涼 と みんな と わんぱく漆黒マウンテン
「この漆黒肉――ブラックロックの肉を、一口サイズにカットして事前に漆黒の調味液に漬け込んできてあります。
これに、漆黒の衣をまぶして――高温の油に投入!」
:真っ黒肉怖いと思ってたけど急に美味しそうに見えてきた
:ああダメです!それは反則です!
:お洒落ロースト→お洒落しゃぶ→からの分かりやすい唐揚げはズルい
:作る行程も見た目も知ってるはずなのに真っ黒なだけで別モノに見えるんだけどw
「もちろん二度揚げもします。
横では漆黒の衣を使ってオニオンリングも作っていきましょうか。名付けて漆黒の鬼オーンリング」
:今オニオンの発音変じゃなかった?
:鬼オーンってモンスターが食材になってるからだろ
:なるほど「漆黒の鬼オーンリング」って言ったのか
「揚がった唐揚げと鬼オーンリングを山ほど盛れば完成!
涼ちゃんの為のワクワクわんぱく漆黒マウンテン!!」
:ワクワク腕白漆黒マウンテン……! なんて心トキメクネーミング!!
:大盛りチャレンジメニューじゃねーかww
:黒い山にしか見えないんだけど笑
:焦げてないよね?大丈夫これ??
:涼ちゃん 目も顔も輝きまくってるwwww
目の前に置かれたワクワクわんぱく唐揚げマウンテンに対して、見るからにテンションがおかしくなってる涼。
その姿を見て、ディアが笑って促す。
「どうぞ涼ちゃん。お先に食べて!」
「うん!」
:嬉しそうだなぁww
:サングラスはずしてる奴は付け直しとけよースチャ
涼が唐揚げを一つ口に運ぶと、サクっという音が聞こえてくる。
:うわかじった時の音が良すぎる
:どんどん顔の輝きがましてくぞー!!!!
:良い顔で食べるなー
「黒マー油を使った漆黒ソースも一緒にどうぞ」
「……!」
:タレまで黒いw
:清々しいまでの黒
「テツさん、衣に竹炭を混ぜてます?」
涼に遅れて唐揚げを食べ始めたディアがそう訊ねると、テツはその通りとうなずいた。
「正解。最初はイカスミを使って試作したんだけど、色はともかくイカスミは匂いと旨味が強くて、まずくはなかったけど唐揚げとしては微妙でね。いろいろ試して、最後はこの竹炭と少しだけ摺り黒ゴマを加えたモノになったんだ」
:黒くする為に試行錯誤したんだ
:竹炭って実際どんな味すんの?
:竹炭の味
光り輝く涼の横でディアとテツがそんなやりとりを見せていると、これまで聞こえてこなかった声が一つ聞こえてきた。
「うお!? なんか旨そうなモンみんな食ってんな!?」
声のした方にカメラが向けば、そこには声の主である
「バカ、いま収録中よ」
「……っと、いけね」
リーダーである
「問題ないです。そういうのもライブ配信の醍醐味というコトで」
ね、涼ちゃん――とディアが振れば涼も口いっぱいに唐揚げを頬張りながらうなずく。
「
「ありがとなディアちゃん。あと、涼ちゃんはとりあえず口の中のモン飲み込んでから喋ってくれ、な?」
「あまりに詰め込み過ぎてて限界に挑戦するハムスターみたいになってるわね……というか何で顔が輝いてるの?」
:顔に対する新鮮な反応をありがとうお姉さん
:これがふつうの反応だぞチキンたち覚えておけ
:ディアちゃんと美食家もだいぶ毒されちゃってるからなぁ涼ちゃんとチキンに
「真命、顔に関してはあとでオレが説明してやるから気にするな」
「是非説明してちょうだい。でも気にするなっていうのは無理よ?」
:それはそう
:サダメさんの反応は本当に正しいハズなんだ
「守さんたちの分も、心愛さんたちがいる席に用意してあるので、是非食べていってくださいね。収録の後で感想聞きたいので」
「マジで? 食っていいのか!? 涼ちゃんやディアちゃんの食べてるダン材料理気になってたからマジ嬉しいわ」
本当に嬉しそうにそう口にしてから、守はイタズラっぽくというよりも皮肉っぽく露悪的な笑みを浮かべながらカメラに向かった。
「いえーいチキンども! お前らチキンを代表してこのオレが食ってやるからな~!」
:おのれ鳴鐘ギルティ
:さっきまで気絶してやがったのに
:鳴鐘無能
:鳴鐘クソ
:クソで無能の鳴鐘め! 俺らの分まで味わって来い!!!!
:なるほどあの人チキンなんだw
:視聴者でありながら食べられるの羨ましいがすぎる…!
「守が大人げないコトしてる」
「生放送なのにカメラの前に立っていいのかよ?」
「よくわからないけど、主役二人やスタッフも咎めてないからいいんでしょうね」
ふつうのテレビ放送なら怒られるのだろうが、動画配信というのは違うのかしら――と首を傾げつつ、真命は仲間を促した。
「とりあえず勝手が分からない私たちは、静かに心愛たちのところにいきましょう。私たちの分の料理も用意してくれているそうですし」
「モンスターを使った料理かぁ……ちょっと怖いよね」
「でもめっちゃ旨そうにあの人たち食べてるじゃん? 守もなんか嬉しそうだし。結構楽しみだぜ」
そうしてカメラの前で視聴者を煽ってきた守はホクホクとした顔で、真命たちのところへと戻っていく。
それを見送るようにしてから、ディアは涼へと視線を向けた。
「涼ちゃん、その唐揚げ――というかブラックロックのお肉の味はどう?」
「もぐもぐ……ごくん」
:ちゃんと喋る前に飲み込めて偉い
:鶏肉からむと幼児退行するんだよなぁw
「見た目からは想像できないくらい柔らかい肉だよね。
特にモモ。ぷりっとした力強い弾力はあるのにすっごい柔らかい。
滋味深い味わいのある肉な反面で、肉の味そのものは決して強いとはいえないから、衣の竹炭の香ばしさとゴマの風味がよいサポートをしてる。
下味もしっかりしてながらも、その繊細なブラックロックの味を損なわないような絶妙な薄味で、だけどしっかりとダシの聞いた旨味の強い味で、すごい美味しい!
マー油ダレをつけると、苦みと香ばしさが追加される上に、あえて下味には使ってないニンニクの風味がガツンとくるようになる味の変化はすごいです。
だけどニンニクの風味も絶妙で、インパクトあるのにブラックロックの繊細な風味は損ねないバランスの取り方がされてるんですよね。
これタレにも、ブラックロックのダシや鶏油とか使ってますよね」
:怒濤の早口
:めっちゃ美味しかったんだろうな
:しゃべりながらも合間合間で食べてるのに言葉つっかえてないのなんで?
:涼ちゃん唐揚げを飲み物のごとく消費してない?
「涼ちゃん正解。タレの仕掛けも気づかれるなんてなぁ」
「鬼オーンリングも美味しいんだよねぇ! もうタマネギの甘みと旨味が怒濤のように押し寄せてくるの! それが竹炭衣の香ばしさとザクザク感と相まって最高! もうこれだけでずっと食べてられる!」
そう言いながら、ディアがザクザクと音を立てるようにカメラの前で食べる。
やりながら、スタッフに視線を投げた。
「後で鬼オーンリングASMRとかやる?」
:それは欲しい
:是非!
:実にいい音だ
「部長! やっぱりビールが欲しいです!!」
「シロナ君……君、さてはそれを持ちネタにしようとしているな……!」
:外野から部長さんとシロナさんの声がw
:ビールほしがってるシロナさん可愛いよな
:でもわかる あの鬼オーンリングはビールが絶対あう
「あ、涼ちゃん。モカPからカンペが!」
「え? もう〆る時間??」
:マジか
:わちゃわちゃしたカオス感がすごい時間だったな
:でも楽しかったー
:終わっちゃうのかー……
「それじゃあ〆の挨拶でも」
「そうですね」
ディアと涼が終わろうとしたその時――
「だがッ、終わる前に、私たちをカメラに映してもらおうかッ!」
:来たなw
:来ちゃったかぁ
:前回も似たようなタイミングで乱入してきたしな笑
:また終わり際に乱入してくるの草
――突如聞こえた声の方へとカメラが向いた。
「
「
「
:なんでそんなヒーロー名乗りみたいなノリなの?
:無駄にポーズ決まってるww
:涼ちゃんねるしか知らない無知ですまん どちら様?
:ディアちゃんと同じ事務所所属のダンジョン配信者ちゃんたち
「我らディアちゃん以外のダン配三人娘!」
「涼くんと関わるようになった大角ディアに人気を抜かれつつある者たちでもある!」
「我らつまみ食いを目的とするべく、義によって助太刀に参った!」
:自虐がひどいwww
:つまみ喰いが目的の時点で助太刀じゃねーんだよなぁ笑
「……あげませんよ?」
じーっと見つめられた涼が慌てて、半分くらいまで減っているワクワクわんぱく唐揚げマウンテンを背中に隠す。
:隠し方が完全に子供なんよw
:絶対死守するという強い信念を感じるの草
「そんなワケでワタシたちの分がありましたら是非ください!」
「その為だったらディアの靴だって舐めるわ。ツボミが!」
「もういっそその為だけに奴隷にしてくれても構わない。ツボミを!」
「ワタシ生け贄ッ!?」
:もう〆るっていうのに賑やかな子たちが来たなぁw
:この子たち漫才しにきたの?笑
:ふつうに可愛いのでこの子たちのチャンネルも登録してきた
「まぁ来ると思ってテツさんに頼んであるから、あっちのテーブルで食べてきて。ほら、スタッフさんも手招きしてるし」
ディアがそのテーブルを示した瞬間、三人の目が輝いた。
「ありがとー! ディアちゃんいっぱい愛してる!!」
「ディア、いつも私たちの為にありがとう!」
「やっぱりディアさんは良い人ですよね!」
三人は口々にそう告げると、びゅーんという音でも聞こえてきそうな勢いでテーブルへと向かっていた。
「この距離で加速系のスキル使うのってどうなの?」
:どんだけ楽しみにしてたんだよw
:今日は穏便に終わったね
:穏便 とは
「さて涼ちゃん。食べながらでもいいから、改めて〆よっか」
「もきゅもきゅ……ふぁい」
:またハムスターみたいになってるw
:本当に幸せそうに頬張るなぁ こっちまで幸せになりそう
「それではチキンのみんな、美食家のみなさま! 次回も私のキッチンと!」
「涼ちゃんねる、それぞれの場所でお会いしましょう」
:おお!涼ちゃんがちゃんと繋げた!
