第3話  種:惨

降るような蝉の鳴き声

熱気を孕んだ空気

ひび割れた土

萎れた作物


房の腹だけが張りつめ膨らんでいた


八十吉の種が

房の胎内で丈夫に育っている


あたしが畑だったら飢えない程度には

作物が採れるかもしれない


そんな下らないことを思いながら

八十吉の痩せて骨の浮いた背中を見つめる


今年の夏は


やたら暑い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る