第16話 天空の涙(16、レプリカ)


「すみちゃん、お土産やるよ」

佐和商店の閉店後。

事務所で、榊は菫へと小さな紙袋を手渡す。

「ありがとうございます。開けても良いですか?」

「もちろん」

菫が封を開けるとケースがあり、中には角度によっては淡い青色にも見える、一粒の真珠のタックピンが収まっていた。

「真珠?」

「の、レプリカ。『天空の涙』って名前がついた真珠が名産品らしいんだが、本物は流石に高価過ぎてな」

苦笑いを浮かべる榊に、菫は首を横に振って笑う。

「嬉しいです」

菫は早速、ピンをワイシャツの襟に付ける。

「もったいないので毎回は難しいですけど、何にでも合いそうで良いですね」

嬉しそうに真珠を見下ろす菫に、榊の眼差しも優しくなる。

「海が綺麗なとこだった。今度ドライブしながら行こうぜ」

贈った真珠に触れ、榊は菫の頬を撫でる。

「良いですね」

くすぐったそうにはにかんで笑いながら、菫は頷いた。


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