第2話 つくし、踊りながら、首相となる!
3か月でほんとに首相になってた。
私は首相になって、首相のお仕事国会へ行くのと、帰って来て配信をする毎日。
イケオジの高梨さん凄腕。
テレビ会見でグラスで水を一口含んで喉を潤してから、国民に向かってすごいきれいなスマイルで説得。
「日本には少女の首相が必要なんですよ。みなさん。社会情勢を見てごらんなさい。競争・競争で、人心が荒みまくっている。我々は少女の心のような、たおやかかつ、純粋で、優しい世界を作らなければならない。配信者であるつくしさんを見てごらんなさい。少女なのに配信で根底に落ちる人たちを救い、最悪な自己保身だけの富裕を倒して生きようと、必死で自らの思想を作り戦っている。思想とはきれいな水です。よい日本を作るのには欠かすことはできない」
イケオジ高梨さんはグラスを掲げて国民に笑いかけたっ。
ひえぇえ。なんかすごい爽やかスマイルっ。陰キャの私、死んじゃいそうなイケオジ笑顔。
「あなたには思想がありますか? 我々はつくしさんのように、誰に否定されても押し通す強いよいきれいな水のような心の思想を持たなければならない。我々はそれを持つつくしさんを守り、そして、日本を優しい誰もが暮らせる国に変えて行きましょう。わかりますか? みなさん。善意のご協力を」
それから、高梨さんが説得して、党内をバババババって説得。
あっという間に私は首相になってしまった。
私、思想なんてないよお。
単なる煽り配信者だし。金持ちバカスカ言えばウケると思っただけだし。
一方世間は面白がってる人もいるけど、私が首相になるのは懐疑的。
「なんで、配信者が首相になるの?」「ファンタジー小説とゲームしかやって来なかった子供になにを?」「自由憲民党は人気取りのために狂ってる」「高梨ヒカルはコイズミ以来のブルトーザー独裁者だ」「女になにができるんだ。けしからんっ」「つくしって誰? ブサイクじゃないっ」「イケメンアイドルを首相にしろよ」
ひぃい。ネット観ると、賛成3割。反対7割みたい。
完全アゲンストだよお。どうしよ?
そして、首相1日目。私の所信演説。―――首相としてこれからの決意をテレビで述べるんだって。
はあ。どうしよう。
パシャ。パシャ。
テレビカメラいっぱい。
記者の人、真面目な顔。こわっ。
「つくし首相。18歳ではじめて女性の首相となった決意を述べてください」
ひ、ひぃぃ。
ええーーーい。もうテキトーにやっちゃえ。
私は美少女アニメプリキィアの最後に出てくる悪役メッサツ美少女ソードダンスを踊った。
ずんたった♪ ずんたった~♪
ソード。ソードで悪を切る~! 美少女ルルネのお通りだ~♪
ずんたった♪ ずんたった~♪
「ははははは!!! 見ろ!!! 国民よ。私は日本のすべてを楽園に変えるために地獄から帰って来たっっ。地べたに張り付く人類を、中空の楽園へと誘い浮かび上がらせ、そして、必殺の四次元殺法を悪には食らわすっ。悪には食らわすっ。さあ、ついて来い。愚民どもっ。私が首相皇帝のつくしだぁああああああああああああああ。悪の枢軸富裕を倒し、一般市民を幸福へと誘う聖域なき構造改革やってやる!!!! おりゃあああああああああああああっ。これが私の所信表明だぁああああああああああ。行政とは正義の歌だぁああああ。お前ら行政改革の俺の歌をきけえええええええええええええっ」
ドンドン!!
ドンドン!!!
ソード。ソードで悪を切る~! 美少女アキナのお通りだ~♪
ずんたった♪ ずんたった~♪
記者ぽっかーーーん。テレビカメラぽっかーーーん。
「えっ!?」「えっ?」「なにを?」「意味がわかりませんが?」「………大丈夫なのですか? この人が首相になって????」
お茶の間爆ウケだよぉ。……うぅ、うぅ、私、ずっとこのキャラなの?
