第二章【第九話】「ジャッジメントです」
彼は、彼こそは私の憧れだった。神代にだって、これほど【世界】の称号に相応しい方は存在しなかった。いや、できなかったと言う方が的確だろう。
彼は結果を求めたが、同じくらい過程を重んじた。
彼は正義を貫いたが、悪を疎まなかった。
彼は神であったが、弱い者を誰より理解した。
彼は完璧を渇望したが、それでも欠落を愛した。
彼は……。
◇◆◇◆◇
【世界】が【恋人】を訪れる準備をしているちょうどその時、【世界】から出た【少年】は、【審判】の元を訪れていた。自他ともに認める堅物である所の彼は、律儀にも【少年】の予約時間きっかしにアクセスを許可した。
「よっ 久しぶりだな、【審判】 今日は何の……」
「用があるから私を呼んだのだろう? ならば世間話ではなく、要件を話せ」
「……相変わらずのようで何よりだ」
「貴様の方もな」
側から見るとどこかワケアリな二人の会話。しかし、【少年】は全く気にする素振りも見せずに話を続ける。
「【審判】、お前に頼み事がある」
「却下する」
「なぜ⁉︎」
「私としては、むしろ貴様がなぜ私に頼ってくるのかの方が不思議だ 妹から話は聞いたが、そんなに彼女――雪白七子をお気に召したか、【少年】?」
いつもの【審判】にない苛烈な感情を含む問いに、【少年】はつい身構えた。だが、どれだけ考えても【審判】に表情から解は得られない。仕方なく、内心羞恥に悶えながらも平静を装って【少年】は言う。
「いっ、いやぁ〜 ぜぜぜ全然別に好きとかじゃねえし⁉︎ なぜにそんな事を僕に聞くんだっ!」
「貴様と言うやつは……それで隠せているつもりなのか? だとしたら、元から知ってはいたが……はぁ……」
大仰に溜め息をついた【審判】は、そのまま目線を上に遣った。目の前には顔を真っ赤にした【少年】がいる。
それを見て【審判】は、笑った。
◇◆◇◆◇
【審判】《ジャッジメント》――この世の【審判】における最高機関、およびその所属者を指す語。似た系統の【正義】・【死神】とは別個に仕事を行うが、現在の【審判】は歴代の中でも一二を争う堅物であるため、規約【節制】を遵守すべく様々な機関と繋がりを持つ。
彼は、【少年】と同居していた過去を持つ。
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