見ている。今日もいつものように見るのかと思われたが、テレビを無視して自室に駆け込んで行った。


怪しい‥。


姉に何があったのだ???


何か理由を知っているであろう弟は、いつものように自室に行く事はなくリビングでテレビを見ていた。


はぁ?

正がテレビだと!?


普段と違う行動をとる二人に驚愕させられるのであった。


*    *    *    *


無言でテレビを見る弟。


おいおい、何があったんだ。

お兄ちゃん、お前が心配だよ。


よし!ここは兄ちゃんが人肌ぬぐか‥。


俺はぼぉーとテレビを見る弟に話しかける。


「どうした?

珍しくテレビなんか見て。」


「いや、何となくそんな気分だから‥。」


おいおい、それってどんな気分だよ!!


アンニュイな雰囲気な弟に困惑しているとさらに衝撃の言葉を聞く事になる。


「そういえば、前に晶が面白いって言ってた『上級生』ってゲームあったよね?」


「あぁ、『上級生』なら死ぬ程面白かったぞ。

それがどうした?」


弟が突然、俺イチオシの18禁のゲームの名前を出すので声が上擦ってしまった。


「ちょっと貸してくれない?」


『貸してくれない?』

『貸してくれない?』

『貸してくれない?』


衝撃過ぎて脳内で三回リピート再生してしまう。


え?

正がするの?

え?

18禁ゲームをするの?

え?

友達に貸すとかじゃないの?

え?

このゲーム、お前の好きなRPGじゃないぞ。


理解が追いつかないのであった。


その後、正に18禁ゲームである『上級生』を渡すとリビングにいた母にすがりつく。


「お母さん、どうしよう!

正がおかしくなったよ!! 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る