駆けろ流星、星海に響くは鎮魂歌
#126 バトロワは大体初動が命
青い空!白い雲!広大に広がる海と、その中央にそびえたつ一つの島!
いやぁ~本日も快晴也!まさしく銃声日和ですなぁ!
≪他プレイヤーを殲滅し、最後の部隊になるまで戦い続けろ≫
さーて今日プレイしていくのはAims!
ゲームモードは性懲りも無くバトルロイヤル!!やっぱバトルロイヤルと言えばFPSでやるのが至高!!異論は認める!!
「ひゃっほぉぉぉぉおぉおおおおおお!!!」
はーい皆こんにちは!!僕の名前は傭兵A!しがない傭兵をやっているものさ!
ただいま高度千五百メートルからの空中ダイブを敢行している所さ!!
「傭兵テンションたけーなおい」
「そりゃあもう久しぶりのFPSよ!本場のバトロワでテンションが上がらないはずがねえ!!」
風にあおられながら奇声を発している僕の隣で呆れた顔をしているのはライジン!
僕の親友にしてとんでもない視聴者を抱える大型配信者さ!
「あはは……。これ、私も参加して良かったんですかね?折角の
「生憎だがスキルマッチングの影響でライジンをキャリーするには荷が重すぎる」
「ひでえが否定できん。まあ、大体そういう事」
「ああ、なるほど……」
そしてもう一人の頼れる相棒。SBOでの美少女面はどこへやら!ごっついオッサンアバターで俺の言葉に納得しているのはグレポン丸!俺のフレンドにして良き隣人さ!
そう、そしてポンの言動からあるように今日やっているのはただのプレイではない。ライジンから持ち掛けられた生放送コラボ企画の真っ最中である。
「初動どこにするよ?アーカイブ辺り降りる?」
「まあこの位置でダイブ開始したってことは激戦区に降りるだろうなって思ってはいたが……。傭兵に任せるよ」
『アーカイブ』と呼ばれるエリアは巨大な建築物が何棟も存在する複雑に構成されたエリアだ。それゆえに落ちているアイテムの数も豊富で、初動に降りる時に適しているエリア故、プレイヤーもそれなりの数降りる事が多いので激戦区と呼ばれている。
「OK、じゃあこのままアーカイブ降りてそのまま中心円に沿って行動していく感じで!ポン、周囲の部隊数は?」
「アーカイブ降りが4、隣接するソルトシティに2部隊降りてます!」
「了解、装備次第でやるか決めるか!」
ポンの報告を受けてダイブの速度を上げて地面へと急降下する。そして、地面が近づいてきたら着地用固定装置を射出。アンカーが地面に突きたてられると急速に縮み、アメコミ張りの着地音を響かせて着地する。
「Aimsよ……俺は帰ってきた!」
着地してすぐに視線を敵の着地点に向ける。
同じ様に固定装置を射出し、突き立てられたのを確認すると、すぐさま地面に落ちている『アブレラ14』と呼ばれる
「俺は正面ビルの中から上に向かって進行する、アイテムは適時報告するから欲しいのあったら言ってくれ!」
『『了解!』』
「マークスマンかボルトアクション辺りの砂無いかなー……お、拡マガ美味しいな」
不自然に放置されたアイテム群の中から拡張マガジンを拾い上げて
周囲を見渡し、自分にとって使いやすい武器群を探してみるが、見当たらないので階段へと向かう。
『傭兵君、砂の
「おっセンキューポン!グレポン見つけたら報告するからそのままキープしといてくれ!」
『ありがとうございます!』
インカムからの通信が途切れ、息を短く吐く。そして密かに鳴った音が聞こえたので、集中する。
(いるな、この建物)
音をあまり立てずに走る音が一つ。初動時のポンの報告には無かったことからこのビルの屋上に後降りした部隊が居たのだろう。一発の威力がそこまで大きくないアブレラ一丁では心もとないのですぐさま自分の居る階層にあるアイテムを確認する。
(
だが、無いよりはマシだろう。エネルギー弾式SMG、『キューティコア』という全くキュートな見た目をしていない厳ついSMGを拾うと、アブレラを階段へと向ける。
(
階段を下りてきて、そのまま顔を出した敵へとアブレラを向け、トリガーを引く。
響く銃声。アブレラから排出された薬莢が地面を転がり、飛来していく弾丸は真っすぐに敵へと飛んでいった。
確かに銃弾は命中した。だが、威力が低いアブレラでは今の射撃で仕留めきる事が出来なかった。
「うおっ!?敵居たのか!」
だが、スキルマッチング制度を導入しているので、マッチングした敵もそれなりの猛者だ。
むやみに突撃してくることは無く、すぐさま敵は上の階へと昇る階段へと引き返していったのを見て一つ舌打ちする。
「敵が居たので交戦した!一応アブレラで130ダメ近く入れたから相手は恐らく
『了解!こちらも武器が整ったのでそちらに向かいます!』
『了解!俺もすぐに向かう!無理して凸るんじゃないぞ!』
すぐさまインカムを繋いで報告を行う。アブレラに込められていた弾倉は空になったのでマガジンを取り外してシステムで自動装填されているマガジンを取り付けてリロード。コッキングしてから壁に隠れたまま息を潜める。
(恐らくここで交戦を始めた事によって別チームもこちらへと向かってくることだろう。ふふふ、これぞバトロワの醍醐味!)
