ナナちゃん奮闘記5

「ガッ」

「な、なに?!」


 私はかかった、と思った。sと歩き出してから数分。私が私達を取り囲むように張り巡らせた風の刃に何かがぶつかった。私はしがみついてくるsを無視して何かを風で丁寧に包み捉える。


「なるほど、異能スキルは『夜目』といったところかしら」


 捉えられた二年生の瞳は金色に輝いていた。月明かりも届かない闇の中で確実に私達を狙えたことから考えて異能が夜に強いものであることは間違いない。猫か狼の説もあるが。


「離せ」

「えぇ、すぐに開放するわ。まぁ、殺してなんだけどね」


 私はさようさら、と包み込んでいた風で押し潰す。醜い音を立てて二年生は絶命する。sが短い悲鳴を上げていたが無視。


 しかしこれで生徒会長が言ってたことは分かった。二年生は夜に強いのだ。学年全員がさっきのような異能ではないんだろうが、割合は多いんだろう。


「でも驚異じゃない」


 果たしてあの人がこの程度のことで忠告してくるだろうか。まだ私には気づけてないことがある……? だめだ、自分一人じゃ視野が狭くなる。


「な、何?」


 私が一瞥すると震えながら後ろに下がるs。見ただけなのに……はぁ、話にならない。


「あのねぇ、貴方の茶番に付き合う気はないの。意見を聞かせて」


 我ながら上からな態度だな、と思う。けどコイツを含む三馬鹿には下手な態度を取ればそれこそ話にならないので仕方ない。


「私が殺された時、お、音もしなかった……完璧な暗殺」


 震えながらsは言う。それはただお前の注意不足だろ、と言いたいが一応警戒はしていたことにしよう。だとしたら彼女は何に殺られた? 警戒を掻い潜って攻撃できる……


「風魔法ね」


 それ以外は音や光、熱を発する。何かしら認識できるのだ。その点風魔法は少し練習すれば音も出さずに殺傷力十分な攻撃が出来る……だとすれば敵は風魔法の使い手?


「で、でも……あの人数全員が共通の異能で共通の魔法使うかな……?」


 珍しく良いところを突くな、と意外な目で見ると何故かものすごく謝られた。そこまで怯えなくても良いのだけど、都合が良いし好きにさせときましょう。


「それより……私もそこが気になってるのよね。チーム内で揃うなら分かるけど」


 学年は些か範囲が大きい。生徒会長の言葉を信じるならもっと別の何かがあるんじゃ……そう考えたとき私の頬を撫でた。


「あれ……?」


 甘いような匂いを感じたとき、私の意識は途絶えた。


 ◇ ◇ ◇


「ハハッ、やっぱりやられてんの」


「そんなに面白いか? ちょっと強いだけだろ」


「そうじゃないんだよ、あの子にはそれ以外の何かがある。きっと異能を知れば伸びるぞ」


「そんな変人生徒会長だから三年生は変人が多いとか言われるのよ、私なんてマトモなのに」


「そうだぞ、お前の異能は確かに珍しい上に強い。だがな──」


「はいはい、使い方だろー。イチイチ言うなよ。オカンか」


「はぁ……改善されないやつじゃねぇか」


「まぁまぁ、それより俺らも明日には動くぞ」


「おう」 「えぇ、もちろんよ」

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