第2部 まだ見ぬ世界へ

第1話 大いなる旅立ち

 森を出ると、見渡みわたす限りの大草原だいそうげんが広がっていた。


 遠くには、巨大な山が見える。


 本当にそれ以外、何もない。


 イチモツの集落のミケさんが、言っていた通りの光景が、ぼくの目の前に広がっている。


 この辺りに、ケガや病気で苦しんでいる猫はいなさそうだ。


 だったら、次に目指すのは、遠くに見える巨大な山かな。


 あの山の近くまで行けば、何かありそうな気がする。


「ミャ」


「あの山へ行くニャー?」


「シロちゃんが行きたいなら、行くニャ」


 お父さんとお母さんは、ニッコリ笑って大きくうなづいてくれた。


 そうと決まれば、腹ごしらえだな。


 おなかがいていたら、どこへも行けないもんね。


 草原では、ウマのような草食動物のれが、ムシャムシャと草を食べている。  


「ミャ!」


 ぼくが「アイツを狩りたい!」と言うと、お父さんが優しい笑顔から狩りの顔になる。


「あれは、パラヒップスニャー。みんな、音を立てずについて来てニャー」


 ぼく達は、ソロリソロリと忍び歩きで、パラヒップスのれに近付く。


 ある程度、近付いたところで、一斉いっせいに飛び出す。


 パラヒップスのれは、突然おそいかかってきたぼく達に驚いて、あわてて逃げ出した。


 ぼく達は、大急ぎで逃げていくパラヒップス達を、追いかける。

  

 しばらく、追いかけっこが続いた後、れの一番後ろを走っていたパラヒップスに、疲れが見え始めた。


 それを見逃さず、お父さんがパラヒップスの足に飛びつくと、ソイツは大きく転んだ。


 ウマは走っている時に転ぶと、高確率こうかくりつで足を骨折する。


 ウマは体重が約500kgもあるので、1本でも足を骨折してしまうと、自分の体を支えられなくなる。


 立てなくなったウマは、すぐに重い病気にかかって、死んでしまうそうだ。


 骨折した競走馬きょうそうば安楽死あんらくしさせるのは、少しでもウマを苦しませない為だと、聞いたことがある。


 ぼくとお母さんも、お父さんに続いて飛び掛かり、パラヒップスを仕留しとめた。


 パラヒップスのれは、振り向くことなく、そのまま逃げて行った。


 3匹で食べるなら、1とう充分じゅうぶんだ。


「さぁ、食べるニャー」


「いただきますニャ」


「ミャ」


 パラヒップスは、新鮮しんせん馬刺ばさしみたいな味で、とても美味しかったです。




 ――――――――――――――――


Parahippusパラヒップスとは?】


 今から約3600万年くらい前に生息せいそくしていたといわれている、ウマの祖先そせん


 もっとも古いウマの祖先そせんであるHyracotheriumヒラコテリウムが、草原で生きる為に進化したもの。


 現在のウマとほぼ同じような姿で、小さいポニーサイズだったらしい。

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