第103話:第3トンネル工事と飛竜族
神歴1818年皇歴214年10月10日帝国北部大山脈裾野:ロジャー皇子視点
3本目のトンネルも魔術が成功してトンネルが造られ始めた。
2本目よりも数が多いのはこちらの要求が増えた影響だろう。
1本目のトンネルは、俺が領主となっているバカン辺境伯領と通じるように、帝国北東部に造った。
帝国の東側は別の国、オーエン王国領になっている。
俺の使い魔に統治させるようになったとはいえ、何があるか分からない。
非常時にオーエン王国を見捨てる事になったり、力及ばずオーエン王国を奪われたりしたら危険だ、国境から近すぎる場所に皇国と通じるトンネルは造れない。
そこでオーエン王国との国境線から50kmの所にトンネルを造った。
2本目のトンネルは、1本目からできるだけ遠くに造った。
帝国の西側国境、ガスペル王国との国境から50kmの所にトンネルと造った。
これもガスペル王国を見捨てる事や奪われる事を考えての事だ。
3本目は、皇国と帝国の東西長1000kmのほぼ真ん中に造った。
これは、1本目と2本目のトンネル造りに必要な魔力や魔素を奪わないようにするためと、交易の事を考えれば当然の場所だった。
問題があるとすれば、俺の領地であるバカン辺境伯領と通じているトンネルが、1番車道数が少ない事だ。
最後に造った3本目が、1番車道数が多く、通じたら皇国帝国間の大動脈になる。
願った通り20台の馬車が楽々行き交う事ができる。
ただ、横幅の長い1本のトンネルではない。
強度の問題だろうが、2ケ所目に造ったトンネルと同じように、中央の広めのトンネルの左右に、強固な岩盤で分けられた別のトンネルが造られている。
中央に幅10メートル高さ10メートルのトンネルがある。
その左右には、幅10メートルの圧縮された強固な岩盤がトンネルを支えているが、ちゃんと所々に空気穴がある。
その横にある左右のトンネルは、幅5メートル高さ10メートルだ。
その左右2本のトンネルの外には、また幅10メートルの岩盤になっている。
これは、トンネル間を10メートルの岩盤にしないと強度が保てないからだろう。
更にその外側左右に、幅5メートル高さ10メートルのトンネルがある。
合計すると、幅10メートルのトンネルが中央に1本。
その左右に幅5メートルのトンネルが4本ずつあるのだ。
左右8本のトンネルは2車線で使えるから16車線だ。
中央のトンネルは6車線で使えるから、合計22車線だ。
要求よりも2車線多いのは、左右のバランスをとった方が良いからだろう。
このままでは、俺が当主をしているバカン辺境伯家が交易面で不利になる。
1本目のトンネルが完成したら、3本目と同じ条件でもう1度トンネルを造る。
来る、何か強大な存在がやってくる!
俺は少しでも遠くで強大な存在を迎え討つべく、大山脈方面に駆けた。
並の魔獣でない事は放たれる気配で分かる。
明からに竜種だが、竜種の中でもかなり弱い存在だ。
これなら余裕をもって撃退できるが、古代飛翔竜と争いにしない為には、殺さず生きたまま捕虜にした方が良いだろう
マッハ10で駆けたのと、遠くにいる間に竜種の存在を捕らえられたので、大山脈の裾野に造った開拓地や村よりも、かなり奥まった場所で迎え討つ事ができた。
「飛竜族の方とお見受けする、何用で人間の領域に近づいて来られた?」
まいった、飛竜族たちは気配をかなり抑えて近づいて来ていた。
気配から亜竜のワイバーンか何かだと思っていたのに、純血種の飛竜族で、しかも長い年月を生きた老竜1体と壮竜4体だ。
「人間の領域とは笑止!
矮小な人間の分際で、大山脈に入り込んだであろう!」
「魔獣や魔蟲が住む大山脈に入った事は間違いありませんが、飛竜族の方々が縄張りとされている、聖域には程遠い場所のはずです」
「我ら飛竜族の縄張りではなくても、魔獣や魔蟲が住む場所だ。
人間が入り込んで良い場所ではない!」
「そういう事でしたら大山脈から撤退させていただきます。
ただ、矮小な人間ですので、地を歩いで移動しなければなりません。
数日の猶予を頂けませんか?」
「ほう、素直に出て行くと言うのか?」
「はい、飛竜族の方々が管理されている土地に無闇に入るほど愚かではありません」
「だった何故入った、最初から入らなければよかろう!?」
「情けない事なのですが、前の帝王が悪政を重ねたため、全ての国民を養うだけの食糧がなく、急いで穀物を作らなければ餓死する者がでそうだったのです。
裾野とはいえ魔素の濃い大山脈です。
通常の5倍速く穀物が成長して、その実りを手に入れる事ができます」
「ふん、国民を餓死させないだけの食糧が手に入ったから素直に出ていくのか?」
「はい、餓死させないために大山脈に入ったのに、戦いで死なせては本末転倒ですので、人の領域に戻らせていただきます」
「それほど素直で頭が切れるなら、我らの本当の目的は分かっているな?」
「そうですね、俺が大山脈を開拓した時には何も言ってこず、今になって来られたので、開拓地の事はついでだと分かっています」
「だったらさっさと魔術を解除してトンネルを造るのを止めろ!」
「しかし、開拓地はともかく、地下のトンネルを造るなと言うのは、言い掛かりも激しいのではありませんか?」
「なに、矮小な人間の分際で我ら飛竜族に逆らうか?!」
「逆らう訳ではありませんが、天空の支配者である飛竜族が、空や山の縄張りを主張するのは分かりますが、地下深くの事で文句を言うのが分かりません」
「ならば人間、おまえは自分の住んでいる家の下に勝手に穴を掘られて、常時魔術を発動されて腹が立たないのか!」
「なるほど、確かに気になりますし、止めさせたくなりますね。
ただ私としても、母国と行き来でいる道が欲しいのです。
交易するための道が欲しいのです、交渉の余地はありませんか?」
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