涼 と 湊 と コラボ配信第二弾
:お?映像きた?
:きたー!
:どこかの上空か?
:待ってました!
:ドローン映像か モカPかな?
:これ武蔵国府史跡ダンジョンの上空だよな?
:確かに眼下の町並みはそれだな
:でも東京美食倶楽部は無期限占有されてなかったっけ?
:撮影できてるってことは占有終わったのか
:領主邸前広場になんかいるな
コメント欄の困惑を余所にドローンの映像は、町を拡大していく。
そして探索者たちが領主低前広場と呼称する場所が映し出された時、コメント欄はさらなる困惑と驚愕に満ちていく。
:エンドリーパー!?!?
:戦ってるの誰だ?五人くらいいる?
:エンドリーパーって何?
:battle?
:戦ってるメンツに鳴鐘さんがいるな
:なにあのデカ黒怖いの!?
:鳴鐘誰だよ
:じゃああれシーカーズ・テイルか?
:なんでエンドリーパーとシーカーズ・テイルが戦ってる映像流れてるの?????
:いや誰か説明してくれ知らん人と名前ばっかりなんだけど
:これはこれで金取れるくらいすごい映像なんだけど涼ディアコラボは???
コメント欄の困惑が深まってきたところで、再びカメラは動きだす。
映し出すのは戦場になっている領主低前広場――よりも手前。大通りの終端。
:お?涼ちんとディアちゃんがいるぞ
:いやいるけどさ
:後ろの状況がやばすぎるだろwww
:二人とも呑気にドローンへ手を振ってるけど!
:I do not understand the meaning!?
:恐らくスタッフとか関係者さんだろう周囲の面々が広場の光景を見てドン引きしてるじゃんか笑
:エンドリーパーってやばいモンスターだろ?なんで平然と配信してんの??
:The gap between the front and the back will drive you crazy!!
:なんか見慣れない可愛い子がいるダボ袖白衣の
:ココアちゃんだ やっぱ戦ってるのシーカーズ・テイルなのか
:だからシーカーズテイルってなに?
:シーカーズ・テイルは日本でもトップクラスの関東でなら間違いなく一番の腕の良い探索者パーティ
:あのダボ袖白衣の子ココアちゃんっていうのか可愛いな
:釜瀬さんやセリアさんもいるな どういうメンツだこれ
:涼ディアコラボのはずが周囲に涼ディアよりも上の腕利き探索者が大量にいて草
:これ配信開始直前にトラブった感じか
:トラブったというかトラブルの貰い事故だろ絶対
:っていうかマジで占有の話どこいった?
ドローンの映像はそのまま空を映し出しゆっくりとフェードアウト。
次に画面が開くと、涼とディアを正面から映し出した。
「私の厨房へようこそ! 大角ディアのディアーズキッチン、今日は涼ちゃんと一緒にやっていきます!」
「みなさん、こんスニ! 事前の告知通り、今回はディアさんとコラボで涼ちゃんねるをやっていきたいと思います」
ちゅどーん ドンドンドン!
ふっ、はっ、くらえ!!!
バキューン! ドガガガガガガ!
そらそら! これはどう!?
ズダン! ドガン! ドドン!
ずみょみょん どわぶん
シュパパン!! うわ! おっと!
カルマ! シキ! 大丈夫!?
オレは問題ねぇ! ぼくも大丈夫!!
一人で突っ走るなツタエ!!
マモル合わせて! おーらい! ミスんなよサダメ!!
うおおおおおお! やあああああああ!
ぱっか――――――んん!!!
ふはははははは やるではないかー!!!!
:こんスニ! 背後が気になりすぎる!!
:ようこそとか言われても頭に入ってこないよディアちゃん!!!
:挨拶が入ってこないんだけど!!
:背後がカオスすぎる どういうことなの????
:もうちょっと領主邸前から離れないの二人とも???
「背後の模擬戦はボクらのいる大通りを巻き込まないコトがルールになっているので、大丈夫だと思います」
「環境雑音だと思ってみんな気にせずにね☆」
:無茶言うなディアちゃんww
:いやルールあっても怖いわ背後でドカドカしてんの!
