/// 26.盗賊ギルドの後始末
「お話があります・・・」
真理が戻ってきてから1週間ほどたったお昼。僕は今日はゆっくりしようとだらけ切っていた。そんな中、どこかから帰ってきた真理が僕の前に跪いて話があると言ってきた。
「ま、まずそのポーズやめない?なんかちょっと恥ずかしい・・・」
「そ、そうだね。私も改めて言われるとはずい・・・なんか盗賊ギルドの癖が抜けないわ」
「そ、そうなんだ・・・で、話って?」
「その、盗賊ギルドなんですけど・・・放置してたじゃないですか。もうどうでもいいって思ってたんですけど、さっき連絡がきまして戻ってきてほしいと・・」
盗賊ギルドは真理がトップをつぶしたあれだよね。連絡はだれからなのだろうか・・・
「だ、誰から連絡がきたのか聞いていい?」
「もちろんです!私の仕事用の通信具なんですけど、それで同じ幹部だった男からもうぐちゃぐちゃになってるからなんとかしてほしいと・・・まあ、もう一人の幹部も私がやっちゃいましたし、正直このまま解体でいいかなって思ってたんだけど・・・」
なんだか知らなくても良いことがどんどん増えていく・・・
「それで、一回行ってみたんだよね。そしたら結構国からの諜報依頼とかもきてて、でもトップもいないし幹部もそいつ一人になったのでお手上げって言ってて・・・最初は知るか死ね!って思ったんだけどね。考えたらここもタケルくんのために使ったらいいんじゃないか?って思ったんだよね。どう思う?」
「えっ?」
「ん?」
何をいったら良いか分からなくなっている僕に可愛く首をかしげる真理。昼間っから誘惑しないでほしい。
「ちょっとまって・・・何を言っているのかわからない・・・」
「あの組織ってたまに殺しとかもあるけど、基本諜報の依頼が多いんだよね。それだけに国の裏とかも知ることが多くて。だからいっそタケルくんに害をなすものがいないか情報網として使ったらどうかなって。実質、私あのババアやった後はあそこで一番強かったし、その後さらにタケルくんに育てられちゃったしね。きゃっ♪」
いやいや、きゃって顔を赤らめてるけど結構物騒な話してるからね。まあ可愛いからいいけど。
「いいんじゃないかな・・・じゃあ拠点はそっちに移してまた離れてく、うっ・・・」
睨まれた。
「何言ってるの?もう私嫌になった?それならそうでいいけど。タケルくんに従うよ?はっきり言ってほしいな」
「いや嫌ったりしないよ!ほんとマジ大好きだから!愛してるから!怒った顔も素敵だけど可愛い顔がいいかな?」
僕の言葉に顔を赤らめながら腰をくねりだす真理。
「じゃあ、とりあえずベットいく?」
「いや、違うよ?いや違わなくもないけど、今は盗賊ギルドどうするか聞きたいかな?」
「そう?じゃあまた後でね。えーっと当面はその最後の幹部に運営は任せる。でも依頼は全て私がチェックする。それでなにか問題があればその幹部を殺る」
「いやなんて幹部殺す前提なの?」
「え?タケルくんや私の友達に迷惑がかかる依頼を受けた場合は、処するのが一番いいかと・・・」
「いやそこは依頼を却下で押し通してくれればいいかな・・・」
「わかった。じゃあ盗賊ギルドはタケルくんのいいように使うということで、都度報告はベットの中でってことになるかな?」
「ああ、まあそれでいい、かな?」
話しが終わると真理はるんたったと足取り軽く、またどこかへ出かけていった。よかった。真昼間から寝室に篭ることにならなくて・・・ちょっと残念。
その夜、今受けている依頼内容を聞いて、いくつか物騒な諜報依頼もあったけど、ほとんどが迷子犬の捜索や浮気調査など、街の小さな探偵屋みたいな依頼が多いことに、やっぱりつぶさなくて良かったなとも感じた。
◇◆◇ ステータス ◇◆◇
アキカワ・マリ 18才 ヒューマン
レベル 235 / 力 C / 体 F / 速 B / 知 E / 魔 E / 運 F
ジョブ 忍者
パッシブスキル 【暗殺術】【耐性-毒】【気配察知】
アクティブスキル 【隠密】【弱点看破】
装備 金剛石の魔刀(死) / 隠密の羽織 / 闇の羽衣 / 竜石の指輪(力) / 竜石の指輪(速) / 竜石の指輪(命)
◆◇◆◇◆
エルザード大国・王城・特別室
「なに?依頼を断る?」
「はい。火竜の件についてはやはり続報が集まらずデマという結論としてお伝えします。ですが、失敗したアウター連中に依頼した大川の件については、私ども盗賊ギルドにしても受けおうことはできかねます。面倒ごとにあの額ではわりに合いません・・・」
王城の一室で勇者ライディアン、盗賊ギルドの見せかけのトップとなったクライフであった。
初めての謁見で内心心臓が張り裂けそうな状態ではあるが、真理のあの心臓が鷲掴みにされるような睨みに比べれば大したことはない。
「くそっ!エルディンの奴、足元を見やがって!それでお前が代理できたということか!」
「そ、それが、エルディン様は何者かに殺されました。それで私が引き継いでおります。まだかなり混乱しておりますが・・・」
「あいつが殺された?大川の復讐、なのか?」
「それはまだ・・・ですが現場にいた別の物が『違う』とある種の確信を持って答えているようですので、なにかまた別の組織などが絡んでいるかもしれません・・・何か分かればすぐに・・・」
もちろん真実はいつまでも伝えられることはない・・・
「また皇太子派か・・・」
「その可能性は十分かと・・・」
「クソッ!何かあれば・・・皇太子を殺す!その時は・・・わかってるな!」
「はっ!」
その言葉と共に、クライスは闇へと消えた。
実際に皇太子を主とする派閥は存在する。王家の血を絶やさぬようにという思いがある保守派は、勇者を若干は疎ましく思っているのは事実である。
しかし彼は国を救った英雄。そんな彼にこの国を任せれはなんとかなるだろう。そんな思いで、皇太子本人でさえも彼が王になることに何ら思うことはない。しかしその気持ちを知る由もない勇者は、疑心暗鬼の沼に沈んでいくのだ。
本当はまったく関係のない皇太子派へその怒りは向ける勇者。その胸中にはもうすぐ行われる婚約の儀への邪魔物はすべて排除するという自己中心的な思いだけだった。
「絶対に!俺が王になる!この国は俺のモノだ!」
クライフが居なくなった部屋には、勇者の笑い声が響いていた。
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