第7話 『石崎さんの話』

 


部活も終わり、俺は今石崎さんと一緒に部室にいる。しかも会話もなく、気まずさしか感じられないこの空間でだ。



とゆうか、俺……明日死なねーよな…?後輩達からめっちゃくちゃ敵意の目を向けられたんだけど……まぁそれは置いといて、今はこの状況をどうにかしたいところだが、どうすればいいのかわからない。



だって石崎さん……話してくれないし……そんなことを思っている時だった。突然部室の扉が開いたのだ。そしてそこから現れたのは――。



「…笹川さん……?」



左右を見渡しながら入ってきたのは笹川さんだった。彼女は俺たちの姿を見つけると、こちらに近づいてきた。



「……い、石崎さん……こ、これは…?」



「あ、あの……えっとね……中村くん……私とみのりちゃんは……」



何か言い訳し始めた…石崎さんのこんな姿初めて見た……めっちゃくちゃ焦っているし……。



「……ああーー!もううまく話せないし、うまく説明できないっ!」



『落ち着いて……!つばめさん……』



笹川さんと石崎さんって仲が良いんだな……石崎さんを下の名前で呼ばす人なんてほとんどいないぞ?



「…そうね。落ち着くわ」



石崎さんは深呼吸をしてからため息を吐いた。そして真剣な眼差しで俺の方へと向いた。……何を言われるのだろう……。

俺はゴクリと唾を飲み込んだ瞬間――。



「お願い!中村くん――!無断で部室を使ったこと黙っててくれないかな!?」



そう言いながら、石崎さんは頭を下げて頼み込んできた。……笹川さんまで頭を下げんですけど……!?



なんなんだこれ……?てゆうか、側から見たら俺が悪者みたいになってるじゃん……

とりあえず誤解を解くために口を開いた。



「あ、あの……!状況が分からないのですけど!」



「だ、だってみのりちゃんは部員じゃないのに無断で部室に入れちゃったんだよ!?だから怒られると思ってたの……中村くんって真面目だし……」



……なるほど……そういうことだったのか……でも、それなら別に謝ることないと思うのだが……。



「だ、大丈夫ですよ。俺、このことを誰にも言いませんから……だから二人とも顔を上げてください!」



二人が顔を上げると、めっちゃくちゃ涙目になっていた。……何もしてねーのに俺が悪いみたいな……感じになっているじゃねぇか……。なんか罪悪感があるわ……



「ほ、本当に!?無断でみのりちゃんを部室に入ったこと怒られない!?」



「はい。怒りませんよ」



部室で何をしようとしていたかは知らないけど、別に悪いことはしていないわけだし……



「よ、良かった……!」



『良かったですね!つばめさん!』



二人は安心した表情を浮かべていた。それにしても――。



「にしても、石崎さんはどうしてあんな遅い時間に部室に来たんですか?昨日は用事があったのでは?」



「あ、それはね……部室に家の鍵を忘れちゃってね……用事が終わった後に気づいて、取りに戻ったら中村くんと鉢合わせになったっていう流れだよ……そしてみのりちゃんとは家が近所でね。昨日は私の家に泊まりに行く予定だったのよ」



なるほど。それなら納得できる。まさか、石崎さんと笹川さんの家が近所だったとは……正直意外だった。



『あの中村くん……!ありがとうございます』



スマホの音声アプリを使って話しかけてきた。笹川さんはニッコリと笑いかけてくれた。その笑顔を見てまたドキドキした。

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