/// 36.1st生誕祭
八月のある日の月曜日。
孤児院の広い訓練場は朝から忙しそうに動く職員と、カルドニーや教会、猛流組(たけるぐみ)関連の面々により艶やかに飾り付けが施されていた。もちろんタケルもそれを手伝い汗を流していた。
今日はこの世界に来て最初の誕生祭。もちろん一年以上いるので一度は皆、誕生日を迎えてはいたのだが、それはそれ。タケルと他の女性陣がまとめて祝われる大切な日。のちに『英雄の日』と名付けられ国中がお祝いムードとなる8月21日の佳苗の誕生日に行われる一大イベント。
その準備は着々と進んでいた。
「でもさ。今年はたまたま21日が月曜日だったからメテルもこれたけど、来年はどうするんだろね」
タケルたちの寝室で暇を持て合わしながら誰となく質問した真理。
「なんか私も特に日付とか気にならないって言ったらね、タケルくん、それなら合わなければ日付はずらしてメテルや他の人の都合に合わせればいいんじゃない?って言ってたよ。やっぱりみんな揃ってこそだからって」
と佳苗が答えると、すでにお呼ばれしていた聖女メテルは嬉しそうに両手を上げて喜んでいた。
「さすがタケルー!大好きっ!」
はしゃぐメテルを見ながら康代がぽそりとつぶやいた。
「でもさ、なんで私たちは待機でタケルくんは準備に加わってるんだろうね?」
「なんか主役は女性陣たちだから!って言ってた!惚れるよね!」
「まじでー今晩お礼しっかり言わないとねー」
真理と悠衣子が顔を赤くしていた。
そしてサフィさんと加奈、そしてベリエットは「うんうん」と大きく頷いていた。もちろんメテルとベリエットは今晩別室で寝ることになる。当然である。
「で、タケルくんへの誕プレ、どんなの用意した?」
少し顔を赤らめた悠衣子の言葉に皆も少し照れていた。事前にプレゼント交換は止めようと話し合っていた。普段から自分の欲しいものは何でも買える資金力のある面々である。こういったイベントごとに贈るとしても資金力がありすぎてきりがない、ということでの取り決めだった。
そんな中、女性陣の話し合いが行われ、そして導き出した結論が・・・下着であった・・・
今晩はいつも以上に気合の入れた勝負下着を各自が用意するという破廉恥な暴挙。
そのために連日『王都総合魔道センター・南出moreー瑠』へ通ってはセクシーランジェリーを試していた。最終的には全員がオーダーメイドの下着&パジャマと言えないコスプレ衣装を買いそろえることとなったようだ。
その後、一時ファッションショーのようになったのだが、それは乙女たちの秘密ということにしておこう。メテルとべリエットも臆することなく興味深そうに観察していた。そんなこんなで女性陣のほのぼのとした時間は過ぎていく。
◆◇◆◇◆
「それでは、我が愛しの女性たちと、不肖、僕の誕生を祝して・・・かんぱーい!」
言いなれないことを集まってくれた知り合いたちの前にで高らかに宣誓するタケルは、顔をまっかにしながらグラスを掲げていた。口々におめでとーありがとーと言っては美味しい食事とアルコールに酔いしれた。もちろん未成年のメテルとベリエットはジュースだが。
この世界に召喚されたのは寒い11月頃、高校一年生の僕らは突然の異世界に戸惑ったことだろう。それから火竜での出来事があり死んだ事にされたのは3月。僕がマグマから抜け出したのは次の年の2月頃。それから色々なことがあったが、無事佳苗たちは18才となった。
異世界に召喚されて1年と9ヵ月。長いようで短く感じたタケルであった。
これで佳苗と加奈、真理と悠衣子が18となった。タケルは自分と康代ももうすぐ18になる、もうそろそろいいかな・・・と思ってこの誕生祭に臨んでいた。そして食事もそろそろ手を付けなくなり、皆お腹を満たしたころタケルは女性陣を装飾された誕生席に座らせた。
タケルは大きく深呼吸をして女性陣の前に立つ。少し顔が赤いのはアルコールのせいだろうか。
「佳苗、サフィさん、加奈、真理、麻衣子、康代・・・良ければ僕と、結婚してください・・・」
そしてタケルは膝をつき、右手を前に差し出した。
名前を呼ばれた女子陣は、各々が笑顔を見せ、涙して、そして頬を赤く染めてタケルの手を取った。呼ばれなかったメテルとベリエットは少しふくれっ面であったが拍手で祝ってくれていた。集まっていた人たちは盛大に歓声が上がり、宴はさらに飲み会へと進化していった。
6人の左手の薬指には、タケルが密かに作られていた特注の竜石の指輪(生命)という、軽くではあるが回復魔法が常に発動する指輪がはめられていた。
これで名実ともに6人は、タケルのお嫁さんとなった。
この世界では勇者や姫の時のように、貴族の上の方の一部でしか、婚約や結婚のパーティなどは行わない。今回のように愛を告白して受け入れられれば、無事夫婦となる。
愛と誓い合ったタケルと女性陣の面々は、その後の飲み会でも大いにはしゃぎ、日を少し跨いだあとに寝室へと流れ込んでいく。もちろんメテルとベリエットは日を跨ぐ前に与えられた部屋へと戻り、すでに別室で就寝となっていた。それはとても大事なことなので何度も言っておこうと思う。
翌朝、夫婦となった面々はお昼過ぎに起きてくる。教会本部へ帰還するため早起きして待っていたメテルもあきれ顔であった。だがそれも仕方のない事であろう。なぜかは分からないがタケルのレベルが昨晩より10も上がっていたのだから・・・
こうして、誕生祭&結婚発表は無事終了となった。
タケル達に永遠の幸せあれ!
◇◆◇ ステータス ◇◆◇
オオカワ・タケル 17才 ヒューマン
レベル345 / 力 C / 体 S / 速 E / 知 E / 魔 S / 運 S
ジョブ 聖神官
パッシブスキル 【超回復】【精神耐性】【耐性-火】【耐性-食】【耐性-睡眠】
アクティブスキル 【完全鑑定】【肉体倍化】【次元収納】【人体操作】
装備 竜角の杖(速) / 魔防ローブ(黒) / 普段着(灰) / 竜石の指輪(生命) / 竜石の指輪(力) / 竜石の指輪(速)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます