第3話
そんな中で二匹のアリはせっせと働き、その金で飲んで毎日を過ごすのであった。
「さてと、俺はもう行くわ。俺がここは払っとく。」
と伴場が言った。ケチな伴場が妙だと思った。
「何かいいことでもあったのか?」
と私が聞くと、
「新しい女がな、金をくれるんだよ。金持ちの子なんだとさ。」
「ほんと伴場は女にモテるな。」
「モテるんじゃないよ。気の使い方が上手いだけさ。」
「なるほどね。俺は不器用だからな。」
「高倉健みたいなこと言ってんじゃねーよ。さっさといい女見つけろよ。」
「へいへい。ご忠告ありがとさん。あと、ごちそうさん。」
本当に伴場は昔からモテた。色んな子と浮いた話があった。私はというとひっそりとモテるタイプというか、私が黙っているのならモテるという感じだった。要するに内面がクソ。だから太った今では誰からもモテはしない。だけど伴場ほど女がいないとダメだというわけでもないし、煩雑な思いをすることもないのでそれはそれでよかったと考えることもある。ただ一つ困るのは性処理だけである。昔はアダルトビデオ大国の日本も今は中国の利権で無料で見れたものが金がかかる。彼女というよりセフレが欲しい。そんな感じだ。
「さて、明日の仕事は?」
おもむろにスマホを取り出し仕事の内容を確認する。
「なるほど。明日はお屋敷の家具の入れ替えか。これはチップを貰えるかもな。よし!」
そう言って紹興酒を飲み干し自宅まで帰って行った。
空調のきかない部屋。晩夏とはいえまだ暑い。それに無骨に建てられた必要最低限の寝床。むき出しのコンクリートがなぜだか落ち着かせてくれる。無機質な生活と無機質な性格。それぞれが相まって虚無が虚無を埋めてくれる。ああ、なんて心地いいんだ。このまま死なせてくれ。
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