えも言われぬ程の高揚感を感じて口角が吊り上がる。やはりFPSが一番性に合っているのだろう、恐らくは両親の血筋故か。
(後アブレラの弾数は合計120……。ヘッショを安定して決めればこんだけありゃ一部隊は壊滅出来るな。だが、一人で無謀に凸るわけにもいかない。このまま待機で……)
と、次の瞬間、ガシャン!と窓の外で何かが配置されたような音が聞こえてくる。その音を聞いて俺は背筋に冷たい物を感じた。
そっとインカムを起動し、静かに話し始める。
「ポン、ライジン。……今回って援護兵居ないよな?」
『ええ、私は斥候兵ですので』
『俺は突撃兵だぞ。……もしかして』
「ああそのまさかだ。……来る!」
ジップライン特有の甲高い音を響かせながら、ビルの窓からガラスの破砕音を響かせて三人で構成された部隊が突入してくる。
それを見て疑惑から確信へと変わり、俺は思わず笑みが引き攣った。
援護兵特有のアビリティの一つ、ジップライン設置。基本的に、大きく戦況を動かすアビリティを使用するにはある程度の時間生き残りアビリティ使用権限が付与されるのを待つか、他部隊を壊滅させると貰えるポイントで即座に使用可能にするかの二択だ。
恐らく、この序盤の短時間でジップラインを使用するには至らない筈であるので、この『アーカイブ』に降りた別部隊が壊滅させられたのだろう。
上の階には別部隊の内の一人、自分の居る階には一部隊全員。このまま息を潜めて過ぎ去るのを待つか、それとも交戦するか。
(良いね良いね、やっぱこうでないとな!)
一秒一秒に気を抜くことが出来ず、延々と続く緊張感。このスリルこそ俺がFPSを愛してやまない理由の一つだ。
「この階には既に居ないか、上に行くぞ!」
リーダーらしきプレイヤーがそう言うと、他の二人も頷き、その後ろをついて行こうとする。
そんな彼らの後ろから音も無く忍び寄り、片手で口元を押さえつけると、一人のプレイヤーの喉首を掻っ切った。プレイヤーの表示が生存状態から死亡状態に切り替わるのを見て、ほくそ笑む。
すぐさま残る二人のプレイヤーは異変に気付き、後ろに向かってARを乱射するが、弾は虚しく机を撃ち抜くだけ。
「再び交戦!ジップラインで突入してきた部隊の一人はダウンさせた!至急カバーを!」
『了解、すぐに向かいます!』
『ああもうやっぱおっぱじめやがったな!?まあいい、そいつらを殲滅するぞ!』
インカムの接続が途切れ、俺は静かに机の下をしゃがんで動き続ける。
「くそっ、一人芋プレイヤーがいやがったか!この階からは絶対に逃がすな!」
「了解、タグだけは回収しときますわ。相手に奪われるのだけは勘弁だしな」
もう一人の援護兵らしきプレイヤーがそう言うと先ほど喉首を掻っ切ったプレイヤーの死体からタグを回収する。このタグを使用してアビリティ使用権限を解放するか、蘇生権を得るかの二択を得られるので、それを避ける為の回収だ。
(さぁーて、どう立ち回りますかねぇ?)
勿論、交戦し始めた以上、この部隊を逃がすつもりなど毛頭ない。それに、他部隊を壊滅させた部隊という事もあって、装備も整っているように見えるので、ここで彼らの装備を奪う事が出来ればこれからの試合内容に大きく影響してくることだろう。
(折角のライジンとのコラボ生放送だ、少しばかり張り切っちゃいますかね!)
俺はアブレラ14を握ると、目の前の部隊に対してどう立ち回るかを考え始めた。
────
新章【双壁】編突入です。しばらくは0時、8時、16時に3話ずつ投稿していきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます