第2話:婿養子

神歴1817年皇歴213年1月16日皇宮の青竜の間:ロジャーの皇子視点


 皇帝陛下だけでなく、選帝侯たち以下の全重臣が集まっている。

 この中には俺を何度も殺そうとした連中がいる。

 必ず復讐してやる、異母とはいえ、兄弟姉妹を殺した奴は絶対に許さん!


「ロジャー、喜べ、そなたのバカン辺境伯家への婿入りが決まった」


 ふん、俺の皇位継承権を無くすためだろうが!

 まあ、いい、オスカー兄上の皇位継承権は残っている。

 俺が外に出ないとオスカー兄上の守りに人手が足らなくなる。


「ありがたき幸せでございます」


「「「「「おめでとうございます!」」」」」


 腐れ外道共が、自分の傀儡にできる身内や愚か者に皇位を継がせたいのだろうが、そうはいかんぞ!


「準備ができしだい皇宮を出てバカン辺境伯家の屋敷に移ってもらう。

 ロジャーを婿養子に出すにあたって、新たにバカン辺境伯家に与えた屋敷だ」


 火事やモンスター災害を考えて、これまでバカン辺境伯家の屋敷がなかった、皇都南側の空き屋敷を俺の専用屋敷にしてくれたのだったな。


「ありがたき幸せでございます」


「「「「「おめでとうございます!」」」」」


「とても5歳とは思えない賢さのロジャーを婿養子に出すのは残念だが、皇位継承権は年齢順だ、多くの皇子が死んだとはいえ、まだ4人も兄がいる、あきらめよ」


「はい、良い養子先を選んでいただき感謝の極みでございます」


 選帝侯の奴ら、皇国の謀略で借金まみれになったバカン辺境伯家に俺を押し込んで、万が一にも力を持たないように画策したのだろう。

 俺とオスカー兄上が手を組んで自分たちに報復するのを恐れてやがる!


「……本当に惜しい、他の皇子たちとは比べ物にならないくらい賢い。

 今からでもロジャーとオスカーの立場を変えられないのか?」


 皇帝は筆頭選帝侯に問いかけた。


「陛下、それはあまりにも酷い事ではありませんか?

 皇室が年長者を敬うのは建国皇帝の定められた国是でございます」


「だが、いくらなんでも、これほど賢い皇子を手放すのは惜しい。

 誰が皇位を継ぐにしても、助けてくれる弟が側近くにいるのは安心できる。

 そうだ、昨年ロクスバラ公爵家を継いだオスカーを隠居させよう。

 それならば、オスカーは前公爵としての待遇でいられるし、ロジャーに皇位継承権も残り、養子先が決まっていない皇子がバカン辺境伯家に入れる」


「陛下、陛下のお考えはとても素晴らしいモノではありますが、約束を破る事になってしまいます。

 バカン辺境伯家へロディー殿下を婿に入れる事は、3年も前から慎重に話を勧め、ようやく実現できたことでございます。

 それを婿入り前日になって違う皇子に変えるなど、皇室の威信にかかわります」


「お前は朕の考えに逆らうというのか?」


「陛下の威信と未来に伝えられる評判を心配させて頂いております」


 佞臣という奴は、どいつもこいつも口が上手い。

 それに、1番の黒幕は表には出てこない。


 万が一陛下の逆鱗に触れた時のために、何時でも挿げ替えられる手先を使う。

 選帝侯筆頭が手先と言うのはおかしな話だが、黒幕がいるはずだ。


「評判、そんなモノを気にする朕ではない」


「恐れながら皇帝陛下、私はオスカー兄上を心から愛しております。

 兄上を隠居させてまで公爵家の当主に成りたいとは思いません。

 それに、外に出て臣籍に下り、皇位継承権は失っても、陛下の息子、皇子である事は変わりありません。

 忠孝を尽くして陛下と皇室にために働かせていただきます」


「うむ、よくぞ申した、それでこそ朕の息子じゃ。

 惜しい、本当に惜しいが、ロジャーにそこまで言われたしかたがない、諦めよう。

 ただし、何の爵位も領地も与えずに婿養子に出す訳にはいかない」


「お待ちください陛下、既にロジャー殿下には莫大な持参金をお渡ししております。

 これ以上の持参金は、皇室と皇国の財政を破綻させかねません。

 まだ50人以上皇子と皇女がおられるのをお忘れでございますか?」


「忘れてなどおらぬ、それをどうにかするのがお前たち家臣の役目であろう!」


「陛下、陛下のご厚情、ロジャー感激いたしました。

 だからこそ、陛下にご不自由をお掛けする訳にはいきません。

 弟妹が与えられるべきモノを奪う訳にも行きません、辞退させていただきます」


「おお、ロジャー、なんと思い遣りがあるのだ、それに比べてお前たちは!

 よかろう、持参金は我慢してやる、だが爵位だけは絶対に与える!

 ロジャーに適当な伯爵位を与えよ!

 伯爵領に相応しい領地がないのなら、大魔境でも大砂漠でも良い、適当に区切って伯爵領にしておけ!」


「「「「「はっ!」」」」」


 よし、皇帝には最後まで好印象を与える事に成功した。

 予想外に伯爵位を手に入れられたのは良かった、何かに使えるだろう。


 持参金が増えていれば助かったが、まあいい、なければ自分で稼げばいい。

 今のうちに皇城を抜けだしてダンジョンに潜るか?


 ★★★★★★以下は設定です、好きな方だけ読んでください。


「アステリア皇国」人口3000万人の大帝国


ハリソン:皇父(1751)

ジョージ:10代皇帝(1773)徳川家斉を参考にしています。


長女 :エミリー(1789)

次女 :夭折

長男 :1歳で夭折

次男 :フレディ(1793)

3女 :夭折

3男 :2歳で夭折

4女 :3歳で夭折

4男 :3歳で夭折

5女 :3歳で夭折

5男 :1歳で夭折

6男 :1歳で夭折

6女 :2歳で夭折

7男 :1歳で夭折

7女 :1歳で夭折

8女 :ソフィア(1800)

8男 :アルフィ(1801)

9女 :2歳で夭折

10女:2歳で夭折

9男 :1歳で夭折

11女:2歳で夭折

12女:グレース(1803)

13女:3歳で夭折

10男:5歳で夭折

14女:1歳で夭折

11男:6歳で夭折

15女:13歳で死去

16女:イザベラ(1809)

12男:アーチー(1810)

13男:オスカー(1810)

17女:1歳で夭折

18女:フレイヤ(1811)

14男:ロジャー(1812)

19女:ハーパー(1813)

15男:3歳で夭折

20女:2歳で夭折

21女:ジェシカ(1813)

16男:イーサン(1814)

17男:3歳で夭折

22女:2歳で夭折

18男:1歳で夭折

23女:3歳で夭折

24女:ソフィー(1817)

以降省略

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