異世界の学園
/// 01.学園からの依頼
時は少しさかのぼる。
勇者とのあれやこれが終わり、無事孤児院も改装がおわった。立派な結界設備付きで……
『りんごーん』
孤児院の呼び鈴の音が寝室の隣にある執務室という名の僕の休憩部屋にも聞こえてくる。佳苗のおすすめで改装時にとりつけた呼び鈴。どうしてこの音なんだろうか……
その後、部屋の扉がノックされ、「はーい」という僕の返事と共にドアが開く。
「タケルくん。手紙がきてるよ」
入ってきた佳苗の声にドキリとする。この世界で手紙は不幸しか運んでこないというトラウマが心を波立たせた。
「あ、あて先は?」
「えっとね、王都立魔道学園?」
ああ、王都にある学校か。たしか貴族とかが通う中高一貫校みたいなやつだな。なんだろう嫌な予感がしてきたけど……
「あ、開けてみようかな?」
「そうだね。はい」
佳苗から手渡された手紙を開ける。途中、寝室のドアが開き真理と加奈がスッキリした顔でやってきた。佳苗がジト目でこちらを見ている。嫌、今日は二人の番だったから……仕方ないじゃないかな?
「えーと、これ佳苗と真理、悠衣子と康代、ベリエットへの依頼みたいだよ?」
「えっ?なんで?」
佳苗たちが手紙をのぞき込む。
手紙にはそれぞれ学園の講師として、錬金術と索敵術、剣術と体術、そして貴族教育の担当で学園に招致したいという依頼であった。週一回2時間の指導を行ってくれれば月に白金貨、つまり100万円相当だという。
凄いよね。月4回、計8時間で100万円。まあお金には困ってないし、そもそも1時間程度ダンジョンに入ればその十倍は稼げるけど……
「やりたい!」
「私も」
佳苗と真理が手紙を僕の手から奪うとキャーキャー言いながら二人で何やら話していた。
「いいなー。私も行きたい……」
加奈が僕の首に後ろから腕を絡ませ甘えてくる。そうだよね。僕たち、本当は高校生活を楽しめたはずなんだよね。気づけばみんな18才か……奪われた青春を取り戻す良い機会なのでは……
その夜、僕はメテル以外の女性陣を集め相談した。
講師としての依頼がきた5人はその依頼を即快諾。そしてサフィさん、加奈、そして僕は生徒としてなんとか潜り込めないかと相談してみた。
というか相談してて気づいたけどベリエットってまだ13才じゃ……普段後光がすごすぎて王様のように感じてたから盲点だった。本人はやる気満々のようだけど。貴族教育ってなにやるんだろう……
「じゃあそういうことで」
結局その話し合いは1時間程度で終わってしまった。みんな即決なんだよね。とりあえずその学園の理事って人に会ってみるかな。
◆◇◆◇◆
「はじめまして。私がこの学園の理事を務めております、マナーブ・コトダネキミといます。一応コトダネキミ家は侯爵となってますが、英雄大川様の手足となって働く所存です!何なりとお申し付けください!」
この人は何をいっているのだろう?
「いや、違うくてですね。今日は佳苗たちにきた依頼について少し相談があってですね」
「そ、そうでしたか。てっきり大川様の機嫌を損ねてしまったかと思いまして……」
「そんなことないですよ。佳苗たちもとても喜んでいて即決で受けると言ってました。そこは安心してください」
「そうでしたか!」
何やら飛び上がって喜んでいる。というか小躍りってあんなのを言うのかな?
「それで、相談なのですが……」
「はい!なんなりと!」
どっかの居酒屋店員かな?
「佳苗たちへの報酬はいらないということで、その代わりといっては何なんですが僕とあと2名ほど、生徒としてこっそり通えないかなと……」
「なるほど……」
急に真面目になった理事が何やら考えているようだ。
「わかりました。ではその生徒になるという方の呼び名とか変装なども必要でしょうし、あと経歴なども考えましょう。詳しいものをご自宅に派遣しますのでのちほど」
「お手数かけます」
「いえいえ大丈夫ですよ。時には貴族もお忍びで通うこともありますから。慣れております」
「そうでしたか……では、よろしくお願いします」
とんとん拍子で決まっていく学園への入学。僕を見送る理事やお付きの人などなどが背筋をびしっと伸ばし僕を見送っている。彼らの頭の中では僕はいったいどういう扱いなのだろうかと悩む。
「ただいまー」
孤児院へと戻った僕は、話し合ったことについて伝えると、待っていたサフィさんと加奈が喜んで抱き着いてきた。二人が喜んでくれるのは僕も嬉しい。
「えっ?ちょっと待って?お礼とかいいから……ちょっと、まだ昼だから、ご飯とか食べなきゃだから、あーーー」
寝室まで二人に引きずられている僕を、佳苗と真理がため息をつきながら見送っていた。
ちなみに悠衣子と康代は子供たちの訓練に出かけているらしい。二人が帰ってきたら改めて報告しよう。どうせ今日の夜は悠衣子と康代の番だし……
ちょっとした用事で城へ行っているベリエットは……もうなんか別経路で報告うけてそうだからいいかな?
その後、相談役としてきた美女、ルシーヌさんと話し合う。時折僕のことを見ては舌なめずりをするルシーヌさん。ボディータッチも多く、これは誘っている気がしないでもない。もしかしたらマナーブさんの指示なのかな?
彼は僕のことを何だとおもってるんだろうか。いや眼福だけども……ちょっといい匂いがして少しだけ頬が緩んでしまうけども。あまりフラフラしていると特に佳苗からの圧が強くなるから自重はしなきゃと気を引き締める。
結局、僕はどっかの小さな商人の息子。サファさんは婚約者で男爵家。加奈はお付きのメイド。という位置づけでいくらしい。それぞれタク、サラ、カルラと名乗ると……間呼び違えてボロが出なければいいけど。
見た目も三人とも佳苗が作ってくれた変色液という薬品できっかり1週間金髪になるという。これで準備は万全だ。
講師として招かれた五名は、すでにレベルの高くなった僕たち3名を特待生として多少の贔屓で目をかける。という講師と生徒の禁断の愛プレーをしたいようだ。なんだそれ僕も期待しちゃう。
その夜は、もちろん悠衣子と康代がお礼という名の夜を過ごし、ベリエットには「私も早く混ぜろ」と駄々をこねられた。キミとはまだいたしませんよ?こうしてまた、翌朝にはなぜか上がったレベルを確認するという日常が繰り返されるのであった。
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