ショートショート・『はい、チーズ』
夢美瑠瑠
ショートショート・『はい、チーズ』
(これは、今日の「はい、チーズの日」にアメブロに投稿したものです)
私には恋敵がいて、彼を取りっこしているのです。
彼は、私の方が好きみたいだけど、恋敵の女はすごく積極的で、しかも美人で財産もあるのです。私の隙を狙って恋敵は彼にしょっちゅうLINEや電話をして、”イマカノ”の私の足元をすくおうと、虎視眈々なのです。
この間はついに、私が知らないうちに、恋敵と彼はホテルに行ったらしい!
恋敵の女が(伊勢志摩子といいます)、友達に言いふらしていて、私の耳にも伝わってしまった。志摩子はそれが狙いだったのだ。裏切らせて、怒らせて、私に彼を思い切らせようとしたのだ。
許せない。
私は何とか志摩子と彼の間を裂こうと思って、いろいろとスマホをいじって、「恋敵を陥れる方法」を検索していました。
くずのウソ情報もどっさり見つかったけど、玉石混淆のその中にどうにか「信憑性がある」、”水晶玉”も見つかった。
で、私はそれを実行してみたのです。
…「はい、チーズ!」
騙されていることに気づかずに、彼と志摩子はにっこり笑ってピースサインをした。
いわゆる2ショット。
「アブダカタブラ、アブダカタブラ… …」
…撮れた写真に、私は古代ヘブライ語の「死の呪文」を厳かに唱えて、写真からアプリの機能で志摩子の部分だけ消去した。
これで、志摩子には一生消えない呪いがかかって、この世から消えるか、少なくとも彼の目の前にはもう現れないはずだった。
その願いは成就した。まもなく志摩子は重い病魔に襲われて、入院を余儀なくされて、彼の前に現れなくなった。
「シメシメ…」わたしは事の成り行きに満足してほくそ笑んだ。
が、考えが甘かったのだ。
しばらくして、あのヘブライ語の呪文が呼び出したらしい、褐色の、目の覚めるようなすごいグラマー美女が彼に付きまとうようになり、たちまち彼を虜にして、二人は結婚してしまった。
よく検索した情報の説明を読み直すと、消去した写真の部分には自分の映像を填めこんでおかなければならなかったのだ。
「さもないと、アラビアン・ナイトでおなじみの魔神の”ジン”の化身が現れて悪さをするかもしれない…」そういう但し書きがあったのです。
…で。
…彼とその”魔神の化身”の結婚写真では、やっぱり『はい、チーズ』と二人が微笑んでいる…はずでしたが、彼の隣に映っていたのは例の嬋娟にして窈窕たるエキゾチックな美女ではなく、”むくつけき大男の魔神”で、そいつはしてやったりとばかりににっこりと笑っているのでした…
<了>
ショートショート・『はい、チーズ』 夢美瑠瑠 @joeyasushi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
UFO/夢美瑠瑠
★15 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます