第17話 サシャを家に送る。

サシャを抱きかかえて中隊室のソファーまで運び、そっと寝かせると


「あ、あの、有難うございました。」


「いや、こっちこそ守ってもらって、ありがとな。今日は家で、ゆっくり休んでくれ。」


「え、一人で帰れないです・・・よ・・」


「ミルシャにでも、送らせるか。」


「そこは・・人任せにしないでよぅ。」


「お前は一人暮らしだろ?」


「違いますよ。妹がいますよ?」


「ん・・・微妙だな・・一人暮らしでは、ないけど・・・妹か・・・」


「普段なら断る所だが・・・今回だけだぞ。」


「やったぁ~!」


「お前は喜ぶのが上手だな 、ホントに嬉しそうに見えるから、また、喜ばせたくなって何かしてあげたくなるな。羨ましい」


「そうかな・・・嬉しい事を嬉しいって表現して口に出してるだけなんだけどな・・って、ホントに嬉しいですよ。もぉ。」


「じゃあ、皆が帰ってきたら送ってってやるから、大人しく寝てろよ。動いたら一人で帰れよ。」


「了解です。」


部屋を出て自分の部屋のソファーに座り、しばらくすると。


リリア、マークが入ってきて


「無事に帰還できました。」


「私の部隊も皆、無事に帰還いたしました。」


「初の出撃で、実践だったから疲れているだろうから、今日は帰って休んでおけ。」


「サシャは、どうしたのですか?」


「俺を守るために攻撃をくらってケガをしたんだが治癒魔法で治療はして大丈夫なんだが・・・休ませている。」


「そうだったのですか・・・無事で良かったです。」


「大隊長を守るってスゴイですね。」


「大隊長なら・・・その攻撃を受けても大丈夫だったのでは?」


「そんな事は言うなよ、サシャが身を犠牲にして守ってくれたんだぞ。」


「あ、そうですね。余計な事を言いました。」


「俺はサシャを家まで送っていく約束をしてしまったので、送って家に帰る。」


「サシャを、家まで送っていくのですか?」


「約束をしてしまったのでな・・」


「気を付けてくださいね。」


「では、帰るぞ。」


 


部屋を出てサシャを背負ってサシャの道案内でサシャの家に着いた。


「ココが、わたしの家です」


「家と変わらない大きさだな。二人で大きくないか?」


「両親が残した家なので。」


「それも、うちと同じだな。」


サシャから鍵を渡されて家の中へ入ると部屋まで案内をされてベッドに、そっと寝かせた。


これがサシャの匂いか・・・いい香りだな。


「そこに椅子があるので使ってくだい。」


「いや、もう帰るぞ。」


「わたしを一人にするんですか?」


「はぁ。いつまで居れば良いんだ?」


「妹が帰ってくるまでお願いできるかな?」


「ああ、分かった。」


「制服は洗って返すね。」


「いや、そのままで大丈夫だぞ」


制服を脱いで畳んで置くと胸が見える・・・


「だから胸が見えてるぞ。」


「大隊長しか居ないので大丈夫だよ。」


「俺が大丈夫じゃないんだが。」


ドアの開く音がして


「ただいまぁ~」


と可愛い声がして部屋のドアが開いた


「お姉ちゃん大丈夫?どうしたの?服が焦げて穴が空いてボロボロだよ。」


「お姉ちゃんを宜しくな。」


「あ、はい。有難うございました。」


「詳しくはお姉ちゃんに聞いてくれ。俺は帰るからな」


部屋を出て帰る


 


翌日、サシャも無事にやって来た俺の部屋に。


「ヒドイですよ。すぐに帰っちゃうなんて。」


「妹が帰ってくるまでって約束だっただろ。」


「・・そうなんですけど・・・」


他の中隊長も入ってきた。


助かったな。


「よし。皆、揃ったな。」


3人が起立して敬礼をする


3人「はい。」


「では、会議室に移動して昨日の反省点や改善点を話し合うか」


移動しようとしていたらクーラントが入ってきて


「また、エンジェル帝国が攻めてきました。」


「はぁ。では、出撃準備ができ次第行くぞ。」


4人「了解」


3人が出ていくがサシャは残った。


「お前も準備があるだろ」


「わたしは秘書だから。」


「はぁ。好きにしてくれ。」


「はーい。」


「お前は自由で良いな。」


「そうでも無いですけど・・・」


「初めて会った時は全く性格が違うしな」


「えへへへ・・・普段はそっち、なんだけど・・・。大隊長と居ると、こうなっちゃうんですよ。」


「そうですか。」


クーラントが入ってきて


「準備が出来ました。」


「行くか。」


「はい。」


外に移動して、皆に出撃の命令を出す。


「また、エンジェル帝国が攻めてきた。規模は不明だが昨日のように対処すれば、今日も無事に帰ってこれるだろ。では、行くぞ。」


ライトが飛び立つと皆が続き目標地点に到着した。


「この辺だな、前方だけを警戒するなよ。上空や地上も警戒してないと殺られるぞ。」


「はい。」


忠告した通り、待機している空中より上空から、攻撃を受けたが、忠告したばかりだったので皆すぐにバリアを張れて無事だった。


『これから第三中隊は後ろから攻撃を仕掛けて追い回してやれ。第二中隊は地上の探索だ。第一中隊は回り込んで横から攻撃を仕掛けろ。俺は上空からファイアショットの雨をくれてやる。作戦にかかれ。』


