第6話 『入院生活6日目』
翌日。悟とつとむに大富豪の勝負を申し込んだ。二人とも得意げな顔をして、OKと言ってくれた。
「だってヨウスケ弱いもーん!な、悟!」
「そうだな!だって洋介は1回も俺らに勝てないもんな!」
……このガキどもめ……!まぁ、確かに俺弱かったけどさ。でも、今日の俺は一味違うぞ!何せ――!
「ふふっ………!こういう時のために助っ人を用意したぜ。多分、俺より強いはず!」
「え~?誰だよ~?そんな奴いるのかよ~」
二人の煽りを無視して、俺はドアに向かって手招きをする。すると、ひょこっと顔を出した女の子がいた。この子こそが――。
「えっ……?無口姉ちゃんじゃん。なんでここにいんの?」
「おぉ、ホントだ!」
二人が驚く中、笹川さんは無言のまま瞳を彷徨わせ、少し困ったような表情をしていた。しかし、すぐにスマホを取り出して文字を打ち始めた。
『あの……ここで合ってますか…?』
「おう!合ってるぜ?ほら、早く座れって」
そう言って椅子に誘導する。悟もつとむも動揺しているが、まぁ大丈夫だろう。だって今から、ゲームをする。
ゲームというのは悪い概念とか関係ない。勝っても負けても関係ない。ただ純粋に楽しむだけなんだから。
△▼△▼
大富豪が一通り終わった。結果は笹川さんの無双だった。
二人は序盤こそ調子に乗っていたが、中盤からは必死に笹川さんに食いついていた。だが、それでも全く歯が立たなかったのだ。
そして終盤になると、もう完全に諦めムードになっていた。
ちなみに俺はというと、途中までは良い感じだったが結局は最下位で終わった。
「無口姉ちゃん強いなー!洋介は相変わらず弱かったけど!」
「本当になー。今回の俺は一味違うって言ってたけど無口姉ちゃんが強いだけじゃねーか!」
う……っ。事実だからしゃーないな……!でも、本当に笹川さんが強いな。趣味の欄に『大富豪』と書くだけはあるわ……。
『中村くんは弱い………とゆうか、カードの使い方が下手ですよね。ジョーカー使うならもっと上手く使わないとダメですよ』
……アプリの機械的な声だから余計に心が刺さる~~!くそぅ……!次やる時は絶対に勝つ!
「でも、笹川さんは俺のチームにいたからお前らの負けだけどな!」
「はー?グループ戦なんて一言も言ってなかったじゃん!後付けはズルいぞ!」
「そうだぞ!卑怯者め!」
「あーあー!聞こえませーん!」
耳を押さえながら俺は言い返すと、隣で笹川さんがクスッと笑っていた。
「……」
その笑みに思わずドキッとしてしまったのは内緒だ。
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