あの祭りの日、メイドカフェに幽霊がでた
優たろう
第1話
閉店直後からはじまった引継ぎは深夜0時過ぎまでかかった。マリから産休のため2号店を手伝ってほしいと連絡があったのは2カ月前のこと。本店で一緒に働いたマリからの頼みとあって二つ返事で受けて、この店に来たのは2週間前。明日からマネージャー代行の半年がはじまる。
引継ぎの後、残しておいたメロンパフェを食べ終わってから、マリは「最後に」と思い出したように「カナコさんの幽霊」の話をした。
マリがこの店に来る少し前、カナコというメイドがいた。彼女は地味でおとなしい性格だが、真面目でていねいな接客で周りから好かれていたという。そんな彼女が失踪したのはお祭りの日の夜だった。警察の捜査も行われたが、未だに何の手がかりも発見されていない。そんな彼女が毎年、お祭りの日の深夜、この店に現れ「タクミくんはどこ」と聞いて回るという。話し終えた後、マリは「自分も去年見た」と付け加えた。その祭りは来月行われるという。
マネージャーの仕事を引継ぎ、勝手の違う調理マニュアルと思った以上に多い事務作業に終われ、息つく間もなくあの祭りの日を迎えた。
祭りの日は、メイン会場から離れたこの店にも大きな恩恵をもたらした。1週間前には予約が埋まり、当日はいつもより4時間も早く料理の仕込みがはじまり、冷蔵室に収まらないほどのビール瓶が並んだ。店内は帰省ラッシュの新幹線のようだった。ただ、毎年恒例なのでホールの子達もキッチンの子達もこの喧騒に動じず働いてくれたのがせめてもの救いだった。
午後3時を過ぎたところで一人ずつ休憩に入ってもらい、自分の番になったときにプラム(21才・151cm・おかっぱ・メイドリーダー)が私を呼びに来た。「タクミくん」が来たという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます