第15話

しばらくして空爆は止んだ。そして基地の方へヘリ部隊が着陸してきた。その中から一人、気風を漂わせる男が降りてきた。


「君たちが西日本人民解放戦線の方かな?私は戸部一郎。東日本連合軍司令部の者だ。よくここまで戦いぬいてくれた。感謝する。ええと、リーダーは...。」


「私だ。チョン・クィースーだ。ジョージと呼んでくれ。」


「そうか。ジョージか。よろしく。モグラを止めてくれたのは、君、秦野駿一君かね?」


「そうです。私です。しかし古い論文をあてにするなんて中国軍も余裕がないんでしょうか?」


と私が問うと、戸部は答えた。


「今のところ均衡は保たれているものの、もうすぐ中国側のエネルギーは切れるだろう。あちら様は結局は付け焼き刃なのさ。」


「そうなんですね。」


「それはそうとそこのお嬢様は?」


「ああ、こちらはJapan Fluorineのご令嬢の山城詩織さんです。」


「おお、それはそれは。父上のことも心配でしょう。そちらももうすぐ奪還します。安心してください。」


と戸部が何も気にすることがないように答えた。続けて


「君達が叩いてくれた京都のおかげで指揮系統は完全に崩れて、近畿地方はもはや東日本の手中にある。あとは雑兵が残るのみだ。本当にありがとう。あと、モグラを防いでくれたのは本当にありがたかった。あれは海底を進むからどのように処理をすればいいか考えあぐねていたところだったんだよ。まさか設計者の君がいたとは知らなかったよ。」


「ああ、あれは行き詰った時にバラシて回収するようにわざと裏コードを入れてたんです。設計者しか分からないように。しかしなんであんな古くて一般人が考えたようなものに手を伸ばしたのか。よっぽど策がなかったのかな...。」


と私が末尾を濁すと、戸部が


「奴らのテクノロジーは実際に使えるのか使えないのか、便利なのか、不便なのか良く分からないものばかり作ってるからな。だから日本人の一般人の論文まで手を伸ばしたんだろう。」


「なるほど。」


と納得がいった私だったが複雑な気持ちでもある。


戸部がさらに言った。


「あと一週間で日本全土を奪還できる。あちら側の国力の低下は激しい。台湾も韓国も奪還するぞ。無論、自治権は各国にあるがな。」


「ところで聞きたい!」


とジョージが


「なんだね?」


と戸部。


「俺達、中途半端な国籍で日本で暮らしている者たちにアイデンティティはくれるのか?」


「それは今回戦い抜いてくれたこともそうであるし、与えるつもりだよ。元の国が良いか、日本国籍がよいか、それか、第三の選択肢。君達が決めてくれ。」


「第三の選択肢?」


「そうだ。日本の永住権と選挙権を持つ権利だ。無理に日本人になる必要もないという考え方かな。」


「ああ、そうか。それならわかった。」


「まぁ、ひとまず君らの出番はない。休憩だ。あとは東日本連合軍に任せてくれ。あとでここの人数全員を乗せるトラックが来る。それに乗って新しい基地まで行ってくれ。飯の用意もしてある。ゆっくり休んでくれ。」


そう戸部は言ってへりに乗って飛び去って行った。

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