「いやあ。おもしろい子が首相になったねえ」「ほんと、フレッシュな感じねえ」「なんか日本が若返るみたいでいいねえ」「つくしちゃんっていうのか? かわいいね」「色々やってくれそうな首相だね」「……案外こういう派手な子がいい政治をやってくれたりするんだよね」「わはは。おもしろい」「ほんとにおもしろいよ」「爆ウケだね」
世間はわいわい。わいわい。アゲンストだった空気は一変。賛成9割。私が首相になるのをみんな応援しはじめた。
うそっ!?
私首相なんてやりたくないよっ。視聴者に煽られて立候補せざるを得なくなったけど、私は自由憲民党なんて知らないしっ。
国会行ってびっくり。すごいやばそうなおじさんがいっぱいいるんだもん。
私は首相官邸でニートになってるからわからないけど、首相秘書の神崎さんが丁寧に世間の声を拾って教えてくれた。
「………みごとでございます。よく世間の心を掴んでおられる。つくしお嬢さん。あなたには首相としての資質がある……」
あっ、眼鏡で細い神崎さん渋めで素敵。
この人の未婚の人みたい……結婚してくれないかなあ?
はあ。それでも、いやだよぉ。首相。
落ち込んだときはファンタジー小説よも。
VMMO世界のおっさん少年盗賊の成り上がり。
ギルティスティーーーーーール!!! 宝石ザクザク確保だぜーーーーーー!!
はーーーーっ、スッキリ。
配信では私の所信演説が盛り上がりまくり。私が首相になるって面白がって盛り上がった1000万人が、お祭り騒ぎで祝杯あげてるっ。
私、引っ込みつかなくなっちゃったよお。
> かんぱーーーい。
> 今日はトロニシンを魚に酒飲もうぜ。
> 日本の文明開化や。
> オーク食おう。焼き串オーク醤油味食おう。
> 醤油よりミソだ。大豆だけで作るミソは日本の魂。
> ビールじゃ。酒じゃ。
> 余にウィスキーを持って来い。余ががんばった。
> ぎゃははは。俺のつくしがここまで来たぜ。つくしはやれる。
> おりゃ。盛り上げて行こうぜ。つくしがどれほど強くなれるか。
> やったろやないか? まずは金持ちぶっ殺しやろ?
> くくく。血祭りにあげてやるわ。
> 貧困をなんとか助けたいです。
> 弱いヤツを守り、強いヤツをぶっ殺す。それがつくし。
> ただ、これからどうするんだろ? つくし。
> 気になる。わくわく。
私は非常に困ってた。
イケオジの高梨さんは言ってくれる。
「大丈夫。すべて私に任せなさい。君は可憐にただ、花のように国民を盛り上げたらいいんだよ。すべての政策は私が受け持とう。君がなにかを言う度にそれに合わせた政策を私が打ち出そうじゃないか。すべて、私に任せていいんだよ。つくしくん。安心して好き放題やりたまえ」
はぁ。
高梨さんイケオジ。
47歳で結婚してないっていうし、ニートの私、お嫁さんにしてくれないかな?
私、あんまり前に出るタイプじゃないし、家の中で料理作ってじっとしてたい。
人間関係なんて、高梨さんと二人だけでいいし。
国会行くの嫌。なんか大仁木厚がすごい顔で睨んでくるんだもん。
「おのれに日本はまかせられんのじゃ。なぜ俺が首相になれんっ。小娘がっ」
高梨さんが守ってくれるけど。おじさんだからって関係ないんだよね。党内でもすごく嫌われてる。ちっちゃい世界で生きたい。
高梨さんはにっこり笑った。
「とりあえず、国民も期待してるようだから、配信を続けたらどうだい? 国民もそれを期待しているようだし。つくしくん、君はお金もないようだし、配信でお金を稼いだらいいと私は思うよ。稼げるときに稼ぐことは大切なことだよ」
あっ、高梨さん心配してる。
よし! 配信がんばろ。
私は配信した。
ただ、相変わらずの煽り配信。
私が煽りやらないと、みんなつまんないって怒っちゃうんだよね。
この間、ファンタジー通信しようとしたら、視聴者がすごい暴れたし。
はぁ。
「はははははっ。お前ら見たか? 私は見事に首相になってみせたっ。私の力を持ってすれば、こんなことは簡単なことなんだよっ。はははははは。どうだ!!! お前らにはできまい。私は産まれながらに選ばれた人間なんだよ。はははははは」
はあ。なんていうか、視聴者にウケるために煽らないとならないし、ただ、首相になったけど、私ネタないんだよなぁ。
下手なこと言ってまずいことになっても怖いし。
視聴者1000万人いるし、カウントだけでお金稼いで逃げちゃえ。
そして、高梨さんのお嫁さんにしてもらうんだ。
私、誰だっていいもん。私がニートでお料理作るだけで生きて行けたら。
だが!!!!!
