学校の異端児(←酷いところもあるけど、カケルは良いやつだよ?

ちょっと長くなりました(_ _) ごめんなさい


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「だから、お前は死んでないんだってば!」

「う、嘘だ。だって、めちゃめちゃ落ちてきて……自分の肉が『グチャッ』っていうのも聞こえて」

「それは俺が倒したモンスターの山にお前が突っ込んだからだよ!」

「え……?」


 カケルが何気なく放った一言に、今度は表情が死ぬことはなかったが、驚き一色に染まってしまった。だってだって、モンスターの山? 何そのパワーワードってなるじゃん!


「ほら、見ろよ」


 カケルが僕の背後を指差す。「そんなまさかぁ」とか言いながら、もはやそれはフラグにしかならないと分かった上でそんな事を言いながら振り返った先には──ケンタウロス、リザードマン、ゴブリン、スケルトン、オーガ……などなど、大量のモンスターの死体で出来た山があった。


「え、え、え……」


 思わす声が詰まりせめて視線だけでも何かを伝えられたら、と思ってカケルを見ると「な、言ったろ?」って感じのドヤ顔があった。もうそれはそれは自信に満ち溢れてて、目は輝いてるしちょっと前のめりになってるし、といった具合であった。


「な、言ったろ?」

「いや、口でも言うんかい!」


 僕の華麗なツッコミが入りました。普段ボケサイドだから珍しいよぉ。


「って、そんな事は置いておいて。ほんとにあれ、カケルが一人でやったの?」

「そうだぜ。すごいだろ」


 カケルのドヤ顔と死体の山を交互に見る。うむむ、何度見てもこのドヤ顔男があの死体の山を形成できるような力量の持ち主には思えない。


 そもそも山の死体は全て焼死体である。カケルの武器は刀で……と、ここで僕は違和感を覚えた。そう、確かに違和感を覚えたのだ。ただ、もう既に霞のように消えてしまっていて。めっちゃもどかしいよ!


「まぁ、刀の使用は禁止されてるしな。いつ突っ込んでくるのかと思ってたぜ」

「おまっ、お前! 人のモヤモヤを……なんかモヤモヤするなって思うことを他人から、それこうじゃねって指摘された後の不快感を知っての所業か!」

「はぁ? って飛びかかってくんな。面倒くさい奴だなぁ!」


 カケルに飛びかかりながら僕、思ったんだ。なんか僕って面倒くさい奴じゃない? って。


「だからそう言ってんだろ!」

「あれ? そうだっけ。ごめんごめん、興味なさすぎてさぁ」

「お前、一回現実を知っとく?」


 カケルが笑顔で──ものすごくニコニコしながら──刀を振り僕の首のすぐ横で止める。それにこの寸前で止める技量……アニメでも限られたヤツしか出来ないやつじゃん。よし。結論、カケルは強い。


「てか、お前。友達いねぇだろ」

「む、そりゃいないけど。何で分かったの?」


 ついでに、よく面と向かって「友達いねぇだろ」とか言えたね。僕は無理だよ。カケルは多分デリカシーがないって言われてフラれるタイプだね。


「じゃあ、なんて言えば良いんだよ」

「お前って一人が好きなタイプか? とか。オブラートに包むのが大事なんだよ」

「なるほどな……じゃあ、お前一人が好きなタイプだろ?」

「……その気遣いがなんか嫌」

「ふざけんな?!」


 と、まぁそんな会話があったのだが関係ないので割愛……


「出来てない出来てない」


 うるさいなぁ。細かいこと気にする奴は嫌われちゃうよ〜。って、まぁ閑話休題ってことで。なんで僕がボッチだって分かったの?


「俺の名前は学校でも有名だからな。普段友達いなくて誰とも話さない奴くらいしか俺の名前を知らないって奴はいないと思う。」


 え、何カケル……自意識過剰ってやつ? ナルシスト君だったの?! それは大変だなぁ。実は自分はそこまでだった、って分かったら荒れちゃうよねぇ。ごめんね。


「お前な……まぁ、いいや。なら聞いたことあるか?」

「学校の異端児くらい聞いた事あるよ〜。確か、禁止されてる刀を使う奴で先生たちも完全に放置状態の一年生……あ」

「やっと気づいたか……」


 カケルの呆れたような顔。も、もしかしてカケルがあの学校の異端児なの?

 噂に聞く『鬼のような顔』や『冷酷で人を殺すのも躊躇わない顔』とはほぼ真逆と言ってもいい顔を目の前のイケメンはしている。さっきまでのカケルからも噂のようなひどい雰囲気は感じなかった。


「まぁ、噂は所詮噂だって事だ」

「そっか、そうなんだ……でもじゃあどうしてカケルは刀を使うの? あの焼死体から察するに相当な炎魔法を使ったんでしょ?」


 全てのモンスターが例外なく真っ黒に焦げている。普通、刀で斬っただけではならないだろう。このダンジョンに溢れた世界でも自然現象とかは以前と変わりないのだ。


「あぁ、それは……これだよ」


 ボッ!


 カケルの刀が赤色の炎を纏った。むむむ、何これ。炎魔法を制御して刀の周りに発生させてるのか? 今度は魔法適正高いんだぜ煽りか? 魔法適正だけは生まれつきなんだ、仕方ないと思う。


「俺だって魔法適正1だよ。魔法使えるならわざわざ刀を使う必要ないだろ」

「確かに……でもその炎は何?」

「これは、俺の異能スキルだよ。『炎上』っていう、俺が触れた物から炎を発生させるスキル。火力も出ねぇから使い勝手の悪い雑魚スキルに分類されるが、こうやって刀に纏わせれば中々強いんだぜ。モンスターを斬るとその脂か何かで着火して丸焦げに出来るしな」


 またもやドヤァって感じの笑顔になるカケル。一発  この横っ面を殴ってもいいかな──とわりと本気で思ったけど、また「斬るぞ」って言われそうだから止めときました。うんうん、やっぱり頭良い子は違うよね〜!


「お前の自信はどこから来るんだ……」

「事実だもん♪」


 フフン──と僕は得意気に鼻を鳴らした。隣から呆れたような視線を感じるが、気のせいだろう。多分僕のキレイな横顔に見惚れているんだと思う。


「……まぁいいや。とりあえず俺はもう行くわ」

「え、もう行くの?」


 確かにカケルと会ってからだいぶ時間は経ってる気はする。でも、そんなに急ぐ必要あるかな……


「さっさと帰りたいんだ。課外授業は終わったやつから帰っていいからな。なるべく早く終わらせたい」


 カケルは立ち上がると僕に背を向け、刀に火を纏わせながらテクテク歩いていってしまう。どうやら本気でもう行ってしまうつもりらしい……ということは僕はまた一人になるわけで。でも僕は最弱キャラで。ならここに一人取り残されてモンスターと会ったら……死んじゃう。今度こそ死んじゃう!


「ま、待ってよぉ! カケルー」


 僕はテクテクスタスタと行ってしまったカケルを追いかけるのだった。




──一応、解説(未満の何か)──


カケルの炎を纏わせた刀……スキル「炎上」の応用ですが、「炎上」の性質上を作るのは困難なはず、と思った方もいるのではないでしょうか。


原理としては、刀で斬った後にモンスターの脂に火が点いて燃えてます。火力は出ないと言ってますが範囲を狭めてるので相当な火力になってます。

(じゃあ、その炎に耐えるカケルの刀って一体……



読んでくださりありがとうございます(_ _)

これからもよろしくおねがいします

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