小紅奈留(←現在死にかけ

 思い返せば、僕の人生はそこまで良いものでもなかったかもしれない──と僕こと小紅奈留こぐれなるは思った。あ、ちなみに現在落下中です。死へのカウントダウンは既に始まってます。まぁ、一種の走馬灯だね♪


 さてさて、僕は生まれた時から『ダンジョン』が身近にあった。ダンジョンを攻略する役職のことを『冒険者』と称するのだが、父さんがそれだったんだ。


 昔から子守唄の代わりに父の武勇伝──昔は〇〇を一撃で倒した、とか世界ランカーだった時もある、とか──を聞かされていた僕は勿論そんな父に憧れた。そして冒険者を目指すようになったわけ。


 んで、冒険者になるためにやらなければならないこと。それは『魔道士育成学校』に入学することだ。魔道士育成学校、略して魔学は冒険者育成機関とも呼ばれ国が運営する学校である。ここの卒業試験に合格できた者のみ冒険者の資格を得られる。だから僕は倍率が……


 っと、難しくて長々とした話は嫌いなので……ここからは大雑把に行こうかな〜。よし、という事でダイジェストでお送りします♪


 とりあえず頑張って勉強して見事合格した僕。入学の際に『魔法適正検査』とやらを受ける事に……この検査はどれだけ魔法を使うのに向いているか、を測る検査らしい。なんか色々された。んで、僕はどうだったと思う?


 なんと、最低評価の『1』だった。うん、ふざけんじゃないよ、って話。しかも備考の欄に『貴方の魔道士としての資質は無いに等しいです。今すぐ別の職を目指す事を推奨します』ってご丁寧に書かれていた。


 破り割いてやったね。そりゃもうビリビリに、出来る限り小さく……まぁ、魔法か何かですぐに元通りに戻りやがったけど!


 話が逸れました。コホンッ。えーと、とりあえず魔道士としての資質が無いらしい僕。それでも諦めきれずに必死に授業も受け、頑張った。常に授業で習った事を反芻はんすうし魔法についての勉強も止めなかった。時間さえあれば父さんにも魔法を教えてもらった。


 だ、け、ど! 魔法適正1は伊達じゃないらしく生徒同士で模擬戦をする授業では魔法がマトモに出せずに全敗。しかも相手に傷一つつける事さえ叶わず、ついでに十秒にも満たない時間で負けてしまう。


 まぁ、はっきり言って地獄だよね。やる気も底尽きて退学を視野に入れていた時、本当に今すぐにでも止めてやろうと思っていたタイミングで、この課外授業はやってきたんだ。どうせ僕なんかって思ったよ。


 けど、この課外授業のおかげでもう少し頑張ろうとも思えたんだよね。明確な区切りが見えたからそこまでは頑張ろうってなったわけ。まぁ、それが今日なんですけど!


 というかちょっと一瞬脇道に逸れるけど、最近父に聞いた話では、魔学は入学した生徒の一割くらいしか卒業出来ないらしい。卒業試験とやらが難しいのもあるが、それ以上に普段の学校生活に馴染めず冒険者という夢を諦めて別の道に進む者がほとんどだと。


 んで、そして一番退学者が出るタイミングがここ、課外授業らしい。ここまではなんとか頑張る人が多いけど、実際のダンジョンの危険性とかを知って逃げ出すやつが全体の七割近く、らしい。


 これを聞いて「良かった、僕だけじゃないんだ」と僕は思ってしまった。自分一人じゃないって分かった瞬間、人ってのは安心するよね、アレアレ。

 でも、それを自覚した途端止めるのが嫌になったんだよね。なんかそんな大多数の中の一人で良いのかー、みたいな。自己顕示欲、かもしれない。


 まぁ、そんなこんなで僕は今日まで頑張ってきたんだ〜。ねぇねぇ、褒めて〜♪


 っと、ここまでの僕の人生を振り返ったわけだけど……アニメとかならここから奇跡の大逆転が始まるんだろうなぁ、と思う。夢を諦めるのが嫌で必死に頑張って夢を掴み取る、みたいな。でも、僕にその資質はないのは前述の通り。諦める方が賢明、まである。


「まぁ、ここで生き延びれたらの話だけど」


 一番現実的な話は、この後落下死して終わり、だよねぇ。ごめんなさい、父さん母さん。親不孝な子で。先に逝って待ってるね。


 ──グチャッ

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