ライトが物凄い速さで高度を上げていき見えなくなり、皆が呆然と見ていたが慌てて行動を開始する。


第三中隊が、エンジェル帝国の後方に付き、攻撃を仕掛けて追い回して、第一中隊が回り込んでエンジェル帝国の飛行隊とのタイミングを伺って待機していると


『これから雨が降るのでエンジェルの飛行隊から離れよ。』


『了解』


上空からファイアショットの雨が、本当に降ってきて30機が飛んでいたが、今のファイアショットの雨で全滅した。


『第二中隊は、地上の敵は見つかったか?』


『今の所、発見できません。』


探索スキルで辺りを調べてみると第二中隊の前方に敵と思われる反応が多数見つかった。


『第二中隊はすぐに引き返して後方にバリアを張ってある程度、距離を取ったら待機だ。』


『了解』


遙か上空で待機していた、ライトが敵が集まっている所の上空まで移動して目視で確認をする。


戦車に目標に設定をして、ファイアショットに徹甲弾付きの2段階炸裂を多重化スキルも追加しておいて放つと50輌あった戦車の上部に穴が空き炸裂音が鳴り響くと、辺りが静まり返る。


歩兵隊が辺りを見回すが異常が見当たらず首を傾げるだけだった。


歩兵隊や魔導士部隊に向けて、ファイアボールに散弾と多重化スキルを追加して、放つとファイアボールの雨が降ってきて、爆炎が辺りに燃え広がり、爆風が辺りを襲い吹き飛ぶ。その中を散弾が飛び交う恐ろしい場所となったが、生き残りが数人いるのがスゴイね。


助かる場所があるとすれば・・・戦車の下だな。


『第二中隊は、先程の場所へ戻り残敵を殲滅せよ。』


『了解』


『第一中隊は第二中隊の応援をせよ。第三中隊は上空の警戒をせよ。』


『了解』


探索スキルで辺りを、もう一度探るが異常は無さそうだな。


あるとすれば・・・この上空まで来れずに、むくれて頬を膨らませているサシャが居ることくらいだ。


残敵の反応も消えたし帰るか。


下降してサシャと合流して


「何をしてたんだ?」


「・・・大隊長の隣に行こうとしてただけです・・・」


「で、何で頬を膨らませているんだ?」


「隣に行けなかったからだよ。もぉ」


「訓練が足りないんじゃないか?」


「・・・普通あんなに上空まで上がれないよ。ふん。」


「何で俺が怒られるんだよ。」


「分かんない。」


何で俺がご機嫌を取らないといけないんだよ・・・


仕方ない・・・


「そう機嫌を悪くするなよ。」


とサシャの頭を撫でると、すぐに笑顔になりご機嫌になった様だ。


「うん。なんかもうスッキリした。」


「早いな。」


「分かった。大隊長とのスキンシップが少なかったからイライラしてたんだよ。」


「俺はタバコとかと同じで依存性があるのか?」


「アハハハ・・面白い事を大隊長も言うんだね。」


「お前の方が見てて面白いけどな。」


「見てて可愛くて癒やされるの間違じゃない?」


「まぁ、それもあるかもな。」


「え、ホントに?冗談で言ったのに。」


「かもな、って言っただろ。」


嬉しそうなサシャ。


『各中隊に集まり、集まり次第帰還せよ。他に任務が出来たのでサシャは俺と帰還する。以上』


『了解』


「ねぇ、ねぇ。任務って何するの?」


「はぁ・・・お前が中隊を放っておくから、お前の中隊は、お前が帰ってこないと帰還できないんだぞ?」


「あぁ、そういう事か。」


「そういう事だ。」


「って事は・・・一緒に帰れるんだね。やったぁ~」


はぁ・・・コイツはミルシャより厄介だな・・・


ミルシャのバリアになってくれてるけど。


ただ交代した感じなんだよな。


「何を難しい顔をしてるの?」


「お前の対処方法を考えてるんだよ」


「対処方法?」


「どうやって、お前から逃げるのかを考えてるんだよ。」


「何で、わたしから逃げちゃうの?」


「何でって・・・俺には嫁が居るし」


「嫁が居ても問題ないよね?」


「問題あるだろ。」


「え?何の問題が、あるんだろ?無いとお思うけど・・・」


「えっと・・・」


何の問題があるんだ?


見た目は可愛くて好みではあるだろ。


サキとも仲良くやっていけそうでは、あるかもな。


性格は・・・一途でって感じかな?


あれ?問題ないのか?


「どうしたの?」


「考えてたんだが・・・問題は無さそうだな・・」


「うん。問題あったのは大隊長の決心だけだよ。」


「そうか・・・だったら、うちの嫁に紹介するか」


「え?!ホントに?やった~・・・でも不安だなぁ」


「お前が、不安に思うことが、あるんだな。」


「いっぱい、あるよ。もぅ」


帰還してしばらく、エンジェル帝国の攻撃が落ち着いている。


きっと、飛行機や戦車を増産してるんだろ・・・きっと。


運命の休みの日が来た・・・


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