魔力切れ
「魔力切れなんてあるんだ……」
今、僕はイオリのベッドに寝かされている。どうやらカケルの腕を治した後、また意識がなくなって倒れたらしく……その原因が魔力の消耗が激しすぎ、つまり魔力切れらしい。
「当たり前じゃろう……無限なんてこの世に存在せんわ」
それもそっか。確かに僕は特訓! とか言ってジムと数時間、魔法使い続けてたわけだし……じゃあ月海ちゃんを治した時に魔力切れで倒れて、折角回復した分をカケルに使ったのね。
「フフン。感謝してよ、カケル」
僕は相変わらずムスッとした顔のカケルに声をかける。あ、ダジャレじゃないからね。たまたまだよ!
「……その、キレたりして悪かった」
「何言ってんの〜。カケルが自分勝手なのは前からでしょ! 気にしなくて良いよ」
「お前な……」
カケルが呆れたようにため息をつく……って、何でカケルが呆れてんのさ! 別に謝らなくても良いけど、もっと僕に感謝してほしいね。
「はいはい、ありがとな」
そう言って僕の頭を撫でるカケル。いや、おかしくない? 何その、風邪引いた妹でも見るような目は。あ、妹といえばそういえば月海ちゃんは?
「月海ちゃんなら、貴方をジムと一緒に運んできた後帰ったわよ。看病するって息巻いていたけれどあの子はまだ中学生だしね」
答えてくれたのはナナちゃん。というか、答えれるのがナナちゃんしかいなかった。もう面倒だから無視してたんだけど、カケルが僕の頭撫でた直後から……
「貴様、万死に値するぞ!」
「別に良いだろうが。ナルはお前のものでもあるまいし」
と、このようにイオリとカケルがじゃれ合い始めたのだ。喧嘩するほど仲が良いって言うけど、流石幼馴染みだね♪
「それにしても、ナルって魔力適正1なんでしょ? それなのに、難易度が高いとされる回復魔法を使うなんてどうなっているわけ?」
そういえば、ここ数日はプルプラさんとやり取りしていたから感覚がおかしくなっちゃってたけど、回復魔法は魔力適正が4とか5でも扱いにくい高度な魔法って認識なんだっけ。
でも、それって攻撃魔法特化なだけで多分僕以外の魔力適正の低い人たちでも……何ならそういう人の方が回復魔法や身体強化は使えると思うんだよね。
「何、どういうことじゃ?」
「あれ。カケルはもういいの?」
「今は、な。それよりもお主の話の方が気になる」
じゃからはよ続きを申せ──というイオリの言葉に逆らえるわけもなく……というわけではないが、僕はプルプラさんと話す中で分かったことやプルプラさんから教えてもらったニ種類の魔力とかを説明する。
プルプラさんの名前を出そうかと思ったけど、イオリやナナちゃんから知らない人とやり取りしたって事で怒られるかと思ったから伏せといた。ごめん、プルプラさん。貴方の功績を横取りしたみたいになって。
まぁ、きっと彼なら「全然良いぞ」って言ってくれるだろうし、大丈夫かな♪
「なるほどの……」
「ねぇ、イオリ。これって……」
「うむ……」
って、あれ。なんか二人が深刻な表情で話し始めちゃった。なんでだ? 僕なんか変なこと言っちゃったかな……ん〜、そんなつもりはないけどなぁ。
「ナル」
「何? カケル」
カケルはベッドに腰掛ける、けどイオリとじゃれ合ったせいなのか若干汗をかいている。珍しいね。いつもめちゃめちゃ走ってるけど汗かいてなかったのに。まぁ、さっきのイオリの攻撃(?)は素人の僕でも分かるくらい卓越した武術っぽかったけど……
「その……本当にありがとうな。俺と月海にとってお前は恩人だ」
そう言って深々と頭を下げるカケル。ちょ、ちょっと。別に良いってば……月海ちゃんにはある意味実験台になってもらったわけだし。
「いや、でもだな。結果的に」
「カケルの頑固。僕が良いって言ってるんだから良いの!!」
「そ、そうか。それと、さっき月海から連絡来てて。ナル様に会いたいから伊織っちのとこ着いたって」
え、ナル様って何? とか伊織っち? とかツッコミたいところは沢山会ったけど……それよりも、着いたって何、着いたって! 何で事後報告なの?!
と、僕が思うと同時に──
「ナル様!!」
という声と共に、部屋の扉が開き月海ちゃんが僕に向かって飛んできたのだった。
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