第2話 国境警備隊
国境警備隊基地の背後には、鬱蒼とした森が国境を越えて広がる。隣国との不可侵条約でそこに住む魔獣を適度に退治する努力を両国が互いに誓約することになり、国境警備隊が設立された。警備の緩い方へ魔獣が移動してしまうのを防ぐためだ。魔獣は増えすぎると人里に降りて来て人を襲う。だが魔獣の核である魔石はあらゆるエネルギー源であり、魔法が途絶えた今は消耗した魔石に魔力を再び満たすことができないので、魔石の需要は尽きない。魔獣の肉も大変美味で高値で取引される。だから魔獣退治は一石二鳥で警備隊の維持費の大部分はその売り上げから賄われている。
そのため、国境警備隊の労働条件は厳しい。怪我や病気で5日以上働けないと、基地から放逐されてしまう。希望入隊組は、1年以上国境警備隊に在籍していれば最寄りの町の施設で残りの人生を謳歌できるが、在籍1年未満の者は文字通り、基地の外に出され、年金も何ももらえない。運がよければ警備隊の事務や魔獣解体、肉の加工、馬丁等の仕事にありつけることもあるが、職員は定年まで辞めなければ施設に入って年金をもらえるので、そんなことは滅多にない。
強制入隊組はもっと悲惨だ。死ぬまで魔獣退治に従事するか、働けなくなったら魔獣狩りの際に荷馬車に乗せられて森に放置される。魔獣退治に参加できないぐらいだから、魔獣に襲われても碌に自衛できず、ほとんどの者が魔獣の餌になる。
森で空になった荷馬車は、狩られた魔獣を基地まで運ぶ。荷馬車を曳くのは
新入りのカールは左脚のハンデがあるにもかかわらず、魔石の獲得成績は質量とも皆の予想よりも悪くなく、入隊早々に魔馬の生け捕りも果たした。しかも有名な剣士だった過去を持ち、男前でもあるカールは、本人も知らないうちに辺境で数少ない女達にもてて隊員達の嫉妬の的になりつつあった。
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今回はちょっと説明回です。
カール番外編は、ちょっと調子に乗りまして3話の予定より少し長くなります。
最後までよろしくお願いします。
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