第1章 ストーリーの構造

北風と太陽と旅人から見る起承転結。

ざっくり言えば、いわゆる三幕構成の話です。あくまでも物語のテンプレートであることに留意してください。王道と呼ばれる物語は、たいていこの形式を取っていると一般に言われています。



前提として、ストーリーは、シーンの集まり(集合)であるとします。




1 旅に出る前、これまでの日常(起)


ここに、旅人がいます。旅人は、主人公キャラクターです。


彼には目的地があります。ある地点を目指しています。さて、主人公は今、まだ旅に出ていません。これまでの日常を暮らしています。この日常には、なんらかの不満や障害があって、主人公を苦しめています。


ここまでが物語の冒頭です。「起」と言います。





1.5 心情の変化の要因


ところで、ここに旅人よりも強い存在がいます。太陽と北風です。


太陽は旅人を応援しています。

北風は旅人に試練を与えます。



太陽が出ているあいだは、旅人はまっすぐと目的地を目指せます。「太陽のシーン」では、主人公の主張が通り、主人公が主体的にストーリーを動かします。旅人は目的地への道中を着実に進みます。


ところが、北風が吹いているあいだは、旅人は道を迂回して、これに耐えなくてはなりません。「北風のシーン」では、主人公の主張は通らず、彼は道に迷ったり、精神的に引きこもって動かなくなったり...要するに、人間的な弱さを見せます。




ところで、太陽や北風は、具体的な登場人物のかたちを取ることもあれば、不特定多数の応援・非難になることもあるでしょう。あるいは、それは経済的な成功であったり、他のキャラクターの喪失になるかもしれません。


つまり、太陽や北風の本質とは、シーンの演出であって、主人公の心情をポジティブあるいはネガティブにする要因のことです。


これらの演出が、ある社会的状況でキャラクターに主張を生じさせて、読者に「共感覚」を生みます。この点については、今後の章で解説します。








2 旅の最中(承・転)



では、旅人と太陽と北風という重要人物が揃ったところで、話を始めましょう。



旅人はこれまでの日常を変えるために、旅に出ます。当然、彼の周囲の環境が大きく変化していきます。





まず、生きるためには、食料や水(必須栄養)や地図(今後の展望)が必要です。食料や水で、旅の疲れから体力を回復し、地図で、今後の夢や憧れを語ります。




さらに、素敵な旅仲間が現れるかもしれません。


主人公にフレンドリーな旅仲間もいれば、敵対的な旅仲間もいるでしょう。ちなみに、旅仲間は、いずれもそれぞれの目的地を目指していることに注意しましょう。




このとき、太陽と北風(主人公の感情を変化させる要因)が旅の背景に出現します。そして、旅人である主人公や旅仲間たちの心に、喜怒哀楽を生じさせます。


このとき、旅人はもはや一人ではなく、旅仲間たちと一緒に、この太陽や北風を共有します。ところで、キャラクター同士が、互いに敵対的な関係の場合は、敵に当たる北風は、主人公にとっての南風や春風かもしれません。





ここまでを「承」と言います。


この承が魅力的と言えるかどうかが物語の生死を握っています。いわば、旅の思い出となるビックイベントがここで起きる必要があります。



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旅も、やがては終わりが来ます。この終わりに向けた知らせを「転」と呼びます。


旅の終着地点であるクライマックスに向けて、ストーリーが暴動や撹乱のような凄まじい化学反応を起こします。北風も太陽も、シーンごとに激しくそれぞれの存在を主張します。



転は、作者のストーリーテラーとしての実力が、もっとも要求されています。それはアトランダムな激しい反応でありながら、物語の骨格をなす考え方である、シーンの「必要性」や「説得力」を伴う必要があるためです。









3 旅の終わり(結)


旅の終着点です。「結」と呼びます。これは、承→転→結と続いてきたことによる「物語の余韻」を愉しむことが基本です。


ちなみに、余韻は、共感覚の一種と筆者は捉えています。





また、結と転は区別される必要があります。


結は、旅人の新しい日常です。ですから、物語の冒頭で抱えていた、今までの日常への不満は、新しい日常によって解消されています。


旅が良いものだったという満足感とともに、主人公は、穏やかな日常生活に戻ります。



ただし、ここでふたたび太陽と北風という要因が登場します。


いわゆるバットエンドと呼ばれるものがあります。つまり終着地点に、北風が強く吹いているのです。


バットエンドにおける主人公は人間的苦悩を依然として抱えています。しかし同時に、これまでの旅の過程、思い出にある種の満足感を覚えているケースが、おそらくずっと多いでしょう。





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これが、北風と太陽そして旅人という視点から見る、三幕構成及び起承転結です。


次に内容をまとめましょう。




ストーリーとはシーンの集合であり、シーン変化の構造として捉えられます。


この構造の枠組みは、次の2つです。本記事では、この2つを組み合わせてお話しました。それによってストーリーの性質をあぶりだすためです。


起承転結

1 起

2 承

3 転

4 結


1 これまで日常生活

2 旅のあいだ

3 新しい日常生活



起承転結=旅

1 起=これまでの日常生活

2 承・転=旅のあいだ

3 結=新しい日常生活



他には、次のような話題がありました。




・旅の目的地

・主人公の主張と主体性

・北風と太陽(ネガティブ要因とポジティブ要因)

・旅人(登場キャラクター)

・「転」における激しい化学反応

・シーンの必要性・説得力


(共感覚の話 :2章で述べます)

・人間的苦悩

・食料や水

・地図

・旅の余韻・思い出


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次の記事では、シーンの必要性について簡単に述べさせていただきます。プロットやメッセージと関わる考え方です。

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