ニ章『補習&夏休み』

「補習」

忘れてた……!!

 今日は日曜日。明日は終業式で、やっと学校も休みだぁ! と喜んでいたところ……


「これ、補修は私どっちで受ければいいかしらね?」 


 と、ナナちゃんからメッセージが届いた。グループチャットなんだけど、ここにはカイナ隊の皆がいる。昨日作ったんだ。そういえば、あのあと食事の場にリンさんと真穂人さんはいなかった。どうしたんだろうね。



「むぅ、とりあえず元のチームではないか?」


 一番に返信したのはイオリ。確かに僕らのチームにナナちゃんが来ることはまだ学校側に申請してないからね。そっかそっか、補修はバラバラ……


「あれ、僕らも補修なの? ニ位だよね」

「知らないのか? 会場に予告なしに現れないのは重罪扱いだぜ。補修でも良い方なんだ」


 なんとびっくりカケルから返信がきた。意外だね、カケルもそういった難しいことはちんぷんかんぷんだと思ってたよ。先入観ってのは良くないね〜。


「私が教えてあげたんですよ!」


 あ、月海ちゃんに教えて貰ったみたいだ。やっぱりカケルは馬鹿だからね、良かったぁ。


「明日の午後からじゃな。ルールも分からんが、妾たちなら大丈夫じゃろう」

「作戦はいつも通りだなw」


 そうだね、『頑張る』だね──と僕はメッセージを送る。今では、と言っても昨日からだけど、僕らの中で「とりま作戦は頑張る」が流行っている。今年の流行語かもね♪


「今日、僕はこれから柊樹ジムに行くけど……誰か一緒に行く〜?」


 まぁ、明日から補修だろうが何だろうが結局が分から状態なので(笑うとこだよ〜?)今日はいつも通り過ごすことになった。


「あそこって、魔法が使用できる部屋もありますよね?」


 魔法は町中での使用は禁止されている。使った瞬間都市結界とやらが反応してその場から動けなくなるらしい。あ、魔法っていうのは攻撃魔法のことだから僕が使ってた回復魔法はセーフだよ♪


「うん。合ったよ! 月海ちゃんを治したのもそこ」

「なら、私ついていきます。魔法の練習したいので」

「妾はナルの成長具合を見に行くとしようかの」


 チャットルームの中で火花が散っている気がする。まぁ、言うまでもなくイオリと月海ちゃんだ。喧嘩するほど仲がいいって言うけど、実際仲が悪いわけじゃないんだけど……喧嘩の内容が僕なの止めてほしい。


「それじゃ、僕はもう行くね」 


 と、僕が打てば──


「妾もすぐに向かうぞ!」

「伊織っち、勝負です!」


 と、二人は打つ。ほんとにどうにかならないかな、この二人は。とりあえず、僕も行こう。


「おい、俺の家のドアが吹き飛んだんだが……」


 というカケルのメッセージに返信するものは既にナナちゃんしかいなかった。後から見たらそんなナナちゃんの返信も「頑張って直しなさい」だったし。可哀想なカケル。まぁ、このときの僕はそんなことにも気づかずにジムに向かっているんだけどね〜。


 ◇ ◇ ◇


「うむむ、悔しいです」


 そう言ってジムの中にあるベンチに腰掛けるのは月海ちゃん。ジムに着いてから数時間、最初は穏やかな時間だった。ただ、ニ時間ほどした辺りだろうか。


「まだまだじゃのう」


 イオリが月海ちゃんを煽り始めたのだ。マズイ、と思っても僕は巻き込まれたくないので見守ることにしたんだけど……月海ちゃんが思ってたより短気だった。


「じゃあ、勝負しましょう」


 と、戦闘室と呼ばれる頑丈で強力な魔法の仕様も許可されている部屋で戦い始めたのだ。これには僕もびっくり。ただオロオロしながら眺めることしか出来なかった。


 だって、二人共強いんだもん。月海ちゃんはイオリに匹敵するレベルだってカケルが言ってたけど、本当に実力は拮抗しているような雰囲気だった。


 月海ちゃんは水を使っていた。氷に対して水が効果いいのかは分からないけど、イオリは焦ってなかったから……って、イオリは大体焦ることはないか。


「グッ……!」


 と、イオリの氷を月海ちゃんが捌きれずに食らった瞬間イオリが一気に攻めた。今まではニ、三個の氷塊を飛ばすだけだったけどその時は部屋を埋め尽くすほどの……


 水を纏って対抗する月海ちゃんだったけど呆気なく敗北、全身傷だらけになっていた。学校と違ってここでは死んでも生き返らない。死なない程度にぶちのめすのはイオリらしいなぁ、と思いながらも。


「ほら、月海ちゃん。じっとしてね」


 と、回復魔法を発動する僕。このあともう一戦やろうとする月海ちゃんを強制的に連行。ベンチに座らせ場面は最初に戻る。


「うむむ、悔しいです」


 はぁ……本格的に対策を考えなきゃ。帰ったらカケルと緊急会議を開こう。そう決意しながらも、僕は自分の特訓に戻るのだった。あ、ちゃんと月海ちゃんたちには「もう戦わないでね」と釘を差しといたよ〜。

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