第4話 瓦礫に埋まる街(その6)
「つまり、結局は歩いて探すしかないのか。この瓦礫の中を」
冬祐はエントランスから外へ張りだした日よけの下で、一面の瓦礫を見渡す。
一面とはいっても瓦礫と化しているのは市内の一区画だけなので、目を凝らせば、はるか向こうに無傷の市街が見えるのだが。
早くもウンザリ気味の冬祐に、ヒメが口をとがらせる。
「しょーがないっしょ。伝えてきた座標が中途半端なんだから。だいたいの範囲しかわかんないよ。ピンポイントで特定なんて無理無理無理無理無理無理」
「ま、確かにな。“捜索範囲”が限られた一区画なのが不幸中の幸いか」
つぶやいて、エントランスを振り返る。
すぐ奥のメインホールで、翠がアンドロイドたちの修復作業に当たっているのが見える。
アンドロイドたちはここで動けなくなったとは考えにくいことから、あちこちで倒れていたのをホーネットが運んできたのだろう。
冬祐は改めてヒメと顔を見合わせる。
「じゃあ、とりあえず」
「うん」
そして、折れたアンドロイドの腕を“ホーネットはワシのヨメ”号のコンテナから持ってきた代替品に付け替えている翠のもとへ向かうと、その作業が一段落するのを待って声を掛ける。
「翠。ちょっと、いいか」
「はい。なんでしょう」
使い終えた工具類を整理しながら見上げる翠の正面で、冬祐が腰を下ろす。
「今から僕とヒメで由胡――っていうか、由胡に持って行かれた宅配ボックスを探しに行ってくる」
「では、あたしは」
小首を傾げる翠に、冬祐は周囲を見渡して答える。
「まだ、具合の悪いアンドロイドがたくさんいるみたいだから、先生と一緒に……」
「わかりました」
翠が“がんばります”とガッツポーズを見せる。
冬祐が立ち上がり、ヒメに声を掛ける。
「よし、行こう」
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