3日目

牢獄が暇すぎる。景色はずっと変わらないし、なんかずっとカビ臭いし、耳をすませば雨漏りの音やため息ばかり。夜になれば虫の音なんかが聞こえてくるかと思いきや聞こえてくるのはいびきと歯ぎしりばかり。そして聞こえてくる寝言。

誰かの寝言というのは、暇すぎる私達にとっては最高に楽しめるものだ。当然自分が寝ている時は聞かれていると思うと不快だが。

全員、寝言を聞かれないよう皆が寝静まってから眠ろうと限界ギリギリの睡眠バトルを行っている。

............ただ1人を除いては

メイは大変優秀な騎士だ。真面目で努力家、牢獄に入れられた後も体を鍛えている。が、この限界ギリギリ睡眠バトルロワイヤルにおいては、その真面目さが敗因となる。

彼女は毎日21時に寝て、5時に起きて、そこから運動を始めるような人間だ。騎士団での生活で鍛えに鍛えられた彼女の体内時計は、牢獄内でも健在なのだ。

そして彼女は寝言をものすごく言う。あと普段とキャラが違う。興味を持つには十分揃っている条件、恐ろしく早い就寝。夜は全員が彼女に注目する。

今日聞こえたのはトーマスについての寝言だった。(トーマスは昨日脱獄を提案した男だ。ちなみに彼が1番最初に捕まった)

「ん......トーマス...汗臭い...」

この時点でトーマスはかなりしょんぼりしていたが、そこに追い討ちが来る。

「何髪染めてんだよ...似合ってねぇんだよ。団長ですらもうちょっとまともなファッションしてるよ」

騎士団の中で髪を染めているのはトーマスだけだ。もう彼に生気は感じられなかった。

それもそのはず。今日の朝、メイは脱獄時最初に捕まったことを気にしていたトーマスに

「トーマスさん、あまり落ち込まないで。トーマスさんのせいじゃない。大丈夫です。」

などと優しい言葉をかけていた。それが今はどうだろう。臭い、ダサいなど普通に傷つく言葉を更に尖らせて刺している。口調も怖い。

団長も巻き添えでちょっと泣きそうな顔をしていた。

彼女が寝言で私の名前を出さないことを祈って今日の分の日記を締めようと思う。

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