視聴者がいきなりヘンなことを言って私を煽り始めた。
> へいへいへーーーい。つくしぃーーー。調子乗ってんじゃねえか?
> おらおらおら。首相になったからってそれで終わりじゃ面白くねえだろぉおおお。
> ちょっと面白い政策でも打ち出してみーーーろよおおおおおおおお。
うわっ。まずいよぉ。煽り系の視聴者が私を煽りはじめちゃった。
その上、他の人のコメントもなんかそんな空気に。。。
> つくしちゃん。つくしちゃんがみんなを救う政策、期待してます。
> つくしちゃんは私たち女性の代表だから。
> 俺、冒険で疲れたとき、つくしが頑張ってるの見て、なんとか生きてるから。
> やってくれよ。つくし。なにかみんなを救う政策を!!!!!
ひぇええええ。ひどいことになったよ。
私、政策なんてないよぉ。ただ、私がニートでも養ってくれる人探してるだけなのに。
あわわわ。なんか言わなきゃ。
「ははははははっ。諸君は誰に期待してるのかなぁ? 私かああああ? だーーーが、あまーーーーい。
人に助けを求めるなら、それなりの具体案を私に示してみろっ。私はその意見が正当なら動いてやろうじゃないかっ。このつくしは、戦えるもの以外に興味はなぁーーーーい。政策はお前らが示してみろっ。ああン? できないのかぁ。おおおーーー????」
ひ、ひぃ。なんとかなんも話さないでこの場誤魔化し切って、お茶に濁して配信逃げよっ。
が!!!!!!!!
視聴者のコメント。
> 面白いじゃん。じゃあよ。俺の案。ニートと働きたくない人間全員に金寄越せ。
> おお。俺もその案考えたぜ? 金利あるだろ? 金利を金持ちに渡すんじゃなく、俺らに寄越せ。
> そうだ。そうだ。俺らニートに金利渡せよ。
> どんだけ紙幣刷ってるんだよ。その紙幣刷った分、全部ニートと働きたくない俺らに渡せえええ。
> すごいですね。それで世の中よくなりそうです。弱い人が助けられて。
> やってください。つくしちゃん。
ああああああーーーーーー!? なんか政策出してきちゃったよっ。この人たち。
ど、どうしよ?
> つくしちゃん、俺たちを助けてくれ。
> つくしちゃん、期待してる。
> つくしちゃん、お願いだ。
>おいおい。つくし。俺らは政策を上げたぜっ?
>お前、人に案を上げさせといてそれができねえっていうのか? あああああン?
>つくしちゃん。
>つくしちゃん、やってください。
>お願い。
う、うわあ。どうしよ。なんか、1000万人に期待されちゃってる。私動かないとならないみたい。
「はははははっ。愚民ども。私に政策をぶち上げることができないと? 甘い。甘いよ。私は完全だ!!! 完璧美少女だ!!! 私がきっちり、その政策を首相としてぶち上げてやる!!! ニートよ甦れっ。私が不死鳥のように蘇らせてやる!!!! 期待しておれ。愚民ども。私は間違いなくそれをやってやってやるっ!!!! わははははははははは」
ひぃいい。大丈夫なの? 私。
高梨さんに相談もなく。
た、高梨さん、いますぐ私を攫って。私をニートに戻してくださいっ。神崎さんでもいいのっ。
私は誰だって優しい人ならいいのっ。助けてぇええええええっ。
はあ。ゲームとファンタジー小説読むだけで引きこもっていたいよお。
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