「冷静な彼女」「異端児」
目撃しちゃった(←あわわ、どーしよ……!
「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……」
決勝戦、当日早朝。僕は今、ランニング中だった。トレーニングの一環で毎朝学校に一番乗りで来ては校内を走り回っている。あ、学校までは自転車だよ〜。
この前、先生に不審者と間違われたけどトレーニングって説明したら「それは良いことだ! これからも続けるように」と言われた。先生があの熱血さんじゃなかったら素直に喜んだんだけどなぁ……
っと、言うわけで僕は今日もいつも通りランニングしてたんだけど……ソレが聞こえてきたのは体育に差し掛かった辺りだった。
「……から! あんたのせいよ」
女性の叫び声。品もなく声を荒らげてキモ──じゃなくて、何かあったのかな? 僕は立ち止まって聞き耳を立てる。どうやら体育館裏の方で言い争っているらしい。それも一体一じゃなさそう……
「おい、なんか言えよ!」
今度は男の声。こっちも苛立ってるっぽい。うぅ、覗いてみようかな……でも見つかったら……
「そんな……私のせいじゃ……」
っと、女の子の声が聞こえた。多分さっきから怒鳴られてる方の声だと思う。怯えたような、怖がっているような声。
「生意気なこと言ってんじゃねぇぞ!!」
さっきとは違う男子の声。やばい、絶対怒鳴られてる女の子がやばいよぉ……どうしよう、カケルたちを呼ぶ? でもそれじゃ間に合わない。
「……な……行き……よ!」
また女子が何か言ってるけど僕は今、それどころじゃない。どーしよどーしよ。助けれるのは僕だけ。でも僕なんかで助けれるのかな。先生を呼びに行く……ってこの時間はまだ来てないんだよなぁ。
「そん……無理……」
……くぅ、こうなったら仕方ない。僕だって筋トレ毎日してるんだ! きっと出来るはず。そう決意して体育館裏に踏み込もうとした時。
「わ、分かった。分かったから! その代わり、戻ってきたら謝ってね」
そう言って女の子が飛び出てきて、走っていった。僕が意を決して勇気を振り絞って突入しようとした瞬間だった……ねぇ、僕の勇気を返してよ!!
って、今走って行った子、見覚えが……僕は記憶を探る。確かにどこかで見たことある。えーと……あ!カケルの教室で。じゃああの子が噂の美島菜奈さん?というかあの子何処に向かったんだろ……
「アイツ、ほんとに行ったのかよ」
「ちょっと煽っただけなのに……優等生ちゃんだね」
「中型ダンジョンに行ったことがバレればアイツは退学だぜ」
体育館裏からケラケラという笑い声と共に聞こえたのは……中型ダンジョン! 中型ダンジョンと言えばこの前僕らが課外授業で行った小型ダンジョンとは比べ物にならないくらい危険度高いやつ。
正式な冒険者じゃないと立入禁止になってるのに。美島さんはこれから一人で行こうっていうわけ?! お、女の子一人で行くなんて……絶対に危ない、止めなきゃ!
「もしもし、カケル?!」
僕は走っていった美島さんを追いながらカケルに電話をかける。いや、ダジャレじゃないよ。そんな余裕はないからね──ってそうじゃない。
「美島さんがね、中型ダンジョンに向かって……」
「は? 朝から何を寝ぼけて」
ふぅわぁあぁ──と間抜けな欠伸が電話越しに聞こえてくる。何呑気に欠伸してるんだよ! 僕は、真面目、なんだよ!
「え、マジで言ってんの?」
「マジで言ってるよ。多分学校の正門出て左に向かってったからそっち側にある中型ダンジョンだと思う」
「分かった。すぐに追いかけるわ……伊織には俺から連絡するから安心しろ」
よし、これで何とかなるはずだ。と僕がちょっと安心したとき……
「でも、決勝戦は多分不戦敗だぜ。間に合わないからな。いいのか?」
そうカケルが聞いてきた。それに僕は立ち止まりかける。不戦敗……ここまで頑張ってきたのに……って、何を考えてるんだ僕は。
「助ける方が大事だよ。僕は良い子だからね♪」
「ハッ、お前らしいな。まぁ、今回は俺も賛成だ。すぐに追いかける。んじゃあ、また後で」
そう言って電話は切れる。これでカケルも柊樹さんも来てくれるだろう。僕は二人が来てくれることの安心感を感じながらスマホアプリ「ダンジョンサーチ」を起動する。解説はまた
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