#045 1st TRV WAR 予選 その一


 はーい!1st TRVトラベラーズ Warウォー味方と合流RTAはーじまーるよー!


 今回のRTAの計測期間はテレポートで大会マップに飛ばされてから計測を開始して味方全員合流までを計測するぞ!


 本RTAにおけるレギュレーションはファストトラベル禁止!その他には制限無いから取り敢えずカオスに楽しく走っていこうね!


 さーてさて、最初の難所テレポートガチャ!


 この位置によって本RTAのタイムに大きな影響が出てきます!ちなみにこのガチャに失敗したら再走決定だよ!なお一度切りなので再走不可能な模様(一行で矛盾発生)。これなんてクソゲ?


 さあテレポートガチャの出現場所はー?





「大ガバじゃねーか!はい再走どうぞ!!」


 待ち合わせ場所の真反対、森林地帯に出現しました。これは攻めチャートでも最短一時間はかかるコースですね……。RTA走者のライジン君を見習おうぜ!あの人運ゲでも割と強いからなぁ……。


「とと、取り敢えず所持品確認しないと」


 遊んでる場合じゃねえ。確か弓矢と装備以外は使用制限が掛かって支給のアイテムしか使えないようになるんだったな。俺のスキルはMPを使う物が多いからポーションの数を確認しとかないと。


 周囲を確認し、プレイヤーがいないのを確認してからウインドウを開く。



――――――――――


・初級HPポーション(低品質)x10

・初級MPポーション(低品質)x10

・初級HPポーション(高品質)x5

・初級MPポーション(高品質)x5

・木の矢x20

・石の矢x10

・鉄の矢x5


――――――――――



 支給品にしては割と貰えてるな。矢が貰えてるのは俺が狩人だからか。ほかのジョブの人はそのジョブに応じたアイテムが貰えてるのかな?

 で、低品質の初級ポーションは10回復、高品質で15回復なので大事に使いたい。序盤でさっさと敵を狩って回収するのもありだが一人で暴れると他のプレイヤー寄ってきそうだしな……。

 それに、俺は約千三百人のターゲットになっているから迂闊には動けない。

 ウインドウを閉じて動こうとした時、前方から音がした。


「……ん?」


 足音。だが、かなり小さい。これは足音を消す事を常日頃から行っている人間だろう。俺のFPSセンサーが反応してやがるぜ……!

 PVP上級者の人間か?音に注意を払っていないプレイヤーなら気付けないだろう。これは最初の内に潰しておかないと後で脅威になるかもな……!


 聞き逃してしまいそうな音をしっかり聞き取り、【野生の心得】発動。意識的に排除されやすくなった所で矢を装填する。


 チャージショットを発動。息を軽く吸って集中。この足音が最も近くなった時、音を頼りに最速で仕掛けよう。

 3……2……1……!今!


 ピシュっと音を立てて矢が高速で飛んでいく。これは貰った!


「うおっあぶねっ!?」


 だが、音の主はどうやら回避したようだった。

 ……なに!?今の矢を回避するなんてどんな反射神経してやがる!これはますます後に残したらマズイ!早々に排除しなければ!


 腰から【水蜥蜴のコンバットナイフ】を抜き取り、近接戦闘に移行する。飛び出しからの最速の刺突もいなされ、舌打ちをしてから顔を見ると……。


「……串焼き先輩?」


「村人じゃねえか!オイ、お前なんでガチで俺を殺しに来てんだよ!」


 少し冷や汗をかいた様子の串焼き団子がそこに立っていた。すぐにナイフを鞘にしまうと、苦笑いを向ける。


「いやだってまさか串焼き先輩がこんな近くにいるとは思わなかったし……」


「俺も同じだが仕掛けるんならせめて顔見てからにしてくれ……」


 呆れたような表情で串焼き団子が肩を竦める。結構本気で襲い掛かったのに余裕そうなのが癪だが串焼き団子の実力を考えればまあ妥当か……。


「あ、でも串焼き先輩一人でも生き残ってやるって言ってたよな?ここで解散しとく?」


「お前それ俺の事後ろから奇襲する気だろ」


 ちっバレたか。まあ本選で戦えばいいしな。あとの楽しみにとっておこう。


「まあいいや。えっと、串焼き先輩もまだ敵に遭遇してない感じ?」


「まだ会ってないな。お前が初遭遇……なんだが、こんな近くにいたとなると……」


 ガサガサと草むらが動く音。その音を聞いて串焼き団子の顔に笑みが張り付けられる。


「俺と村人の声を聴いて近くまで来ていたみたいだな。……どうする?」


「無論、全滅させるまで」


「了解」


 背中を串焼き団子に預けて矢を装填する。ふふふ、楽しくなってきた……!これでこそバトルロイヤル!奇襲がセオリー、戦い始めれば全滅まで戦い続ける!


