「中学二年生」「学校最強」

カケル妹ちゃん(←治って良かった♪

 プルプラさんとやり取りをしてから数分後にジムは戻ってきた。何で分かったかって言うとこの部屋から見える駐車場にジムの車が見えたから♪


「紹介しよう」


 そう言ってジムが入口から一歩横にズレる。その後ろから出てきたのは……女の子? 両目を閉じているショートヘアの女の子だ。


萌葱月海もえぎつきみ。中学二年生で、まぁ姓で察せると思うけど……」


 萌葱翔月君の妹さ──とジムは言った。確かに言われてみると、どことなく雰囲気が似ているような……この冷たい、ムスッとした感じはもうそっくりだ。って、初対面で失礼かな。


「いえ、よく言われますので……それで、何の御用でしょうか。兄からは不穏な雰囲気を感じ取っています。何かあったのだと思いますが、関係があるんですか?」


 そういえば、カケルのお母さんも目が見えなかったなぁ、とふと思い出した。萌葱家は何かと物騒なのは昨日分かったから深くは聞かないけど……性格面はどうにかならないのかなぁ。


「答えてくださらないなら、帰ります。ジムさん、車まで案内していただけますか?」

「ごめんって。カケルに似てて」


 その何かあれば「帰ります」とか言って脅してくるのも……と、僕は心の中で呟く。まぁ、月海ちゃんの場合は本気だったのかもだけど。


「そうですか。なら手短に……」

「あ、うん。えっとね、身体の再生について実験してて──あ、研究かな。そう、研究してて」

「実験台になれ、と。分かりました。お好きなようにしてください。どうせ治りませんから」


 ……やばい。この子、なんか嫌いだ。この悲観的、というか諦観してる感じが、僕とは真反対すぎてやだー! ってなる。テンション低いときのカケル……ってそうか、兄妹だった。


「……萌葱君。ナル君の回復は本物だよ。今までの医者と違う」


 あ、月海ちゃんも「萌葱君」って呼ぶんだ……って思ったのは僕だけじゃないと思う。まぁ、それは置いといて。ジムと月海ちゃんはどんな関係なんだろう。知り合い、以上だよね?


「それは……」

「まだ私がえていた頃、家庭教師をしていただきました。魔法の、ですが」


 なるほど? カケルが回想の時、老人にボコボコにされていたけど……あの人みたいな感じなのかな? 萌葱家は物騒なだけじゃなくて謎も多いんだね。いつかカケルが話してくれるかな……


「ねぇ、月海ちゃん」

「ちゃん……?!」


 あ、嫌だったかな。やっぱりいきなり下の名前をちゃん付けは馴れ馴れしいかな。カケルは怒らなかったから大丈夫かな、と思ったんだけど。そもそも兄妹だから同じっていうのは偏見かなぁ。


「い、いえ。気にしないでください。それよりも何ですか?」

「もし無事に目が治ったらね、もっと明るくなろう」

「え?」


 月海ちゃんは少し驚いたように聞き返してくる。


「だって、そんな常時ムスッとしてたら友達も出来ないよ。学校の異端児ボッチとか呼ばれるよ」

「……分かりました。それで構いません」


 おぉ、なんか「どうせ治りませんから」とでも言っているような感じだよ。ほんとに、兄妹ってのは似ているもんだね……


「とりあえず、回復魔法を使ってみるね」


 イメージは目の再生。光が目を覆って、目を再生させる。イメージさえすれば後は勝手にそうなるはず……って、そういえば月海ちゃんってどんな目なんだろう。あ、やばいイメージ出来ないかも……


 一度回復魔法を使えば止めることは出来ない。僕が未熟だからね。ただ、このままだと成功しない……

 僕の焦りを嘲笑うかのように光がゆっくりと収まっていく。そして完全に消えて……依然、目を失ったままの月海ちゃんがいた。


「どうやら失敗のようですね。では、私はこれで」

「待って! ねぇ、ジム。月海ちゃんの写真とかない? 目が見えていた頃の!」


 ジムは僕の言葉足らずの説明でも察してくれたのかスマホを開いて見せてくる。そこには月海ちゃんが……ってこの子、なんかムスッとしてるね。不満げに口を尖らせてる。


「とりあえず、これでイメージは完璧……もう一回するね」


 今度は写真を見たからイメージは簡単。多分小学生低学年の頃くらいの写真だったから、中学生まで成長した姿を……

 僕は目を閉じて脳裏に月海ちゃんの目が治るイメージを描き続ける。あとは、勝手に脳がしてくれるから。両手をかざして、回復の光を……むむむむむむ。


「……ッ!」


 短く、息を吸う音が聞こえて僕は目を開けた。そこには、月海ちゃんが……目を開けて僕をていた。な、治った……?


「萌葱君、視えるのかい?! 本当に……?」

「え、え……眩しい。嘘、本当に……」


 ジムと月海ちゃんが泣いて喜んでいる。あー、良かった。正直治らなかったらどうしようって不安だったから……ふぅ、疲れたぁ。


「ナル君?!」


 そんな、ジムの叫びを聞いた直後、僕は……

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