:こんなハデな環境雑音あってたまるか!!笑
:金取れるバトルだよアレwwww
「あっちのバトルはモカPとうちのスタッフがドローン撮影しています。
シーカーズ・テイルさんのご厚意で後日の配信許可を貰ってますのでお楽しみに!」
:後日みれるなら背後は気にしなくていいな
:本気で気にせず見れるのか?
:そうは言ってもさぁ笑笑
:色々無理があるw
:でもかなり楽しみな自分がいて悔しいw
:ずっとドカンドカンしてるんだけど本当に平気なの???
「さて今日のコラボ配信にはシークレットゲストがおります。
……と、言っても配信者でも探索者でもありませんが」
「では、ゲストのテツさん。どうぞ!」
「あ、どうも。ご紹介あずかりましたテツです」
:コック帽にコックコート……料理人?
:すっごいふつうの人っぽい!
「テツさんはディアーズキッチン、涼ちゃんねるの両方のファンで、しかも私と涼ちゃんの共通の知り合いでもあります」
「本当はテツさんのお店で配信をする予定でしたが色々と事情がありまして武蔵国府史跡ダンジョンこと東京美食倶楽部での撮影となったんです」
:涼ちん説明が棒
:完全にカンペ読んでるw
:目線がカンペ追ってるんだよな涼ちゃん笑
「今日のコラボでは
:ガチシェフによるモンスター料理!?
:背後がやばいのに本来の内容もやばい!
「なのでこちら、大通りにバーベキューセットを筆頭にキャンプ用の調理台とか色々用意してあります」
ジャーンと、ディアが大通りを示すとそこには結構大がかりな調理台セットが用意されている。
:本格的な野外調理セットだ
:一瞬映ったココアちゃんがピースしてた可愛い
:ココアちゃんって何者?
:シーカーズ・テイルの所属の探索者でパーティの専属医
:白衣ってネタじゃなくてガチで医者なんだ!?
「画面に映り込むたびに話題になる心愛さんにちょっと嫉妬したくなりますが、さておきます!」
:画面情報が多すぎるんだよ今日
:嫉妬するディアちゃんかわ
:こうしてる間にも環境雑音がハデに響くしさぁw
:エンドリーパーがノリノリに笑ってるのも反応に困るよな笑
「ディアちゃん! もっ~~と私に嫉妬していいぜ~~~~!! あ痛ッ!? なんで急に叩くのセリア姉!?」
「黙りなさい。邪魔をしない約束で撮影を見せて貰ってるのよ」
「あう~~……そ~でした~~~~……」
:姉妹漫才かわいいな
:その漫才をちゃんとカメラで撮るスタッフGJ
コウオウテンショウケン!! どっかーん!!
悪くない! だがまだヌルいわ!!!!
くっそー……ってうわああああああ!!!!
カルマ生きてる? なんとか大丈夫だ!
ふははははは! もっとだもっと打ってくるがいい!
:姉妹漫才になごんでるのにうるせーなー環境雑音w
:もう何を見て何に集中すればいいか分からんなんだこの配信クセになってきた
「ちなみに心愛さん、セリアさんを姉と読んでますけど、別に血が繋がってはいないそうです。ついでに心愛さんは大学二年生でボクやディアさんより年上なので注意」
:大学……二年生……?
:前回の涼ちゃんねるで見覚えのあるコメントが大量にww
「さてお二人のコトはさておきまして。
ちょっとだけ真面目な話をさせてください。特に配信そのものよりも、占有権の話が気になってこの配信を見に来ている人もいるでしょうから」
どっかーん
ふはははははははは
みょんみょんみょん
うおおおおおお!!!
スババババババババ
:やっぱ何かあったか
:エンドリーパーやシーカーズ・テイルがいるこの状況で何もないワケないよな
:チキンとしても探索者としても気になる話なんだけどな環境雑音!
:耳障りどころか意識障りレベルで気になるぞ環境雑音!!
:時々混ざる爆音や破壊音とは違う変な音はなんなんだ!?