:やっぱり棒読みだけど
:その棒読みがいい!
:カオスっぷりがすごかった
:いやぁ美味しそうだったよなぁ
「またねー!」
「またねー? コンゴトモヨロシク」
:ばいばーい
:おつかれさまー
:今日も楽しかった
:真面目とgdgdのギャップが日に日に強まるな笑
:今回は真っ暗ボイスモードはない?
:前回のはフェードアウト直後の乱入だったからな笑
:気持ちはわかるw
「やばローストうまっ!?」
「この唐揚げも……!」
「なにこのお洒落しゃぶしゃぶ……美味しすぎ……!」
:画面のブラックアウト中に三人娘の声が聞こえるw
:楽しんでいるようで何より
:テツさんのお店行ってみたいなー
:名前もハンドルだし店の名前も出してないもんなー
:ちょっとこれからコンビニ行ってくるか
:おれはファミレス行ってくるわー
「え? 涼ちゃん、それを一気に? うわすご!? え? カメラは? 回ってないの? マイクだけ? もったいな~~い!!」
:ちょ!?
:最後の最後になにが!?
:ディアちゃんなにがあったの!?
:《モカP》涼が皿に残ったの7個くらいまとめて一気喰いしただけなのでお気になさらず
:無茶いうなww
:唐揚げ七個一気!?
:気にするなとか無理wwwww
:本当にカメラの回ってないところで何やってるのwww
:《出部長》一気はともかく今回もみなさんご視聴ありがとうございました でたがり部長の出番少なくて申し訳ない
:そこ謝らなくていいですw
:《出部長》今後とも大角ディアとルベライト・スタジオ、それから三人娘たちのコトもよろしくお願いします
:《モカP》涼ちゃんねるもあわせてよろしく そろそろ収益化も通る頃かと思いますので
「そう言えばもう一つの挨拶してませんでしたね」
「確かに」
「それなら言おうか」
「はい」
「せーの……」
『ごちそうさまでした!』
「うわ!? スタッフさんたちまで一斉に……!?」
「あの、エンドリーパーさんも混じってましたよね?」
「うむ。お前たちの歓喜の感情、実に美味であったゆえな」
:!?
:ま?
:w
:え
===この配信は終了しました===
=====================
【Idle Talk】
今回もとろけた顔をした三人娘はバッチリと写真をとられて、ワブにて公開された。
またシーカーズ・テイルも料理の画像や感想なども、個人のアカウントにて各種投稿。それらもかなりのPVを得た。
「あたしらの中での一番バズったで賞は~~セリア姉が口からしゃぶ肉半分垂らして固まってる写真だったね~~」
「あまりの旨さにエロい顔した真命よりバズってんのどういうコトなんだろうな?」
「サダ姉のエロ顔に~~需要がなかったとか~~?」
「風紀気質のあいつがどうキレるか判断つかない言葉だなそれ」
==
これにて二章終了となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
キリの良いこのタイミングで、もしよければブックマークと、下にあるレビュー☆ボタンから評価を入れて応援をしていて頂ければと思います。
すでにブクマ・レビュー済みの方、ありがとうございます。引き続きよろしくしていただければ嬉しいです。
また毎日更新はここで終了です。
三章開始する際には、ほかの連載同様に不定期更新になるかと思いますが、今後ともよろしくしていただければと思います。
その三章なんですが――
エンドリーパーが想定外に喋り出したり、釜瀬が想定外に噛ませじゃなくなったり、守以外に出番の予定がなかったシーカーズ・テイルの面々が出てきたり……と、書いている最中にライブ的思い付きで舵を切ってたらプロットから結構ズレてきてしまったところがあるので、プロットを作り直し中です。
また毎日更新するにあたって、プライベートもいくつのコトが疎かになってきてしまったので、その辺りもちゃんとやった上で、三章を始めたいと思います。
今回はひとまずはこの辺りで。
今後とも、スニチキをよろしくお願いします
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