第2話 1周目 オープニング
『ヒロインネーム:カナエ』
新しいヒロインネームが、ゲームに入力された。
キュルキュルと時間が巻き戻り、倒された筈の魔王が復活し、世界がリセットされる。そうして、また新たなゲームが始まった。
「おお、聖女よ、召喚に応じて下さり、感謝します!」
「やったーーーー!」
魔法陣に現れた少女は、辺りを見回すなりガッツポーズをして叫んだ。
おかしい。ここのヒロインの台詞は、「キャアッ! ここはどこなの!?」あるいは「どういうこと? 何が起きたの?」の筈だ。選択肢でそう決まっている。そこに私が膝を折り、挨拶をする流れの筈なのだが。
呆気に取られてヒロインを見ていると、ぱっと目が合った。瞬間に彼女の顔が笑顔で輝く。
「私、カナエって言います! お名前をうかがっても?」
私の前へとずんずん進み出た彼女は、手を差し出してハキハキと言う。この場にいる誰もが、彼女――カナエの行動に驚いていた。何故なら、ヒロインはゲームに出てくる選択肢通りにしか動けない筈だからだ。
「どうかしましたか?」
ぽかんとしていたのを指摘され、はっとする。
「失礼いたしました、レディ。私は、この国の第一王子、ミヒャエル・アーネストと申します」
握手のために差し出された手を跪いてとり、挨拶をする。
「突然このように不躾にお呼びたてした事をお許しください。貴女には、聖女として、この世界を救って頂きたいのです」
「うんっいいよー! 任せて!」
にっこりと笑ったカナエは、空いた手でドン、と力強く胸を叩いて見せた。
瞬間に、オープニングテーマ曲が流れ始める。通常なら、彼女が承諾する前に、彼女が「聖女とは何か」だとか、「モンスターなんて怖い!」だとか少し揉めるシーンが入る筈なのだが、かなりおかしい。変ではあるのだが、ゲームシステムは動いているらしく、ストーリーは進んでしまっている。
自身の好感度パラメータが、30%になっているのを確認して、私はそっとため息を吐く。
このゲームはプレイ前にモードをイージーからハードまで選ぶ事ができる。イージーモードの場合は、攻略したいキャラクターを先に選ぶ事ができ、オープニングの時点で好感度が30%からスタートするのだ。つまり今回のストーリーでは、私が攻略されるらしい。
システムがよく判らない動きをしている中ではあるが、メインヒーローとしての役目はきっちり果たさねばなるまい。出来る限り、いつも通り果たせるように努めるとしよう。
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