信長ちゃんと三好長慶さん
海石榴
実録史劇① 信桶狭間の合戦後、信長ちゃんは悩んだ。
永禄4年、信長ちゃんは、桶狭間で今川義元の首をチョン切った。
でも、その顔色はイマイチ冴えない。
信玄ちゃんも北条家からも一通のお祝いメールどころか、「祝・大手柄。おめで
いかん。周りの国に完全に無視されてるでにゃーの。
せめて、おカシラつきのメザシ一匹、送ってチョーよ。
京都の白塗りのバカ公卿どもも、一様にアホ面下げて、
「ほほっ。しょせん、田舎侍同士の局地戦。京の都には関係ないことでおじゃる。ほっとけ、ほっとけで、おじゃるのー」
と、お歯黒口でささやき、信長ちゃんのガッツポーズに水をさすどころか、冷笑ザブリとぶっかけた。
そこへノコノコやってきた猿こと秀吉の顔面を、キックの名人たる信長ちゃんは腹立ちまぎれにとりあえずガツーンと蹴飛ばした。
「ヒエーッ。おみゃー、じゃあない信長さま、突然、なにすんの。イタイでにゃーか。ほらっ、歯が三本、かけたでにゃーの。口ん中、血だらけ~」
横から森蘭丸ちゃんが口をはさんだ。
「人より毛が三本少ない猿が、ぬかすでにゃーの。そんなことより、上様のお悩みに寄り添ってチョーよ」
「(´・ω`・)エッ? どうしたというんでにゃーの?」
信長ちゃんは、暗い三白眼を虚空に泳がせ、猿に言った。
「おみゃー、どう思う?」
「( ゚Д゚)ハァ?、何、なに?なんですの」
今度は、蘭丸ちゃんから飛び蹴りが入った。キック成功、バチッと音がして、猿のノーミソがぐにゃっと耳から漏れ出た(以来、変態になったとか)
「おみゃー、上様のお悩みに気づいてないでにゃーの!このバカ猿、エロ猿。ぶっ殺すぞ」
ノーミソが壊れて、蘭丸ちゃんの悪態にもエヘラ、エヘラ。完全に目の焦点が定まらない。
信長ちゃんが猿の耳に指を突っ込んで、穴をふさいでいるノーミソを掻き出した。
そして、頭のテッペンからキンキン声を出す。
「ええか。バカ猿、まず、わしの質問に答えてチョーよ。わしの傑作こけおどしスローガンって、おみゃー、知っちょるかのう」
「ヘラヘラ。知っちょるも、何も、テンカふぶ~って、えらそーなやつでにゃーの。漢字は知らんけど」
ここで、蘭丸ちゃん、脇差をスパッと抜いた。
「ひらがなも知らんくせに。この下郎!上様をコケにするでにゃー!」
その殺気を手で制して、信長ちゃんが秀吉のサル耳にキンキン声を吹き込んだ。
「あのね。今川義元って、海道一のナントカって言われてすごいのよ。そのすごいやつの首、チョン切ったのに、だれもわしのことを、アンタはえらーい、なんて、なんで言わんの。なんで、なんで?にゃー」
「Σ(゚∀゚ノ)ノキャー、Σ(゚∀゚ノ)ノキャー。モンキー。そんなことも、知らんで、テンカふぶ~なんて無理、ムリ。えへへっ、この猿めに、みんなから信長様はえらいっ、とってもすごーい、絶対すんごいなんて言わせ、テンカふぶ~に近づく起死回生の策が……エヘラ、へらへら」
「おおっ、左様か。そう言えば、その皺だらけのバカ顔に、サル知恵があるとウッスラ書いてあるでにゃーの。はや言うてちょーよ」
「ヘラヘラ、えへら。ちょっとお耳拝借」
このとき、秀吉が信長ちゃんの耳に吹き込んだ策は、奇想天外、ノーミソのはみ出たサルしか思いつかぬ驚くべきものであった。
――実録「たぶん、こんなんだったコメディ史劇」次回へとつづく
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