無自覚男は楽しく生きることにした
おむち
第1話 これは転生しちゃった感じ?
——チッチッチッチッ。
「ん〜〜。1時半、そろそろ2時か…。」
今日も変わらず残業の俺。
ブラック勤務の平凡社会人25歳独身。
大学生のときは彼女もいたし、生活に満足していたはずなんだけど、いまになってはこのざまだ。
「コンビニで晩飯買って帰ろ。」
1人に慣れてしまい、独り言の癖がついてしまった。
まあ、誰も聞いてないからいいか。
というのもクソ上司に仕事を押し付けられ、毎日残業だ。
やってられっか!
って心の中で言うのは自由。
俺は能力も顔も平凡、しかも身長は平均より小さいから、なにされるかわからないのに断る勇気なんてない。
正直、帰ってもすることはないし、困ってるってほどでもないから、この生活をやめたいとは思わないんだよね。
▽▲▽
ん、なんか体に違和感が…。
てか、揺れてる…地震か?
「ほぎゃあ!んぎゃあ!おんぎゃあああああ!」
え、なになになに。
うるさ!残業で疲れた人が寝てんのになのなのさ!
俺何かしましたかね?!
耳に音が鳴り響く。
「無事元気な男の子が生まれましたよ。」
「ほんぎゃああ!うぎゃ!おんぎゃああああ!おんぎゃあ!」
は?赤ちゃん?誰のです?
意味がわからないんだが。
誰か説明求む!
「ふふ。よ〜しよし。ほらクレール。抱いてあげて。」
「ん〜。よちよち。はじめまして〜♪かわちぃねぇ。ほら、パパだぞ〜♪」
「おんぎゃぁっ…?」
え、待って?
——体が揺れてる感覚あるし…最近よくある転生だったりしますか?
どきどきしながら目を開ける。
目にはっきりとしない輪郭が映る。
あの、無駄に顔近くないですか?
どうにかして手を動かす。
開く…閉じる…。
うん、夢じゃなさそう。
これ俺の体じゃん。
なぜか俺はどっかの家の赤ちゃんに転生したみたいだ。
▽▲▽
たぶんだけど、俺は寝ている間に過労死でもしちゃったみたいだ。
帰宅して、いつもどうり明日の準備をして、倒れるように布団について寝た後の記憶がないから、そうとしか言えないんだけどね。
結構あっさり死んだことには驚き。
冷静にみて、普通に酷い生活送ってたな、俺。
前の生活にミリも未練はないし、結果良ければ全てよしかも?
てか、会社にどう伝わってるんだろう。
どうせあのクソ上司、別のやつに仕事押し付けるんだろうな。
あ、でも、もう俺には関係ないか。
▽▲▽
赤ちゃんに転生してから数日たった。
この生活はなかなかにいい。
一部を除いては。
赤ちゃんの体は空腹感や不快感を感じるとどうしても泣いてしまうのだ。
自分ではどうすることもできないから頼るしかないんだけど、仕方ないこととはいえ、いい年した男が世話されるのは恥ずかしすぎてきついというもの。
——とくに。
「うぎゃあ!おんぎゃあああ!おんぎゃあ!」
「は〜い。お乳かな。今あげるからね〜♪」
はい、きたこれ。
ほんとうに慣れない。
なんたって俺は成人男性だったのだから、目の前に乳があってなんも思わないわけがない。
まあ、嫌ではないから、転生先が赤ちゃんで良かったかもしれない。
それと、わかったことがいくつかある。
まず、この人間。
母のイレーヌ。
とにかく美人で華奢だ。
髪は銀髪?白髪?で目は青い。
生まれたとき、すごく顔が近かったのは父のクレール。
結構肉付きがよくて、厳つい感じが少しするがイケメン。
髪は明るめの茶髪で、目は緑っぽい。
とにかく初日の言動やこれまで見てきた行動のほとんどが親バカっぽいが、このジュスタン家の当主だ。
それと俺の名前はノエルなんだって。
イレーヌとクレールが「ノエルちゃん」って何度も呼んでた。
たぶん男だと思う。
てか、女だったらもと男の精神にはきついぞ。
そうそう、驚いたことにこの家はどうやら貴族のようだ。
メイドはいるし、何度か廊下でそれっぽい会話をしているのが聞こえてきたから。
確か公爵だったかな?
これがどのくらい高い位なのか俺にはわからない。
さすがに多少はぼんぼんだろ。
けど、貴族らしいし、わりといい生活ができそう。
転生先の未来が暗いとかはなさそう。
これ以上の情報はなかった。
俺はゲームをしたり漫画を読んだらする趣味がなかった。
だから、何かのゲームのキャラに転生しました!なんて展開があったとしてもわからないのだ。
大学生のころに少し転生関係をかじったことはあるけど、それくらいしかない。
ほぼ無知と等しい。
神様にあってもいないから、たぶん何か強力な力を持ってるわけでもなさそう。
…ん?じゃあ、何で言葉が日本語に聞こえるんだろう?
勝手に変換されてるのかな?
文字とか読めるのかな?
両親絶対に日本人じゃないと思うんだけどな。
それは置いといて、これは願望だけど、魔法があるといいなと思う。
日本人の誰もが一度は憧れるだろ、これは。
俺は日本にいたころ、引かれた線路をそのまま歩くような何の変哲もない、平凡な人生で幕を閉じてしまったから、この人生は、とにかく何かしてみようと思う。
いっぱい足掻いて、何か掴みたい。
今は赤ちゃん生活楽しむとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます