give it back

アオイ・M・M

[Ⅰ] 承

 大西おおにし 啓介けいすけはバイト代からひねり出した4万5千円を長財布に詰め、駅裏のラブホテルの一室でベッドの上に腰を下ろしていた。


 歯は磨いたしシャワーも浴びた、体も洗ったし服はこの日のためにクリーニングに出したものを着て来た。ファッションセンスだけはいかんともし難いが、比較的センス自体は信用できる悪友にチェックを頼み、『アリかナシで言えばまあアリ』とのお墨付きをもらったので加点要素にはならずとも減点要素にはならないはずだった。


 酷く喉が渇いているが、冷蔵庫に叩き込んだミネラルウォーターと麦茶のボトルはこれからやって来るに選んでもらうための物で、今手を付けるわけにはいかない。


 そう、事の発端は悪友、――巾木はばき 瑛太えいたの言葉によるのだ。




 


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