/// 14.新たなパーティ
ダンジョンの入り口前に立つ6人。
いよいよ新たなパーティで進み始める。
事前に相談済みで11階層から進むことになった。バランスの良い3人なら何とかなるだろうとのこと。新しい仲間のエアロはソロで5~6階層を安全第一で狩り進むぐらいはできているとのこと。
それに何かあれば僕らが居る。
ルーナに「もしもの時には」とお願いされている。
初めての階層にきょろきょろと落ち着きのないエアロ。ルーナとフランソワは前回来た階層だが少し緊張しているようだ。
そんな僕たちの元にスライムを3匹ほど引き連れたゴブリンナイト1匹が現れた。まずは初戦に丁度よいかもしれない。僕は3人に「がんばって!」と声をかけ、戦闘が始まった。
まずはいつもの様にルーナが【攻撃強化】と【防御強化】を自分とフランソワ、エアロに付与する。フランソワがまずは牽制を兼ねたダガーでの攻撃でスライムを蹴散らせて行く。
というか簡単に倒していた。まあ経験済みだからね。
エアロはそれを見て驚きつつもゴブリンナイトに長剣を構えて対峙する。先ほどまでのオドオドした雰囲気を消えていた。
そしてすっと近づいたかと思ったら、横薙ぎの一閃がゴブリンナイトを捉えその胴を切り裂いた。僕は思わず「かっこいい!」と口にしてしまう。その声にビクッと肩を弾ませたエアロの顔が赤くなってくる。
エアロは照れ屋さんのようだ。
普段サラ(サフィ)さんなんかの派手な魔法や拳での攻撃を見てるけど、エアロのようなザ・剣術!といったのは中々見てこなかったから感動が凄い。悠衣子も派手な技ばっかりだし……やっぱり剣術修行真剣にやろうかな?
多分僕がやったらどんなに不格好でも高いステータスの恩恵で、なんでも一撃で叩き切れちゃうだろうけど……せめてエアロのようにスマートな剣戟をやってみたい……今週末は悠衣子に教えてもらおうかな?
問題なさそうだと判断したルーナは「どんどん進みましょう!」と声をかけひたすら階層を上げてゆく。そして前回と同じように15階層までくると、周りの安全を確保しつつ昼食となった。
僕は収納からいつものドカ弁を取り出し、ついでにルーナたちから渡されていたお弁当をそれぞれに返した。エアロは少し周りを警戒しているようだ。ルーナとフランソワはサラ(サフィ)さんがいるからとリラックスしている。
途中でワイルドウルフの群れが近くまで来て唸っていたが、サラ(サフィ)さんがひと睨みしたら「キャイン」と鳴いて逃げていった。それを見てエアロも何か察したのかリラックスして食事に専念できたようだ。
そして昼食も終わり、いよいよ三人が未踏破である16階層へと降りてゆく。とは言っても基本でてくるのは一緒。スライムとゴブリンナイト、ワイルドウルフとコボルトのみだ。危なげなく進んでゆく。
連携もうまく決まっているようでサクサクと進めてゆく。
ここに来てルーナも防壁というガラスのように脆いけど多少障壁にはなるスキルを上手く使い、群れを攪乱したりするのに使っていた。少ない魔力を効率よく使うその戦法にこういった戦い方もあるんだなと改めて関心した。
そしてたどり着いた20階層。
さすがに疲れも出ているので今回はここまで。ということで時間いっぱいまでその階層で狩りを進めた。三人もかなりレベルを上げることに成功したようだ。夕方になって帰還の札で戻ると、ギルドに収納しておいた素材を提出した。
三人はその額に驚いていたけど、冒険者だったらそんなに多くは無い額だ。収納持ちがいると稼ぎが段違いというのはあるけどね。
当然三人で山分けしてもらった。
それでも一人30,000エルザぐらいにはなったので、3人は週末に『南出moreー瑠』に行ってこようっか?なんて話していた。だから僕は夕食そこで食べる?新パーティ結成の歓迎会で僕が出すけど一緒にどう?と誘ってみた。
ルーナとフランソワは「えっいいの?」「でも奢ってもらうのは悪いなー」と少し遠慮がちだけど行きたいオーラを出していた。エアロは急に緊張して無言になっていた。もとからほとんどしゃべってないけど……
いや、逆に「ついに……そ……」などと言っている小さな声を、聴力を強化した僕の耳が拾っていた。なにが"ついに"なんだろう?何か勘違いしてそうで心配になる。お金の心配なんていらないのにね。
その後『南出moreー瑠』の最上階にあるラウンジの個室に入る。
事前に通信具で連絡済みで、何も言わずに通されてゆく様に、ルーナとフランソワの二人は緊張、エアロは「えっ」「はっ」「そげっ」っと戸惑っていた。そげってなんだろう?
最初は緊張していた三人も食事が進めば段々とリラックスしていたように見えた。エアロも二人に「大丈夫だから」「楽しもう」なんて言われた時には、なぜか顔を真っ赤にして両手で顔を覆っていたが、その後は美味しい食事を堪能していたようだ。
食事が終わればそのまま何事もなく帰路につく。
帰りがけ、来た時以上に緊張してロボットの様に歩くエアロも、会計を済ませ「じゃあまた」と別れる時には首を傾げていた。
こうして終わった野外実習。あの三人なら卒業までには30階層を突破して優秀な成績で卒業できそうだ。できれば一緒に卒業したいけど……僕たちは何時までこうやって学生に扮して通えるだろうか?
願わくば何事もない学園生活が送れますように。
そう願うことしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます