明日の世界に笑うまで

ぜいにく

プロローグ

友人のリカと一緒に街を出る。

生暖かい風が吹いていて、暑いのかそうでないのかよく分からない。

ペラペラ、パラパラと音が聞こえるのは、向こうに落ちているノートが風でめくれる音だ。

ノートを拾い上げ、軽く読んでみる。"日記"としか書いていない表紙に、つまらない内容。本当につまらない。

ノートをポイッと放り捨て、急ぎ足で歩いて街を出た。

「なんであのノート捨てたの?」

「そんなのどうだっていいよ」

会話が続かない。

喧嘩したわけでもない、ただの他愛ない旅の1日。それなのに、寂しそうな顔をしているリカを見て、私はわざとらしく笑ってみせた。

少し、10秒経つか経たないかくらい間を置いて

「なんでそんな顔してんの?」

「そんなのどうだっていいじゃん」

という会話をした。

......またしばらく沈黙が続いて、気まずさに耐えられなかったリカが声のトーンを上げて、へたくそな作り笑いを浮かべて話しかけてきた。私も気まずかったので話に乗ってあげることにした。

「あのノートってさ......」

「気になるの?でも別に確認するような物でもなくない?」

「そうだけど、やっぱり持ち主のところに...」

「いいのいいの、だって戻るのもめんどくさいし、風で飛ばされてるかもよ?」

「そっか。あのノートの内容って...」

「内容言って欲しいなら言おうか?」

「えっと、私が言いたかったのはそうじゃなくて...あーもういいや。じゃあ、次の街まで長いしお願いしてもいい?」

「ん、わかった。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る