イツワリの愛を求めて

一ノ瀬 夜月

第1話 愛されない姉

 幼い頃から、私は運動が得意なの。先生には、


 

 「将来はスポーツ選手かな〜?」



 って言われたし、パパには、


 

 「朱愛あやめは運動が得意なんだな。この先、団体競技で思考力を鍛えれば、きっと成果を残せるぞ。」



 って、期待されていたんだぁ〜。

  



 でも、妹の杏奈あんなの賢さが判明すると、パパとママは、杏奈ばかり気にして...



 「杏奈はすごいな!三歳で読み書きが出来るなんて、天才か?」



 「きっとそうよ!しかも、私に似て可愛いし、将来美人になるわよ。」



 「えぇ〜、めてくれてうれしいな。杏奈、もっと頑張るね!」



 その頃私は——

 

 

 (はぁ、今日は誕生日なのに...



 テーブルには、豪華な食事があるけど、

今日、パパとママから、"おめでとう"って言われて無い気がするの。


 可愛くて賢い妹が好かれるのは、当然...なのかな?)


  

 こんな感じで、パパとママが私を気にかける事は少なくなったと思う。


 

        ✴︎ ✴︎ ✴︎


 

 けれど、私が小学五年生になると、パパがある提案をしてくれたの。



 「朱愛、そろそろスポーツクラブに入ってみないか?」


 

 「えっ?何で急に、そんな事...」



 「急ではないさ。幼い頃に一度言った気がするんだが、覚えてないか?」



 (勿論もちろん、私は覚えているけど、パパも覚えてくれていたんだね、嬉しいな!


 折角せっかくの機会だし、入ろうかな?)



 「うん、入りたいな。近所だと、バスケとか——」


 

 (最近、杏奈ばかり構っていたが、朱愛にも機会をあげないとな。


 俺は妻みたく、杏奈にだけ期待しているのでは無い。


 団体競技で思考力を養えば、朱愛も成長出来るはずだ。)



 後日、いくつかのクラブへ見学に行って、最終的に、近所のバスケクラブに入る事になったの。


 

 それで、初めは順調だったんだけど、ある日、チームメイトが——



 「確か朱愛って、妹が居たよね?


 昨日、その子とお母さんっぽい人が一緒にいるのを見たんだけど、なんか朱愛と全然似てないよね?」



 「えっ、そう?まぁ、私はパパ似で、杏奈はママ似だから...」



 「どっち似とかの次元じゃないよ。


 だって、お父さんも知ってるけど、朱愛と大して似てないし、実は朱愛って、養子なのかもね。」



 (冗談...だよね?でも、それを許せる程、私の心は広くないの。)



 「はっ?言いがかりは辞めてよ!何でそんな、酷い事が言えるの?」



 「両親と似てないのは事実でしよ!


 それに、すぐムキになるし、笑顔が絶えない妹とは真逆だね〜。」



 「っつ、もういい!そんな事言う子と一緒にバスケしたくないから、辞める!」


 

        ✴︎ ✴︎ ✴︎



 これがきっかけで、私はクラブを辞めて、団体競技も諦める事にしたの。



 他人から比べられるのが嫌だったからね。



 でも、その決断は、パパを大きく失望させてしまったの——



 「事情は聞いたから、あのクラブを辞めた事に関して、責める気は無い。


 けれど、一度の失敗で、思考放棄して、他の道も閉ざした事に怒っているんだ!


 今からでも遅くない、他のバスケクラブに入るのも良いし、バレーやソフトボールに種目を変えてもいいぞ。だから、団体競技を...」


 

 「嫌だよ!私はもう団体競技は諦めたの。これからは、一人で出来る種目をやるから。」



 (意地っ張りで他の意見を受け入れないのか...。


 まさか、俺の娘がこんな馬鹿に育ってしまうとは、ガッカリだな。)



 「...いいよ。その代わり、費用は負担するが、他は何もしないからな。」



 

 「分かった、それで良いよ。」



 それから私は小学校の陸上クラブに入って、短距離、長距離と複数の種目に挑戦したの。

 


 陸上を選んだ理由は、努力が反映されやすくて性に合っていたのだと思う。



 それから約四年間陸上を続けて、中学三年の引退試合。


 私は、3000mの部で、県三位になれたの!

今までの努力が報われたと思って、上機嫌で帰宅したね。



 でも、家族の反応は予想と違っていてーー



 「陸上で県三位になった?まぁ、どうでも良いわね。


 それより身体を拭きなさい。元々、可愛くないのに、よごれていたら、見るに絶えないわ。」


 

 「はい...」



 「ねぇ、杏奈は未経験者だけど、県三位だとしても、全国規模から見たら大した事ないよね?」



 「まぁ、そうだけど...」



 「それより、見て!模試でT中にA判定が出たの。


 さっきママが褒めてくれたから、多分パパも朱愛より、杏奈を褒めてくれるよ!


 あっ、パパ帰ってきたね。」



 (嘘、嫌だよ。もし、お父さんも認めてくれなかったら、私...)



 「パパお帰り!杏奈、模試でT中に A判定でたよ!」



 「私は大会で、県三位で...」



 「ははっ、杏奈は凄いなぁ。前もって合格祝いを用意すべきかな。」


 

 「ねぇ、私は?」



 「言うまでもない。ろくに考えもせず、ただ走り続けただけで評価して貰えると思わない事だ。


 大事なのは、思考を辞めない事で、それを放棄した時点で、価値は無い。」



 (あぁっ、やっぱり、お父さんも私の事を愛してないんだね。 つらい、なぁ。)


  

       ✴︎ ✴︎ ✴︎



自室に着いた後、私は——



 「もう、こうなったら!」



 前に見つけた願いが何でも叶うという、怪しいサイト。普段なら気にしないけど、今は違うよ。


        "ポチッ"



 URLを押したと同時に、突然見知らぬ少年が現れて、



     「何を叶えたい?」



 と尋ねてきたの——


                  続く



 



 

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