第48話:フォリスト・ウルフダンジョン1
神歴1817年皇歴213年6月1日アバコーン辺境伯領フォリスト・ウルフダンジョン:ロジャー皇子視点
「殿下、本当に毎日これほどの礼金を頂いて宜しいのでしょうか?」
アバコーン辺境伯領の領地家宰が心配そうに聞いてくる
「かまわない、心配するな、皇室からは多くの持参金をもらっている。
それに、以前ゴブリンダンジョンでもそれなりに利益を得ている。
フォリスト・ウルフダンジョンでも利益を得られるようなら、定期的に家臣を派遣して、軍事訓練を兼ねた狩りをやりたいのだ」
「我が家では5割のダンジョン税をいただいております。
それでも利益がでるものなのですか?」
「少なくともゴブリンダンジョンでは十分利益が出ていた。
もっとも、今のような豪華な歓待をしてもらい、それに見合った礼金を支払っていたのでは無理だが、普通の徒士が泊まるような宿屋を拠点にすれば大丈夫だ」
「そのようになってくれれば、我が家はとても助かります」
「だが全く利益が出ないようだと、ゴブリンダンジョンの方を使う事になる。
バカン辺境伯領からはこちらの方が近いので、その費用と時間も考えて決める」
「何卒よろしくお願い申し上げます」
俺たちは、多くのアバコーン辺境伯家の家臣に見送られてフォリスト・ウルフダンジョンに入った。
浅い階はアバコーン辺境伯家の家臣や領民も入って狩りをしている。
俺の家臣たちはスレッガー叔父上の指揮を受けて地下1階で狩りをする。
地下1階は1匹のフォリスト・ウルフを狩ればいいので安全だ。
俺は各種の隠れる魔術を使って誰にも分からないようにした。
その状態で家臣たちから離れて地下2階に下りる。
地下2階は、1頭のハイ・フォリスト・ウルフ率いる10頭の群れで現われる。
普通の人間にはとても強敵だし、少し武術をかじっただけの人間も、数の暴力には勝てずに殺されてしまう。
だが、勇猛果敢と評判のアバコーン辺境伯家の家臣はもちろん、普通の領民も楽々と10頭の群れを狩っている。
地下3階も10頭の群れなのだが、率いるのはビッグ・フォリスト・ウルフになり、残る9頭はハイ・フォリスト・ウルフだ。
この10頭の群れはかなり強力で、単独で狩っている者は少なかった。
アバコーン辺境伯家の家臣も領民も、班を作って狩りをしていた。
地下4階には100頭の群れで襲って来る。
率いるのは地下3階と同じビッグ・フォリスト・ウルフで、その下に10頭のハイ・フォリスト・ウルフがいて、89頭のフォリスト・ウルフがいる。
100頭の群れを1人で狩れるような猛者はほとんどいないが、全くいない訳ではなく、アバコーン辺境伯家の強さがうかがえる。
班を組んでいる者たちも見事な連携で、できることなら敵に回したくない家だ。
地下5階も100頭の群れで襲って来る。
率いるのはヒュージ・フォリスト・ウルフで、その下に10頭のビッグ・フォリスト・ウルフがいて、89頭のハイ・フォリスト・ウルフがいる。
この群れになるととんでもなく強く、単独で狩りをしている者はいなかった。
だが、同じ100人の集団を作って狩りをしている部隊は6つほどいた。
これだと、アバコーン辺境伯家の領地家宰が言っていた事は本当だろう。
彼の話では、アバコーン辺境伯家が公式で行う軍事演習では、家臣総出で部隊を編成して、地下6階までは死者なしに訓練できるというのだ。
つまり、死者を覚悟すれば、地下6階を攻略できる事になる。
俺の私兵も、最低でもそれくらいまでは鍛えたいと思っている。
その地下6階は1000頭の群れで襲って来る。
率いるのはヒュージ・フォリスト・ウルフで、その下に10頭のビッグ・フォリスト・ウルフがいて、100頭のハイ・フォリスト・ウルフがいる。
末端の兵隊として889頭のフォリスト・ウルフがいる。
これが数の暴力で損害を恐れずに襲って来ると、群は全滅させられても、アバコーン辺境伯家も弱い者から順に少なくない犠牲者が出るという。
しかも、恐ろしく頭の良いヒュージ・フォリスト・ウルフは、不利だ勝てないと思うと、風のように逃げてしまうそうだ。
1番美味しい獲物であるヒュージ・フォリスト・ウルフはもちろん、ビッグ・フォリスト・ウルフまで逃げてしまうので、とても効率が悪いのだという。
高価な強い獲物を逃がしてしまう地下6階よりは、確実にヒュージ・フォリスト・ウルフとビッグ・フォリスト・ウルフが狩れる地下5階の方が良い狩場だそうだ。
だから地下6階には誰もいない。
これだと地下6階から狩りを始めても大丈夫なのだが、念のため地下7階から狩りを始める事にした。
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