/// 14.ダンジョン探索と支援活動
「おかえり加奈、どうだった?」
僕はお昼ぐらいに帰ってきた加奈を宿で出迎えた。
朝早くに佳苗(かなえ)のいる孤児院の様子を見に行ってもらったのだ。
加奈自身も、城の庇護を抜けるさいに一緒に、という話もあったのだが、占い師として異世界を楽しんでみたいという思いもあって一人離れていた。
もちろん喧嘩別れとかではないため、何度か遊びに行ったりもしていた。
今回も、お菓子を差し入れという名目で様子を伺ってもらった。
「うーん、みんな元気ででしたけど、やっぱり大変みたいです」
「やっぱりお金の問題だよね?」
「はい。一応、佳苗(かなえ)ちゃんは錬金術持ってますし、真理ちゃん・・・秋川真理(あきかわまり)ちゃんって分かります?」
「ん、えーとポニテの子?」
僕はポニーテールが似合っていたスレンダーな子を思い出す。
「そうそう。あの子は忍者で、中田悠衣子(なかたゆいこ)ちゃんが剣士、ふわふわヘアのちょっとほわっとした悠衣子。あと石川康代(いしかわやすよ)ちゃんは闘士なんだけど、えーとショートで面白担当の・・・まあそれはいいか」
中田さんは剣道部の子でほわっとした綺麗な子だよな。石川さんはたしか柔道部の子、国体にも出てたはず。でも小柄でキュート、良く笑う可愛い子だったな・・・なんか地球での活動がジョブに反映されているような気がする。
「それで、その三人でダンジョンの浅い階層に入っては素材を採ってきて、佳苗(かなえ)ちゃんが薬なんかにしてギルドに卸してるんだよね。補助金とかじゃ全然たりないし、雇ってもらってるハズなのにね。子供たち自腹で養ってる感じになってる・・・」
「そうなんだ・・・」
「頑張ってるみたいだけど、子供たちが20人ぐらいいるから・・・カツカツだっていってました」
「20人か・・・じゃあ、当面は金策してなんとか援助する道を考えようかな。冒険者ギルド経由で寄付とかできないか聞いてみるよ。ありがとう加奈」
「うん。また定期的に偵察に行ってきますね」
「はは、偵察じゃなくて遊びにね」
とりあえずは資金作りをしよう。サフィさんも加奈もいるから今更会ってどうなるということもない。佳苗(かなえ)に「生きてたの?最悪!」なんて言われたら死にたくなる。
幸い、金銭的な部分なら助けになれるだろう。まずはギルドにも相談しようかな。エルフィンさんなら協力してくれそうだ。
◆◇◆◇◆
早速僕とサフィさんでダンジョンに潜っていく。
10階層ごとのポータルがあるので、40階層まで移動する。そこからはひたすら次の階層までの道を探しながら走る。サフィさんが魔物とすれ違うたびに頭をバーンとやって楽しそうに笑っていた。きっとこの光景を見た冒険者がトラウマになるのではないだろうか。
素材を回収しながら進む僕たちは、すぐに50階層まで到達した。
途中で岩竜の群れにも遭遇して【次元収納】の中はかなりの潤いとなるだろう。そして50階層で大きな扉を見つけ、その扉にサフィさんが手を伸ばした。おそらくこればボスへと続く部屋なのであろう。
薄暗い中へ入るとゴツゴツとした岩壁の一室となっており、入ってきた扉が閉じると、中央に魔方陣が光り輝いた。
「おお!ゲームみたいだ!」
「どうする?俺がやってもいいのか?なあ!やらせてくれよ!」
サフィさんはやる気満々のようだ。
「いいよ。どうせ頭バーンでしょ?一応油断はしないでね」
「ああ!任せとけ!」
サフィさんが腕をブンブン回してボスの出現を待っていると、光と共に巨体が召喚されていった。
念のため【完全鑑定】を使うと、『レッサーデーモン』という魔物らしい。なんかゲームとかで見たことあるなーと思っていた。
レッサーデーモンは手にはデカイ斧も持っていたが、その一撃を振り下ろす前に脳が抉りとられていった。
この戦いの最中、実は【完全鑑定】を発動しながら見ていたのだが、サフィさんのあの指での強力な一撃は【牙】スキルが発動されているようだった。
さすがに通常攻撃であんな破壊力があるのなら、人類はもう滅亡するしかないだろうと思っていた。
まあそれがスキルであっても同じなのだけど・・・
くれぐれもサフィさんクラスの魔物?かなにかの恨みが、国なんかに向かないように祈るばかりである。
「おい!見てたか、余裕だったな!」
「うん。すごかったねサフィさんの一撃」
「お、おう!たりめーよー!」
僕が褒めるとすぐに赤くなってしまうサフィさんはやっぱり可愛い。
レッサーデーモンの体を回収すると、出口が開くので次へ進む二人。
時間も夕方になったのでポータルからギルドに戻ると、倉庫には悲鳴がこだましていた。
ついでにエルフィンさんに、孤児院について話しを通しておく。
冒険者ギルドからの支援として、寄付できるか確認すると二つ返事でOKしてくれた。
何か視線が定まっていないような気もするが、疲れているのだろう。
「無理しないでくださいね」と手を握って【超回復】を流し込みながら励ますと、少し回復したように元気になっていた。
今回の狩りの成果も入れると、全て売り捌いたら億近くの稼ぎになってしまうと言うので、当面は100万エルザずつ毎週寄付するということで落ち着いた。
ちょっと狩っただけで億・・・改めて自分とサフィさんの規格外の強さを実感した。
◆◇◆◇◆
それから一週間ほど、僕たちはダンジョンに篭っていた。
毎日大量の魔物を持ち帰るため、冒険者ギルドの方も臨時職員を大量に募集して対応に当たってくれた。
エルフィンさんにお礼を言うと「こちらも手数料でもうウハウハですから」と弾んだ返答を頂いた。
「もう、何が来ても驚かないようになりました」とも言っていた。
まあ、確かに今は最深部は80階層まで進んでいる。
ここまで来ると、強いというより早い魔物も増えており、サフィさんもイライラしてしまうことも多々あった。
スルーして先へ進むことも考えたが、しばらくは70階層付近で飛竜やグレーターデーモンといった魔物を1日何十体か狩ることに留めておいた。
すでにその素材の量と質に、各業界がざわついているという話を聞いているからだ。
もう換金された僕のギルドカードには数十億の資産ができてしまった。
明日辺りからは暫く休暇をとって、三人でショッピングにでも行こうということになっていた。
そしてその日の夜、孤児院の様子を見てきた加奈が部屋へ戻ってきた。
「タケルくん!!!」
「えっ・・・」
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