ナナちゃん奮闘記:終
「菜々は高度を維持してなるべく揺らさないで」
「分かってるわ、それより出来るの?」
私の問に「勿論」と紗希は頷く。うん、問題なさそうだ。
今私たちは催眠ガスを振りまいてる犯人の頭上に浮いていた。私は相手にバレないように風の音を最小限に抑える。
「まぁ、下の音もそれなりに大きいようだけれど」
催眠ガスを振りまいていたのは案の定二年生だった。ではそれをどうやって相手に近づかずに吸わせているのかだが、簡単だ。風に乗せているだけ。
「感知できないくらいの微量な風でガスを飛ばす」
紗希の言葉に頷く。ガスは
「一人がガスを出して、もう一人がそれを全体にまんべんなく飛ばす」
それを吸って眠った人を他の誰かが殺る。
慣れてるな、と思う。けどタネが分かればどうってことない。流石に相手が空にいるとは思わないのか上空まではガズが届いていないのだ。
「魔力適正2でもそれなりに戦えるってことを証明してやるわ」
紗希は鼻息荒く言い放つと自身の身体に光を纏わせていく。魔力適正2=弱いという常識は紗希に通用しない。身体強化と攻撃魔法の組み合わせはそれほどまでに壮絶な力を……
「まぁ、あんな魔力適正1がいるんだから当たり前と言えば当たり前よね……」
桃色髪の少年を脳裏に思い浮かべながら私はつぶやく。どうやら紗希には聞こえてないみたいだが。
きっとあの論文が発表されれば世界の常識は変わる。それとともにきっと彼の名も歴史に残る。本人は嫌がりそうだけど。
「何笑ってるのよ……?」
おっと嫌そうに頭をブンブン振るナルを想像していたら思わず頬が緩んでしまったようだ。いけないけない。
「何でもないわ。それよりさっさと終わらせましょう」
私がそういうと紗希は頷いて眼下の先輩を見つめる。紗希の纏う光が一瞬強くなり私は目を瞑る。
バゴーン
と耳元で音がする。その後木々がメキメキと音を立て折れるのも分かった。目を開けると眼下──先程まで先輩方がいたところには直径十メートルはありそうな窪みが出来ていた。
「雷ってのはどうしてこんなに強いのかしら。理不尽だわ」
紗希が放ったのは雷魔法。生徒会長のせいで雷を嫌いになりそうだけどそれは置いといて。
紗希の雷魔法のすごいところは威力が桁違いなところだ。身体強化の影響なのかは分からないがとにかく凄い。先生の一目置いているくらい。まぁ性格が難ありなので腫れ物扱いなのに変わりはないが。
「今どのくらいのポイントなんだろうね」
「分からないわ、向こうがどれだけ死んだのかによる。兎に角倒すしかないわね」
実はポイントを確認できる機器は男子が持ってるので私たちには確認する術がないのだ。前述のとおり倒すしかない。
「行くわよ」
「うん! もちろん」
こうして私たちは空を飛び風で、雷でポイントを稼いでいった。
◇ ◇ ◇
何人倒したのか分からないくらい倒した時、私の視界が光に包まれた。これは……最初この仮想空間に飛ばされた時に似てるわね。ということは──
「ふぅ、やっと終わったのね」
案の定、光が収まると私たちは体育館に戻ってきていた。もうすぐ日が昇るのか山際が明るい。
「お疲れ、菜奈」
「それはお互いでしょう。お疲れ、紗希」
私は流石に魔法の連発は疲れたのか床に座り込む紗希に手を貸し引っ張る。ふむ、補修前なら有り得ない光景ね。話してみればどんな相手でも意外と分かり合えるものらしい。
「チッ、おせーんだよ」
前言撤回、分かり合えない奴もいるわ。もう仮名も忘れてしまったけど、バカ1バカ2で生きましょうか。見たところ苛立っているようだけど、そんな貴方達は何をしていたのかしら?
「何でわざわざ俺たちが面倒なことしなきゃいけねぇんだよ」
「そうだそうだ」
私はちらっと紗希を見る。紗希は汚物でも見るような顔をしていた。貴方もあっち側だったのだけれど、彼女は今では友達みたいなものだし蒸し返すのは止めてあげましょうか。
「私、このチーム抜けるから」
「「は?」」
バカ1、2が目を見開く。紗希は事前に言っていたから驚いてないけど寂しそうだ。まぁ今度遊ぶ約束もしたし問題ないだろう。
「じゃぁね、おバカさんたち♪」
◇ ◇ ◇ ナルside
「その後家に帰って一時間くらい仮眠して、今に至るわ」
ナナちゃんはそう言って話を締めくくった。
「また紗希とは遊びに行くから、もしかしたら貴方達と遊べない日もあるかもしれないわ」
あ、うん。それは全然良いよ〜。月海ちゃんは分からないけど、僕、カケル、イオリは他に友達がいないからこのメンツだけで計画を立ててるだけだから。カイナ隊は強制参加! みたいなことは言わない。
「さてと、話も一段落したことじゃし……」
「うん。計画を立てよう♪」
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