「足を引っ張るなよ、串焼き先輩」


「お前こそな」


 無言のまま飛び出してくる斧を持ったプレイヤー。大振りの攻撃を回避すると、脳天目掛けて矢を発射する。装備していた重そうな金属鎧を軽々と貫通すると、頭が吹き飛んでそのままポリゴンと変わる。

 串焼き団子の方にも双剣を持ったプレイヤーが襲い掛かるが、弓を背中に担ぎ直して両手で弾くようにいなすと、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばす。地面にたたきつけられて「かはっ」と苦しそうに息を吐きだしたプレイヤーに追い打ちをかけるように矢を飛ばしてそのままポリゴンへと変えた。


「やるな」


「そっちこそ」


 互いにたたえ合いながら次の矢を装填する。この戦闘の音を聞いて寄ってくるプレイヤーもいるだろう。なら、そのプレイヤー達を迎え撃つまでだ。


「アイテム回収して連戦と行こうじゃねえか」


「ポンには悪いけど百ポイント以上稼がせてもらおう…!」


 死亡したプレイヤー達からドロップしたアイテム袋からポーション類を奪い取ると、すぐさまこちらに向けて走ってくるプレイヤー達に視線を向けた。





「敵影3、チームっぽいですね。……ひとまとまりになったら奇襲を仕掛けましょうか」


 森林地帯から離れた入り組んだ岸部。その一角で一人のプレイヤーが影に潜んでアイテムを取り出していた。

 そのプレイヤーが息を潜めながら眺めているのは三人で行動しているプレイヤー達。剣士、騎士、魔法使いといった攻撃職の集団だった。


「【爆弾魔ボマー】」


 プレイヤーがぼそりと呟くと、手に持っている【ボム】が赤く染まっていく。そして、その手に持っていたボムをゆっくりと構えると、三人の集団が合流したのを見計らって…。


「ごめんなさい」


 一つ、謝罪の言葉を呟いてからボムがその手から解き放たれた。集団の一人がボムを指さして慌てて退避しようとするが、既に遅い。


 瞬間、地形が変形するほどの爆発が巻き起こる。身体を隠すプレイヤーは爆発によって発生した衝撃に耐え、やがてその衝撃が落ち着いたのを確認してから、ゆっくりと立ち上がった。


「三キル、ですね」


 ポイントが3pt入ったのを確認したプレイヤー……ポンは、ひっそりと笑みを浮かべてドロップしたアイテム袋の方へと歩き出す。


(予選通過まで後最大97キル……。この調子で稼げば間に合いそうな気がしますけど早めに村人君たちと合流したいですね……)


 ポンの手持ちは大量のボムが入っているため、少なくともこの試合中は底を尽きはしないだろうが大量のプレイヤーに囲まれた場合に打つ手が無くなってしまう事を懸念していた。

 何人かを相打ちで持っていける自信はあるが、本選に出場できなければ意味が無い。…彼と、戦うと約束したのだから。


 アイテム袋を回収したところで、ポンは足音を耳にした。


「ッ!」


「わっ、ま、待った!」


 慌ててボムを取り出して牽制しようとするが、振り返った先にいたプレイヤー達は両手を上げていたのを見て警戒しつつもボムを持っていた手を下ろす。


「……何か、用ですか?」


「まあまあそんな警戒すんなって。俺達は野良の連中を集めてバウンティーハンターの対象プレイヤーを狩りに行くところなんだよ。……あんたも見たところまだ3ポイントのプレイヤーだろ?どうだ?俺達と指定プレイヤーを探しに行って狩りに行かないか?」


「……」


 そう言ってざっざっとこちらに近付く男。取り巻きの数は十を越している。すっと視線を上に向けるとその男プレイヤーのポイントが既に13ポイントという事を把握した。静かに警戒度を上げると、男は正面に立って腕を差し出してくる。それを見ながら、ポンは口を開いた。


「目的のプレイヤーは?」


「村人Aってやつだよ。知ってるか?」


「……ええ、まあ」


「嬢ちゃんもあいつに投票したのか?まあ、嬢ちゃん可愛いし悪いようにはしねえから一緒に行こうぜ」


「……ライジンさんが言ってました」


「は?」


 ポンは顔を俯かせながら、言葉を続ける。


「バトルロイヤルは全てが敵。友好的に差し出す手にも何かが仕込まれていると思った方が良いと」


 そのままポンはノータイムで拳を繰り出すと、拳が爆発し、差し出した男の手を肘から先を吹き飛ばした。そして、その腕に仕込まれていた毒塗りのナイフが吹き飛ぶと、地面に音を立てて転がる。

 地面に落ちたナイフを見て冷ややかな目を向けるポンと、片腕を抑えて蹲る男。


「ぐぁぁぁっ!?てめっこのくそアマが……!」


「本性を現しましたね。せめて友好的に持ち掛けてくるならポイントをゼロの時点で話を振るべきだったと忠告しておきます」


 恐らくこの男は話を受諾したところで毒で動けなくなった所を襲い掛かるつもりだったのだろう。

 つまらない事をするものだ、とポンが嘆息すると、その態度が癪に障ったのか、男は凄まじい形相で睨みつけるとそのまま襲い掛かってくる。


「ちっとは可愛い顔してるからって調子乗りやがって……!」


 もたついた動きだったので、軽々と避けるとポンは拳を構える。


「可愛いなんて関係ないじゃないですか。……私は、内面を見てくれる人が良いんです」


 そのまま、【爆裂アッパー】を発動させると、男の身体が宙を舞い、錐もみ回転しながら爆発四散した。発動硬直を抜け、ポンは取り巻きのプレイヤー達に視線を向けると、リーダー格の男がすぐにやられたのを見て怖気づいたのか彼らはびくりと肩を震わせた。


「あなた達も村人君狙いですか?……それなら放っておけませんね」


 パンっと拳を合わせると、ニヤリと笑って。


「言っておきますが、私は結構強いですよ。多対一で良いです。やれるものならやってみて下さい」


 そのままくいくい、と挑発するように人差し指を動かすと、取り巻きのプレイヤー達は一斉に動き出した。


 

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