明るくなった二つの月(←いきなりロマンティックな感じだね〜

「ナル様!!」


 と、飛んできた月海ちゃんを僕は何とか受け止める。何気に本日二度目だからね。イオリには申し訳ないけれど、ちゃんと倒れず受け止めれました! それに月海ちゃんは僕と背が変わらないくらいだからね。


「うん。一番可愛い」


 僕のことを女の子とも言わなかったし、僕のことを物理的に見下すこともなかった。うん、なんて可愛くて良い子なんだろう。


「可愛い……」


 って、月海ちゃんが顔を赤くしてる。何で……ってあー、可愛いって言ったからかな。そーゆーつもりじゃなかったんだけど、まぁ本人が喜んでるなら。


「ナルから離れろ、月海」

「ぐへぇ……!」


 月海ちゃんはカケルに引っ張られて僕から離れる。これは、喜んでいいのかな……いや、悲しむべき?


「悲しむべきです!」

「あ、そうなの。残念だなー」

「棒読みじゃねぇか」


 カケルのツッコミに僕達は揃って笑う。良いね、なんだか楽しくなってくる……って、そういえば月海ちゃんってそんな性格だったっけ?


「約束したので。こっちの方が良いですか?」

「急に変わるね……んー、でもどっちでもいいよ。月海ちゃんの楽な方で。ムスッとするのは禁止ね」

「そうですか。なら、こうします」


 月海ちゃんは確かに口調は前と一緒だけど表情は全然違った。あの朝のカケル状態じゃなくて──


「何だよ、朝のカケル状態って」


 ……朝のカケル状態じゃなくて、こう晴れやかな顔してる。ムスッとしてないってことね。あの冷めた雰囲気も無くなってるし。ナナちゃんみたいなクールタイプなのかな。


「む、月海か。いつの間に来たのじゃ?」

「つい先程。お邪魔してます」

「そうか。すまんが妾は少し席を外すぞ。夕食は作らせる故、うちで食べてゆくが良い」


 ほへー、夕食を……って、夕食?! ど、どうしよ父さんたちに言ってない。というか誰かの家で夕飯をご馳走になるなんて初めてだよぉ。え、理由? 察してくれないかな……ボッチだったんですぅ! あ、でもジムに奢ってもらうことはあったな。


「安心して頂戴。親御さんには連絡してあるわ。スマホ、借りたわよ」

「あ、ありがとう」


 仕事が早いなぁ……怖いくらい早い。


「ごめんなさい。私も伊織について行ってくるわ。どうせ呼ばれるでしょうから」


 そう言ってナナちゃんも退室する。流石幼馴染み。そんなことまで分かるのか。でも、二人の用事って……多分僕関連だよね。さっきの話の中に何か重要なものでもあったのかな? 分からないや。


「ナル様」

「は、はい。えっとぉ……ナル、で良いよ?」

「いえ、ナル様は恩人ですので。それでナル様」


 萌葱兄妹、似た者同士。根拠、ムスッとしやすい。すぐ脅す。諦めが早い。追加で、頑固っと。本当に似た者兄妹だなぁ……


「私、ナル様の事が好きです」

「………………ん?」


 あれ、僕はもしかして夢の中なのかね。魔力切れで倒れてから起きてない……そーゆーこと。でもでも、じゃないと今の現象の説明が。


「ナル様?」

「は、はい!」

「その、お返事は……」

「あ、うん。えっとね……」


 まずい、混乱して声が裏返っちゃう。って、それより、えーと、えーと……誰か説明してぇえ!!

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