「今の混沌とした状況ですが――まず一つ、エンドリーパーさんとシーカーズ・テイルさんたちとはここで遭遇しただけで、ゲストだとかそういう意図は一切ないです」
環境雑音を気にせずに、ディアがそう説明すると、そこに涼が補足を加える。
「ちなみにエンドリーパーさん曰く散歩でココに立ち寄っただけらしいので、別に東京美食倶楽部が消滅するとかそういうコトもなさそうです」
:散歩するんだエンドリーパー
:散歩中のエンドリーパーと遭遇とか怖すぎる
:ところで何でダンジョンの消滅の話になるの?
:エンドリーパーは消滅直前のダンジョンに顔を出すんだよ
:あの死神の仕事は消えゆくダンジョンを看取ることなんだと
:さすがエンドリーパーにも推される涼ちん ちゃんと情報聞き取ってる
「時系列的には、エンドリーパーさんのお散歩、ボクら到着、話を聞きつけたシーカーズ・テイル到着、模擬戦開始……みたいな感じですね」
:なるほど シーカーズ・テイルがエンドリーパーに挑んだ形か
:それでこの環境雑音
:もうみんな意地でも環境雑音ってコトにしようとしてんなw
「それと気になってる人がいるようなので解説を付け加えます。
今回、撮影スタッフの中に四国の保護者の二つ名で有名な釜瀬さんがいますが、これはモンスターの出現しない町エリアでの撮影とはいえテツさんを含む非戦闘員のスタッフも多いので、護衛を依頼させて頂いた為です」
カメラが少しだけ釜瀬に向く。
当の釜瀬は困ったような顔で軽く手を挙げてみせた。
:良い人そう
:カマセって名前で損してそう
:四国の保護者ってすごい二つ名だな
:スタッフさんの護衛をありがとうございます
「ディアーズキッチンのメインリスナーの方には退屈な話になってしまうかもしれませんが、少しだけ真面目な探索話におつき合いください」
:OK
:前のコラボのお説教も面白かったし問題ない
:ディアちゃんも探索者だしね 重要なんだろうな
:ディアーズキッチンのみんなさんきゅーな
:探索者的にはあまりにも気になっててな占有の話
そうして、真面目な空気が広がっていく中で、環境雑音にも変化があった。
シュシュシュシュザザザザザザザンンンン
:うおっ!?環境雑音すげぇぞ!!鳴鐘が一瞬だけ十人ぐらいに分身した!?
:え?分身なんてした?いきなりすごい数の斬撃が起きたようにしか
:つーかスキル宣言に全く知らない言葉使われてなかった?
:アーツでもブレスでもなくミスティックとかなんとか
ふはははははははははは!!!
よくぞ!その領域にたどり着いた!!
これでダメなのかよ!
いや感服したぞ 故にこそ返礼せねばな!
枷があるゆえ完全ではなくただの疑似再現だが
以前、リョウに見せた技! そのLv5!
総員警戒!! 耐えるか避けるかしなさい!!
疑似再現しただけのこの技は
命も魂も傷つけることはない
ただ意識を刈るだけよ 刮目せよ!
:げ!あれくるのか!
:しかも疑似再現とはいえLv5だぞ!?
:全員気をしっかり持て!全部錯覚だ切れたりはしないからな!!
:急になにが?
:え?環境雑音どうかしたの?
「うあ、最悪だ」
マイクが涼のその音声を拾った瞬間――
画面内が――いや世界が切断された。切断されズレたかのように誰もが錯覚した。
強烈なその錯覚の影響により、その場にいた涼もディアも、その関係者たちも、そして視聴者たちすらも、自分の首が切り落とされたような感覚に襲われて青ざめる。
涼は首を撫でながら環境雑音の方を見れば、シーカーズ・テイルの面々は全員倒れ伏せていた。
エンドリーパーの言葉を信じるのであれば、みんなただ気絶しているだけだろうが。
「とりあえず環境雑音はここで終わるみたいです」
ともあれ、その事実をみんなに知らせるべく、阿鼻叫喚に染まるコメント欄をみながら涼は嘆息混じりで告げるのだった。
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【Idle Talk】
涼から何ともいえない眼差しを向けられたエンドリーパー。
「我、なんかやっちゃいました?」みたいな様子で首を傾げている。
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