幽霊じっちゃんと俺の看護師成長物語
虎娘ฅ^•ﻌ•^ฅ
第1部 新人看護師
File1.じっちゃんと俺
懐かしい夢を見た。
まだ俺が小さい頃、父方祖父の実家近くに流れている川の麓で、じっちゃんと川釣りをしていた懐かしい夢———。
あの頃は何をするのも楽しかった。
そんな楽しかった思い出も、目覚ましの音でかき消された。
朝7時。ドラゴンボールのテーマ曲が鳴るスマホに手を伸ばし、画面をスクロール。スヌーズ機能が作動しなように解除し、ベッドから起き上がった。窓際まで歩き、勢いよくカーテンを開ける。
「まっぶしーな。今日も清々しいくらい晴れてるわ‼」
■□■□
俺の名は
幼い頃に母親を病気で亡くし、父親と2つ歳の離れた姉貴と一緒に
いつものように顔を洗い、モンダミンで口を漱ぎ、瞬間湯沸かし器に水を入れスイッチを押し、テレビの電源を点ける。
そんな何気ない朝を過ごしていた。
非日常的なことがあるとするならば―――、1人暮らしの家にじっちゃんがいることだろうか。俺のベッドに半分身体の透けているじっちゃんが腰掛け、俺と同じようにテレビを観ている。今では見慣れた光景だが、初めて目の当たりにした時には驚愕した。
■□■□
―――――10年前。
就職してまだ間もない頃、父親から珍しく電話が掛かって来た。
「楽、元気にしてるか?」
「おう元気。珍しいじゃん、父さんが電話してくるなんて」
「そうだな」
「何、俺これから出勤なんだけど、なんか用事?」
「これから仕事か。…そんな時に悪い。すぐ終わるからよく聞きなさい。…おじいちゃんの事なんだが……、ついさっき、おばあちゃんと母さんのところへ逝ったところなんだ」
「……そっか。…じっちゃん、死んだのか」
「今日の11時9分にな。最期まで楽のことを心配してたぞ」
「俺が最後にじっちゃんに会ったときにはピンピンしてたのにな…」
父親と電話で話しながら、最後にじっちゃんと過ごした日を思い出していた。
高校を卒業した3月20日の朝、引っ越し業者による荷物の積み入れが終わり、出立する前が、生きたじっちゃんとの最後の思い出だった。
「楽人、人様に迷惑だけはかけるんじゃないぞ!!」
「わーってるよ‼」
「やんちゃしとった時となんら変わってないおまんが、ここ出てやっていけるとはわしは思わんわい」
「その言葉、よーう覚えとくわ。変わった姿、じっちゃんに見したる」
「けっ、偉そうに‼そういう事は変わってから言うもんじゃ」
「ちゃんと変わった姿見るまでくたばんなよ」
「簡単にくたばるか!!」
所々抜けた歯を見せて笑い、首から黄色いタオルをかけ、グレーのTシャツに白色のすててこ姿で手を振る姿が、俺の記憶に残る生きていた頃のじっちゃんだった。
―――その記憶に残る、生きていた頃のじっちゃんと同じ姿が目の前にあった
―――半分透けた状態で。
「おう楽人、何年ぶりじゃ?」
「はあっ?!じっちゃん?!」
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